著書を交換させていただいているみなさんの新刊を紹介したいと思います。
まずは、今の時期にぴったりのハンディな図鑑、税所 康正さんの『セミ ハンドブック』。

「『セミ ハンドブック』税所 康正著(文一総合出版)」
「『セミ ハンドブック』税所 康正著(文一総合出版)」

いま大人気の文一総合出版のハンドブックシリーズの1冊として刊行されました。
国産のほとんどのセミが掲載され、各種が見開き左右を使って
美しい白バック写真と生態写真で構成されています。
ぬけがらの検索表もあり、QRコードで鳴き声まで聞けるという至れり尽くせりの内容で、
昨年話題になった巨大な外来ゼミ「タケオオツクツク」も、しっかり収録されています。
コラムも充実しており、ここから夏休みの自由研究のヒントが得られるかもしれません。
税所さんのサイト「セミの家」はこちら(ぼくのブログの、リンク先一覧からも入れます)。
http://zikade.world.coocan.jp/Zikade.html

次に、ぼくと『昆虫の食草・食樹ハンドブック』をかつて共著で一緒に作った
林 将之さんの新刊『葉っぱはなぜこんな形なのか?』。

「『葉っぱはなぜこんな形なのか?』林 将之著(講談社)」
「『葉っぱはなぜこんな形なのか?』林 将之著(講談社)」

科学の本というより、とても楽しく読めるエッセイ集なのですが、
奥深いテーマがいくつか扱われており、読み進めながら、
いろいろなことを考えさせられます。
ぼくは読み始めてすぐに、あとでもう一度読みたい部分に線を引きながら
読むことになってしまい、その部分だけを何度も読み返しています。
生きものや自然に興味をもつ人なら、どのレベルの人にも響くところが必ずあり、
ぼくは自然と向き合うスタンスを、少々揺さぶられることになりました。
50年以上生きてきて、自然と向き合うスタンスを今さら揺さぶられるというのは
よくよくのことですが、この本には、それだけのパワーがありました。
将来、自然に関わる仕事をしたいと思っている若い人には、
ぜひ読んでいただきたいと思います。
林さんのサイト「このきなんのき」はこちら
(ぼくのブログのリンク先一覧からも入れます)。
http://www.ne.jp/asahi/blue/woods/

そして、いちばん最近読んだ本がこちら。
川邊 透さんと前畑 真実さんの『癒しの虫たち』です。

「『癒しの虫たち』川邊 透/前畑 真実著(リピックブック)」
「『癒しの虫たち』川邊 透/前畑 真実著(リピックブック)」

「虫セラピー」。 そんな言葉があるかどうか知りませんが、
タイトルどおり、虫の癒し効果にどっぷり浸れる本。
「虫が大キライ」という人の固定観念を根本的に変えることのできる本だと思います。
虫を、よくぞここまで愛らしく写せたなあ!と、ぼくは心から感動してしまいました。
世間では、虫の本といえば科学の本という扱いですが、
そういうステロタイプなカテゴリー分けを、完全に超越してしまった本と言えそうです。
科学の視点で編まれた本では、なかなか虫ギライを「治す」ことまではできませんが、
この本の「癒し」パワーなら、「キライ」を一気に「好き」にまで
引っ張っていくことができそうな気がします。
虫をここまで「リアルゆるキャラ」として描き切った視点と構成には大拍手です。
ぼく自身も、虫ギライを治す処方箋としての本の制作には使命感を感じており、
これまでに『虫のくる宿』、『虫とツーショット』、『虫・むし・オンステージ!』という、
『癒しの虫たち』と同じ方向性の本を出してきましたが、
この路線の同志が全然いないことに、寂しさと無力感も感じてきました。
そんなわけで、著者とそのご家族以外で、この本の出版を一番喜んでいるのは
ぼくかもしれません(笑)。 
川邊さんのサイト「昆虫エクスプローラ」はこちら
(ぼくのブログの、リンク先一覧からも入れます)。
https://www.insects.jp/

