ちょうど1週間前の日曜日。
宮崎在住の昆虫写真家・新開 孝さんを中心とする8名のメンバーで、
埼玉県飯能市のフィールドを歩いてきました。

風もなく、おだやかなポカポカ陽気で、12月だというのに、太陽の光がまぶしいぐらいです。
この時期は晴れていても、風があるというだけでひどく体感温度が下がるものですが、
無風に近い林縁の斜面は、太陽光パネルのように熱を受けて温まっており、とても快適です。

冬の昆虫観察では、一部を除き昆虫が飛んだり跳ねたりしないので、遠方を見る視線でなく、
より近く、より足もとを見つめる視線になり、必然的に、歩みもそれだけ遅くなります。
「時速100メートル」といったところでしょうか。
国会審議で野党が使う「牛歩戦術」の方がずっと速いぐらいです(笑)。

虫がいたよ~
「虫がいたよ~」

誰かが何かを見つけると、みんなで集まって、どれどれ・・・と覗き込み、
場合によっては一人ずつ順番に撮影するので、
通りがかったハイキングの人まで、しばしば足を止めて、
「何がいるんですか、めずらしいものでも見つけたんですか?」 と覗き込んできます。
「虫? ああそう、虫ね・・・」と落胆して去って行かれるケースが多いのですが、
手のひらに乗るぐらいの大きさのものを皆で覗き込んでいるわけですから、
いったいそこに、どんなものを期待されたのでしょう。
こんなところで、オオサンショウウオなどを期待されても困ります(笑)。

さて、Iさんが林縁で、重なり合っている怪しいコナラの葉っぱを発見。
そっと開いてみると、そこにはミヤマセセリの幼虫がいました。
探そうと思って見つかるものではないので、これはお手柄でした。参加者のほとんどが
初めて見るものです。もっと寒くなると、葉っぱごと落ちて、そのまま冬を越します。
巣の中にいたミヤマセセリの幼虫
「巣の中にいたミヤマセセリの幼虫」

陽当たりのよくない切通しには、そのような場所を好む地衣類が育っており、
Sさんがあっと言う間に、地衣類に化けているコマダラウスバカゲロウの幼虫を発見。
「ここにいるのを、前に見て知っているから」と言いますが、
それでも5秒で発見とは、お見事というほかありません。
何しろ、こんな虫が、こんなところに身を潜めているのです。
地衣類の中に潜むコマダラウスバカゲロウの幼虫
「地衣類の中に潜むコマダラウスバカゲロウの幼虫(頭を下に向けています)」

いるとわかって探しても、探し出すのにもう少し苦労しそうなものですが、
「あ、ここにも、ここにもいる」と次々に3匹も見つけ出してくれました。
コマダラウスバカゲロウの幼虫は、いわば「巣を作らないアリジゴク」で、
落とし穴を作らず、通りすがりの小さな昆虫などを捕らえてそれをエサとしています。
すり鉢状の落とし穴を作るアリジゴクというのは、むしろ例外的な存在で、
ウスバカゲロウの仲間の幼虫の多くは、巣を作らずに生活しています。
そんな効率の悪い狩りをしていて、よく成虫になれるものだなあ・・・と感心してしまいます。

落とし穴を作るタイプのアリジゴクは、子供時代に飼ってみた人も多いと思いますが、
飼育すると意外にエサに困った、という話を聞くことがあります。
おそらく、エサをやるべき頻度を誤解されているのでしょう。待ち伏せ型の狩りを行う虫は、
絶食に強いものが多く、アリジゴクの場合、たとえば3齢(終齢)の幼虫にクロオオアリを
1匹与えたら、2~3週間は与えなくても大丈夫です。
もっと頻繁にエサをやらねば・・・とおそらく誤解されているのだろうと思います。

また、それでもエサに困るという人は、釣りエサとして売られている「赤虫(ユスリカの
幼虫)」を釣り具屋さんで買ってくれば、これは非常によいエサになります。
200円(税別)を最小単位として売られていることが多く、
その中に、おそらく300匹以上の赤虫が入っているでしょう。
湿らせた新聞紙などに包んで冷蔵保管すれば、かなり長い間、生かしておくことができます。

釣りエサにする赤虫は、泥深い水の底に住む水生昆虫であり、
乾燥した地面に巣穴を作るアリジゴクが、自然の中で出会うチャンスはありません。
遭遇可能性はゼロと言ってよいでしょう。まるでライオンに鯨肉を与えるような構図ですが、
3齢(終齢)の幼虫に赤虫だけをやっておけば、ちゃんと蛹になり、成虫になります。
赤虫も、捕えられれば暴れますから、2齢以下の小さいアリジゴクの場合は、
赤虫を捕獲できるかどうかがカギになります。
なお、いかなる場合も、赤虫の体が濡れているとアリジゴクが捕獲しづらそうなので、
湿らせた新聞紙などから出した赤虫は、1分間程度は放置し、
体表を乾燥させた方がよいと思います。

ポカポカの斜面で記念撮影
「ポカポカの斜面で記念撮影」

お弁当を食べたあと、斜面で記念撮影。ポカポカ陽気の、冬の好日を皆で楽しみました。
また季節を変えて、同じ場所を訪れてみたいものです。