「フユシャクを一緒に見に行きませんか?」と誘っていただき、
27日の夕方、神奈川県某所まで行ってきました。フユシャクとは、成虫が冬にだけ現れる
シャクガ科の蛾の総称で、♀の翅は退化しており、国内から35種が知られています。
一寸野虫さん蛾LOVEさん川北和倫さん、ここまでが、本職の蛾屋さんで、
あとは、尾園 暁さんそよ風ふくさん、ぼく、の「素人3人組」(笑)です。

その3人が集合場所に到着した時には、もう本職のお三方はポイントを一周されたところで、
ここにナミスジフユナミシャク♀がいます。あちらには、クロバネフユシャク♂がいますよ、
と次々にその成果を教えてくださいます。ぼくらも、虫を探すことにかけては
目利きの方なのですが、本職の蛾屋さんの「眼」というのは、もう別次元のスペックですね。
「どうしてこれが眼に入るの?」と、いつもならぼくが一般の方に言われる言葉を、
気がつけば自分で発してしまっています。

冬の残照が、弱々しく濃紺の空に溶けていき、深まりゆく闇の中で冷気が育ちはじめると、
夜はしんしんと冷え込んでいきます。6本のライトが思い思いの木を照らし、
光芒の中に、お目当ての蛾の姿を探します。「クロスジフユエダシャクが産卵しています」、
「ここでは個体数の少ないイチモジフユナミシャクです」、と次々に声が上がりますが、
ぼくには、電話BOXの灯りに来ていたウスバフユシャクぐらいしか目に入りません(笑)。
電話BOXの灯りに来たウスバフユシャク
「電話BOXの灯りに来たウスバフユシャク♂」

自分も見つけなければ・・・という焦りを通り越し、だんだんとみじめな気分になってきた頃、
ようやく、ナミスジフユナミシャクの交尾ペアを、サクラの幹で発見しました。
左側がぼくが発見したもの。右は、尾園さんが発見したペアです。
この晩は、ナミスジフユナミシャクが多く、本種のちょうどよい時期に当たったようです。
ナミスジフユナミシャクの交尾
「ナミスジフユナミシャクの交尾態 2例」

「森上さん、ほらここ、キリガが花に来ていますよ!」 と蛾LOVEさんに教えていただき、
目を向けると、そこには華やかな世界が・・・。
地味な色をしたフユシャクの探索で、およそ色というものを忘れかけていた眼には、
眩しすぎるほどの光景です。
スギタニモンキリガ
「ヤマノモンキリガ」

吸蜜するヤマノモンキリガ。
識別のきわめて難しい類似種(※)が2種いるそうですが、そのどちらでもなく、
まちがいなくヤマノモンキリガであると、識別点の解説つきで教えてもらいました。
それにしても、じつに贅沢な撮影です。
ポイントに案内してもらい、虫を見つけてもらって、さあどうぞと撮影させてもらうことを、
この世界では「殿様撮影」と呼びますが、その上になお、図鑑なみの解説がつき、
最後は埼玉の自宅まで車で送り届けてもらうという「殿様」ぶり(笑)ですから、
もう、いつバチが当たっても仕方がないと思えるほどの、あまりにも贅沢な1日でした。
ただただ、みなさんに感謝です。

路上で白バック撮影
「路上で白バック撮影」

白い紙を路上に敷き、蛾を載せて即席の白バック撮影をする、蛾LOVEさんと川北和倫さん。
善良な市民の目に触れたら、通報されそうな怪しい光景ですが、
この方々がいなかったら、日本の蛾の研究は、まちがいなく何年も遅れることでしょう。
在野の研究者としては、トップクラスのお二人です。

この日は、ぼくとしては、チャバネフユエダシャクの♀が一番の目的だったのですが、
4時間を超える探索でも見つからず。残念だけど、ほかのフユシャクはたくさん見られたし、
まあいいや、次に期待しよう・・・と諦めモードになりかけていた頃、
ぼくの位置からはすでに見えない隊列の先頭から、「いました!」という連絡が入りました。
それっ!とみんなでダッシュ。 坂を一気に駆け上がって、ようやく先頭に追いつきました。

正式名称よりずっと有名な(?)、通称「ホルスタイン」。
存在感たっぷりの大型種で、白地に黒のぶちのある姿を乳牛に見立て、
蛾屋さんたちは、親しみと敬意をこめて、本種の♀を「ホルスタイン」と呼びます。
なにしろ、ナミスジフユナミシャクの♀と並べると、迫力がこんなにもちがうのです。
フユシャクの♀2種
「チャバネフユエダシャクの♀(左)と、ナミスジフユナミシャクの♀」

最後の最後に目的を達成する、という、ドキュメント番組さながらの展開で、
ほかにも7種のフユシャクを一度に見られ、ぼくとしてはホクホクの1日でしたが、
この場所に通いなれている一寸野虫さんによれば、
「この時期なら、本来は2ケタ種が見られても不思議ではない」そうです。

5時間にも及ぶ真冬の虫さがしで、体こそ冷え切ったものの、
それだけに、すばらしい虫仲間の温かさがひときわ身にしみて、
感謝と満足感いっぱいで、「よいお年を!」とご挨拶してお別れしました。
一年の締めくくりのフィールドとしては、これ以上は望めないほどの、
最高の1日だったと思います。

(※ 当初、そのまぎらわしい別種の一つ「スギタニモンキリガ」として
アップしてしまいました。「スギタニ」との識別点を教えていただいているうちに、
ぼくの中で両者が入れ替わってしまったようです。お詫びして訂正いたします。)
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9月1日から始めたブログですが、どうにかこうにか、ここまで続けてくることができ、
ぶじに新しい年を迎えられそうです。最近では、お会いする方に「読んでいますよ!」
とお声をかけていただくことも増え、大変ありがたいことだと感謝しております。
当ブログにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。
お健やかに、よいお年をお迎えください。