ぼく自身の本のお知らせが何もないのは寂しいので、月刊絵本のご紹介を。

「『ワンダーしぜんランド8月号「かぶとむしとくわがたむし」』(世界文化社)」
「『ワンダーしぜんランド8月号「かぶとむしとくわがたむし」』(世界文化社)」

幼稚園向けの直販誌『ワンダーしぜんランド』8月号の写真を担当しました。
書店では入手できませんが、もし機会があれば、ご覧いただければうれしいです。
 7月13日~15日にかけて、群馬県を西の端から東の端まで横断してきました。
嬬恋村と桐生市で1泊ずつのスケジュールです。

スミナガシの幼虫(Olympus E-M1mk2)
「スミナガシの幼虫(Olympus E-M1mk2)」

新しく導入した機材・オリンパスの8ミリ対角線魚眼レンズを初めて使ってみました。
幼虫の食樹はアワブキです。 F1.8というとんでもなく明るいレンズで、
このF値でファインダーを覗くと、まるで自分の視力が良くなったかのような
錯覚を覚えるほど被写体がクリアに見えます。近接性能も十分。

アケビコノハの幼虫(Olympus E-M1mk2)
「アケビコノハの幼虫(Olympus E-M1mk2)」

こちらも同じく8ミリでの撮影。幼虫の食草はアオツヅラフジ。

チョウトンボ(Olympus E-M1mk2)
「チョウトンボ(Olympus E-M1mk2)」

オリンパスOMシステムお得意の新技術、カメラ内被写界深度合成機能を使った撮影。

上の写真の一部拡大(Olympus E-M1mk2)
「上の写真の一部拡大(Olympus E-M1mk2)」

斜めの角度から撮っているのに、奥の翅にも手前の翅にも、
かなりしっかりピントが合っていることがわかります。
ピント位置を少しずつずらしながら8コマを連写し、ピントの合った部分だけを
カメラ内で合成して1枚の写真にするという夢のような機能です。
この時点では、8コマというコマ数は固定でしたが、現在はカメラをファームアップ
することにより、3コマから15コマの間で任意に枚数を選べるようになっています。
ついさっき、カメラをファームアップしてみました。 室内で試写してみましたが、
8コマより少し少ない、6コマあたりが使い勝手がよさそうに思います。
従来の一眼レフ方式のカメラでは実現不可能で、ミラーレス一眼ならではの機能ですね。

合成失敗(ゴマダラカミキリ)(Olympus E-M1mk2)
「合成失敗(ゴマダラカミキリ)(Olympus E-M1mk2)」

もっとも、撮影中に虫が不意に動いたりすると合成に失敗し、
こんなものすごい写真になってしまうこともあります(笑)。

ゲンジボタル(Nikon D7000)
「ゲンジボタル(Nikon D7000)」

気温が上がらない長梅雨のせいか、まだゲンジボタルがいました。
絞りリングの存在する古い形式のタムロン90ミリマクロレンズ(272Eの旧型)で撮影。
被写界深度合成機能とは真逆の、古い機材と古典的なテクニックを使った撮影です。

最近のレンズには絞りリングがなく、撮影中に絞りが変更できませんが、
絞りリングのある古い設計のレンズでは、長時間の露光中に絞りを変えることができます。
カメラを三脚に固定し、ホタルを刺激しないように、うす暗い懐中電灯でピント合わせ。
シャッター速度30秒で、絞りはF18。シャッターボタンを押し込んだ直後に、
カメラと接続していないストロボの発光ボタンを指で押してマニュアル発光。
その光を受けて、ホタルの左斜め後方に配置した三脚からもう1灯が追従発光。
その後、速やかに絞りリングを回して開放絞り(F.2.8)に持っていきます。
ここまでの所要時間が3秒ぐらい。残りのおよそ27秒間は、
ホタル自身の光以外は何も光のない状態で、ホタルの発光を丹念にひろいます。
27秒間のうちに、4回ぐらい強く発光すればしめたもの。
感度を800まで上げているので、F2.8で、ホタルの光がこれぐらい写ります。

つまり、ホタルの体はF18でストロボ2灯による瞬間的な露光、
ホタルの光のところだけは、F2.8でおよそ27秒間の長時間露光ということになります。
撮影中に草が揺れたのでしょう、ストロボ発光時点と、その後の長時間露光中とでは、
ホタルのお尻の位置が微妙にずれてしまいました。まあ、これぐらいは許容範囲でしょう。

