ぼくは 「おばあちゃん子」で育ったせいか、
年配の女性とお話をしていると、非常に穏やかな、満たされた思いになります。
血のつながったおばあちゃんは、ずいぶん前に死んでしまったけれど、
その後も、「慕うおばあちゃんがいる」という状況がとても好きです。
自分も50歳をすぎて、いい年こいたおっさんなのですが・・・。

そんな、慕っていたおばあちゃんが、亡くなってしまいました。
地元のフィールドに出かける際、
食事のためにかならず立ち寄っていた、老夫婦の経営するレストラン。
和・洋・中なんでも作ることができ、腕のよい料理人であるご主人と、
いつも太陽のような笑顔で迎えてくれたおばあちゃん。

昨年末から2回続けて姿が見えず、ご主人と見知らぬウエイターさんだけなので、
とても心配していました。 3回目となる今回も不在で、食事を終えて支払いの際に、
思い切って、「最近、おかみさんの姿が見えないけれど、お元気でしょうか?」
とご主人に訊ねてみました。
すると、「言おうかどうか、迷っていたのですが・・・」という言葉につづき、
「12月に亡くなりました」、というお返事が。

「入院しています」、というぐらいのお返事は覚悟していたけれど、
まさか、亡くなっていたとは・・・。
食事の合間に世間話をするぐらいで、お名前も知らないおばあちゃんでしたが、
1日の撮影を終えたあと、すっかりおなかをすかせて到着するぼくを、
あの満面の笑顔で迎えてくれることはもうないのだと思うと、悲しくて仕方がありません。
「二度と会えない人」が、またひとり増えてしまいました。

事前になんの兆候もなく、就寝中のまさかの急死だったそうで、亡くなったご本人も、
新しい年の春を迎えることができないとは、夢にも思わなかったでしょう。

春の光景
「春の光景」

今回はフィールドの帰りではなく、おばあちゃんの安否を確かめるためだけに
お店に寄ったわけですが、
覚悟していた以上の、最悪のニュースを聞くことになってしまいました。

親戚が亡くなれば、連絡が来るけれど、亡くなっても、連絡がもらえるような関係ではない。
そんな人のなかにも、自分にとって、かけがえのない人がいるものですね。

暗い話題なので、写真だけでも明るいものをアップしておきます。
そのレストランで食事した、3年前の春の日。
いつものフィールドで撮った写真。
 先週の金曜日のこと。
プラタナスの巨木の下を歩いていると、樹皮がぱらぱらっと落ちてきました。

落ちてきた樹皮
「落ちてきた樹皮」

風もないのに、いったい何ごと? と見上げれば、4メートルほどの高さに鳥の姿が。
幹の垂直面に止まるその姿勢から、一瞬、こんな都心にコゲラ(キツツキ)? 
と驚いたのですが、すぐに、ああムクドリか・・・と気づきました。

いったい何をしているのだろう? と見ていると、
樹皮を次々に剥いでは、その下にいる何かを食べているようです。
捕食対象にくちばしを垂直につきたてる 「ついばむ」スタイルではなく、
樹皮を剥いだあとの幹に頬をこすりつけるようにして、くちばしの側面を使い、
何かをこそげるようにして食べています。

このプラタナスには、暖かくなれば多数の「プラタナスグンバイ」が発生するのを
毎年のように見ており、今の時期は、樹皮下に集団を作って越冬しているはずです。

プラタナスグンバイ(白バック)
「プラタナスグンバイ」

プラタナスグンバイというのは、
日本では2001年に初めて見つかった北米原産の外来種で、セミに近いなかまですが、
ムクドリはおそらく、そのプラタナスグンバイの越冬集団を食べているのでは
ないかと思います。
食べているものが、ぼくの位置からはまったく見えないというのも判断の根拠で、
体長3ミリ強ほどの小さい虫ですから、この距離からは絶対に見えないはずです。
頬をこすりつけるようにして、くちばしの側面を使っていることも、
いかにも「微小な昆虫の集団をまとめて食べている」ように見えます。

で、その写真はどこ? と突っ込まれる展開ですが、
実はちょうどカメラを体から離したところで、うかつにもぼくは「丸腰」でした。
ダッシュでカメラのところまで引き返し、5分もかからずに現場に戻ったのですが、
すでにムクドリの姿はなし。 地上に散らばる樹皮だけの写真になってしまいました。
やはり、カメラは肌身離さず持っていないといけませんねえ・・・。
樹皮をひろい上げて、プラタナスグンバイの姿をさがしましたが、見つからず。
といっても、ぼくの過去の観察事例では、樹皮下で越冬するプラタナスグンバイは、
たいてい樹皮側ではなく、幹側に集団を作っているので、
こんなことも十分ありそうに思えます。

この日の夜は、業界の新年会。
立食パーティーの開始を待つ間、昆虫写真家で集まって談笑しているところを、
科学絵本の編集者のIさんに撮っていただきました。

新年会にて
「新年会にて」

右から、仙台の中瀬潤さん、宮崎の新開孝さん、ぼく、沖縄の湊和雄さん
こんな大御所に囲まれて、4コマ漫画のオチみたいなぼくは、
いちばん隅っこに座らないといけませんねえ。 湊さんすみません・・・。
2016.01.01  謹賀新年
 あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は、1年以上も前から会期が決まっていた
新刊発売記念の写真展にぶじ間に合って、2冊の本を出版することができました。
最新刊の、『調べてみよう 名前のひみつ 昆虫図鑑』(汐文社)が、
ちょうど10冊目の著書ということになります。
税別3200円と高い本ですが、お近くの図書館などにリクエストしていただければ幸いです。