こういう撮影のためだけに、絞りリングつきの古いマクロレンズを今も所有しています。
被写界深度合成機能とは逆に、現行のミラーレス一眼のレンズラインナップでは
到底まねのできない撮影ですね、

新しい機材と新しい技術、古い機材と古い技術を幅広く使った旅となりました。
2019.06.27  お知らせ
 出版のお知らせが1点と、講演会・観察会のお知らせが2点です。

「『小昆蟲大舞臺-獨特觀察角度的昆蟲圖鑑』表紙」
「『小昆蟲大舞臺-獨特觀察角度的昆蟲圖鑑』表紙」

ご好評をいただいております『虫・むし・オンステージ!』(フレーベル館:2018年刊行)
の中国語繁体字版が、『小昆蟲大舞臺-獨特観察角度的昆蟲図鑑』というタイトルで
台湾の出版社から出版されました。

こちら↓からお求めいただくことができます。
日本円に換算すれば、1,321円ぐらいでしょうか?
https://www.bookrep.com.tw/?md=gwindex&cl=book&at=bookcontent&id=13714

日本語がわかる人なら、繁体字は意外に意味が取れるので、日本人が見ても面白いです。
たとえば、以下は巻末のぼくのプロフィールですが、

「繁体字版の著者プロフィール」
「繁体字版の著者プロフィール」

過去の著作の『虫のくる宿』は、『吸引昆蟲家』、
『樹液に集まる昆虫ハンドブック』は、『樹液誘因昆蟲手冊』となっており、
ちゃんと意味が伝わります。
「~昆虫がアイドルだった昆虫少年がカメラを手にし、そのアイドルの”追っかけ”に転じ、
現在に至る~」の、”追っかけ”は、「追星族」となっていますね。
おお、なるほど、という感じです。

本書には、イマドキの日本的なギャグ・ユーモアが随所に散りばめてあり、
翻訳者は、おそらく大変だったろうと思います。
原文に忠実に翻訳しても、それで面白味が薄れては何にもならないわけですが、
見ていると、そうならないようにうまく創作を織りまぜてくださっているように思えます。
翻訳者は台湾のかたで、現在は九州大学の博士課程に在籍中と書かれていますから、
両国の昆虫に精通しているかたなのでしょう。

台湾の小熊出版さんが作ってくださったCM動画がこちら。
https://ppt.cc/fSjeDx
う~ん、これはぜひ日本語版も欲しい…。

以下は、講演会・観察会のお知らせです。
まずは、8月18日(日)の長池公園(東京都八王子市)。

「講演会チラシ(長池公園)」
「講演会チラシ(長池公園)」

こちら↓は、8月24日(土)の「桜丘すみれば自然庭園(東京都世田谷区)」です。

「講演会チラシ(桜丘すみれば自然庭園)」
「講演会チラシ(桜丘すみれば自然庭園)」

どちらも夏の暑い盛りですが、
野外でのワークショップと、涼しい室内でのお話が半分ずつになるように
タイムスケジュールを組みたいと思っています。
みなさんの参加をお待ちしております。
 ちょうど2ヶ月前の4月23日のブログに載せた2匹のオオムラサキ幼虫が、
羽化の時期を迎えています。

「4月23日のブログから」
「4月23日のブログから(Olympus E-M1mk2)」

2匹とも、すぐ近くの葉っぱで6月4日~5日にかけて蛹化しました。
「2匹ともぶじ蛹化」
「2匹ともぶじ蛹化(Nikon D7000)」

羽化は、1匹が6月18日、もう1匹が19日。

「羽化の前半」
「羽化の前半(Nikon D7000)」

翅が伸びきると、何回かに分けて余分な水分を排出しますが、
最初は濁っている液体が、だんだんと澄んでくることがわかります。

「羽化の後半」
「羽化の後半(Nikon D7000)」

この排出シーンだけは、オリンパスのカメラに備わっているプロキャプチャーモードで
撮りたかったのですが(排出を目撃してからシャッターを押しても確実に写る)、
それを実現させるには、羽化の最初から強い定常光をつけっ放しにしておく必要があり、
そうするとぼくが参ってしまうので(刑事もののドラマで、容疑者の顔に強いライトを
向けて自白を迫るのと同じことになる)、定常光によるプロキャプチャー撮影は諦め、
これまでのようにストロボ(5灯)を使い、オオムラサキが尻をもぞもぞと動かすと、
その一瞬あとに排出が起きるはず、という前提で勘に頼って撮りました。

「国蝶の風格」
「国蝶の風格(Nikon D7000)」

オオムラサキが姿を現すと、いよいよ夏本番という気がしますね!
2019.06.16  新潟の旅
 もう1ヶ月以上も前のことになってしまいましたが、
5月11日~13日まで、新潟県中越地方に点在するギフチョウの産地を回ってきました。
ゴールデンウイークも終っているというのに、この地はまだまだ新鮮な個体が多く、
6月9日に同じ場所を訪れた知人からは、今回もギフチョウが飛んでいたよと聞きました。
それにしても、梅雨空を背に飛ぶ「春の女神」って…。

ギフチョウの卵塊
「ギフチョウの卵塊(Olympus OM-D E-M1mk2)」

うす暗い林の中で、ここにだけ陽が射し込み、このような場所にあるコシノカンアオイには、
予想通り、ギフチョウの卵塊が残されていました。
本当は、隙間なく並べて産んであったのでしょう。
この写真のように卵と卵が離れてしまったのは、産卵後にカンアオイの葉が育ったことを
意味し、産卵からある程度の日数が経った卵塊であることがわかります。

オリンパスを使い始めて最初の24㎜相当(12-100㎜ズームのワイド側)での撮影で、
思いがけない画角の狭さに、「ん?」という感じでしたが、
考えてみれば、タテヨコ比が4:3の規格のカメラでは、
いかに対角線画角が84度あると言っても、水平画角は3:2のカメラより狭いのですね。
あとから調べてみて、2度以上も狭いということがわかりました。
背景の広がりを描写したい場合は、どうも「あとひと息」感がぬぐえません…。

この林には、幹にかなり大きなキノコを抱えた木があり、
コブスジツノゴミムシダマシが食い入っていました。
ツリガネタケやサルノコシカケにいるという虫ですが、
このキノコが何であるか、残念ながらぼくにはわかりません。

コブスジツノゴミムシダマシがいた環境
「コブスジツノゴミムシダマシがいた環境(Nikon D7000など)」

田んぼが果てしなく広がるこの地方には、いたるところに溜池があります。

豊穣の溜池
「豊穣の溜池(Casio EX-ZR1000)」

網を入れてみると、こんな感じ。

ヤゴ・ヤゴ・ヤゴ
「ヤゴ・ヤゴ・ヤゴ(Casio EX-ZR1000)」

本来は流水に棲むはずのオニヤンマのヤゴ(こげ茶色の大型ヤゴ)までいたのには
驚きました。ほかは、イトトンボの仲間(左下の細身の個体)と、
ヤンマの仲間(黒い大型の4匹)、小さい2匹はコサナエです。

コオイムシの多い池や、オオミズスマシの多い池、
一帯に散らばる溜池は、それぞれに優占種が異なっており、
網を入れるたびに次は何が入ってくるか、わくわくしました。

久々に見たトラフシジミ(春型)
「久々に見たトラフシジミ(春型)(Olympus OM-D E-M1mk2)」

どこにでもあるマメ科植物を食草とする割には、
なぜか都市部ではほとんど見られないトラフシジミ。
美しい翅の表面が多少わかる写真が撮れてラッキーでした。

ベニヒラタムシ
「ベニヒラタムシ(Olympus OM-D E-M1mk2)」

こちらは、伐採木に飛んできたベニヒラタムシ。
周囲には雪が残っていたので、越冬場所から出てきて、
最初のフライトだったかもしれませんね。

山肌の残雪
「山肌の残雪(Olympus OM-D E-M1mk2)」

こんなスケールの大きな風景を背に、
北陸の春の虫たちをたっぷり堪能してきました。

カラスの城?
「カラスの城?(Olympus OM-D E-M1mk2)」

こちらはオマケ。
日が暮れると、宿泊したホテルの屋上にたくさんのカラスが集まってきました。
カラスは、近くに森があれば夜はそこで過ごすという認識でしたが、
こんなに人工的な空間でも抵抗はないのでしょうか?