著書紹介2016元旦
「2015年の新刊(上段中央の2冊)」

もう一つの新刊 『虫とツーショット ― 自撮りにチャレンジ! 虫といっしょ』
(文一総合出版 ・ 税別1200円)は、
新聞や雑誌、ネットメディアなどに、数多くの書評や取材記事を掲載していただきました。
現在もネット上でご覧いただけるものとしては、デイリーポータルさんの記事や、
メレ山メレ子さんによる書評などがありますので、ぜひお読みいただければ幸いです。

「デイリーポータルZ」 (2015年8月12日記事)
http://portal.nifty.com/kiji/150812194292_1.htm

「メレンゲが腐るほど恋したい」 (2015年6月13日記事)
http://mereco.hatenadiary.com/entry/20150613/1434176503

現在、また新しい本の準備を進めています。
完成間近となりましたら、当ブログにてご案内させていただきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
 先週の金曜日(11日)、関東では、猛烈な強風が吹き荒れました。
台風が通りすぎた直後のような生あたたかい風が流れ込み、
観測史上、12月の最高気温を更新したところも多かったようです。

黄色いじゅうたん(東京都豊島区にて)
「黄色いじゅうたん(東京都豊島区にて)」

温暖化の影響なのか、年々、落葉が遅くなっているように感じるイチョウも、
強風でいっせいに葉を落としました。

紅葉のアクセント
「紅葉のアクセント」

一面に広がる黄色いじゅうたんの中に、こんな紅葉のアクセントも。

季節はずれの陽気に、越冬場所から誘い出されてきた虫でもいないかと思って
探してみましたが、都心にいたせいか、何も収穫はありませんでした。

夜には、オリンパス・プロユーザー忘年会に出席。
受付には長蛇の列ができており、いったい何百人が訪れたのでしょうか。

オリンパス忘年会にて(黒柳昌樹さん撮影)
「オリンパス忘年会にて(黒柳昌樹さん撮影)」

海野和男さん尾園 暁さんと一緒に。
自撮りしようか・・・と一瞬思いましたが、3人一緒はさすがに無理で、
黒柳昌樹さんに撮っていただきました。

現在、オリンパスのカメラに続々と搭載されつつある「被写界深度合成」機能は、
革命的な技術と言ってよく、最も恩恵を受けるのが昆虫写真家かもしれません。
先に使い始めているみなさんからの情報は大変ありがたいもので、
ぼくも、あまり遅れを取らないようにしなければならないと思いました。
白バックの昆虫撮影では特に、ぼくがやっているような従来の手法による作品は、
2~3年以内に市場価値を失ってしまうかもしれません。
昼と夜とで、異質の強風を肌に感じた1日でした。
 「虫とツーショット」は、
アマゾンでは引き続き品切れとなっていますが、ほかのサイトでは大丈夫のようです。
honto楽天文一総合出版 などではご注文をいただけますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

サイトによっては、ジャンルが「学習」となっており、
う~む、学習で大丈夫かな、本当に学習の本を書いている人に怒られないかな・・・、
と心配になってしまいますが、本書は、まず児童書という大きな括りの中で、
ジャンルとしては、「エンタメ」のつもりでいます。「昆虫エンターテインメント」ですね。
大人にとっては、「サブカルチャー」という見方をされる方もいるかもしれません。

さて、先週の土曜日(5月30日)。
東京都北区の企画に呼んでいただき、昆虫のお話をしてきました。
室内での、写真を使ったお話が半分、外での実地観察が半分、という企画です。

室内でのお話
「室内でのお話」

昆虫の体のつくりの基本的なお話をしつつ、
これから野外で実際に虫を見る際のコツのようなものも、お話の中に含めました。
会場は、清水坂公園の中にある「自然ふれあい情報館」。
建物の表側には、子供たちが遊べるような広場と水路のある公園があり、
裏手には、自然観察園があります。

公園側は、やはり昆虫層があまり豊かな環境ではなく、公園としての美観を損なう下草などは
刈ってしまうため、多くの樹木はあっても、昆虫の姿はあまり見られません。
公園本来の目的からすれば、これは致し方ないことでしょう。

外での観察
「外での観察」

自然観察園は、常駐スタッフの努力もあって、良好な環境が保たれており、
非常に狭い面積であるにも関わらず、樹木、下草、水域まで、
盛りだくさんの環境が維持されています。
美しいクロスジギンヤンマや、ヤナギルリハムシの食痕などを観察してもらいました。
チャドクガの幼虫集団が見られ、身近にいる危険な毛虫を実際に見ていただけたのは、
よかったと思います。

日本農業新聞に、「虫とツーショット」の書評を載せていただきました。
ぼくのブログに載せてもよいと言っていただいたので、ご紹介いたします。

日本農業新聞紙面から
「日本農業新聞紙面から」

あす月曜日には、いよいよ次の本の制作が、ぼくの手から離れる予定です。
イベントに間に合うように、2冊を同時に進めるのは、思った以上に大変でした。
年に5冊も10冊も出す方がいますが、自分とは別次元の力量だな・・・と思います。