上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 「では、なぜ一眼レフを使うのか」の後編です。
理由その2。 「特殊レンズを使うために、一眼レフが必要である」。

昆虫撮影に必要とされる「特殊レンズ」とは、主として以下の3種類です。
(1)対角線魚眼レンズ、(2)ティルト/シフトレンズ、(3)高倍率マクロレンズ。
いずれもコンデジがカバーできる領域ではなく、これら特殊レンズの効果を
得たいと思ったら、一眼レフ用の交換レンズを揃えなければなりません。

最近は、世の中が世知辛くなってきたせいか、カメラメーカーも、これらの特殊レンズを
「売れ筋商品ではない」として、ラインナップから外すケースも目につくようになりました。
こうなるともう、一眼レフには、色空間の管理以外、アドバンテージはありません。
ところが、そういうメーカーの方が多くなってしまったのが、悲しい現状なのです。

一眼レフシステムというものは、システム全体で評価すべきものであり、
その中には当然、売れ筋商品もそうでないものも含まれ、トータルで利益が上がればよい、
とするのが正しいスタンスではないかと思いますが、「デジタル化以降、ラインナップから
消えてしまった高倍率マクロレンズを、再びラインナップに戻してほしい」、
と要望を言っても、「そんなレンズは、ほとんど売れないし、出すとしても後回し」、
などと、平然と言われるようになってしまいました。
ぼくはそれを、ひどく 「さもしい了見」だと思います。
昔のカメラメーカーは、宇宙から微生物に至るまで、いかなる特殊領域をもカバーできる
レンズラインナップを提供し、「文化の担い手」としての矜持を持っていたと思いますが、
最近は、レンズ個々のちっぽけな目先の損得に踊らされているだけのように思え、
「そんなロマンの欠片もない仕事をしていて楽しいか?」と、見ていて情けなくなります。
書店で、売り場面積いっぱいに、村上春樹の新刊だけを並べ、
それがマーケティングだ、と言っているのと一緒ですね。
そんな状態で店を開けていて、きみたちは恥ずかしくないのかと。
(実際にそんな書店があったわけではありません。)

あるカメラメーカーだけが製造している、きわめて特殊な1本のレンズがどうしても必要で、
それをボディとともに購入し、以後、売れ線のレンズも同じメーカーで揃え、
気がつけば、そのメーカーのシステムに200万円を投じていた。
フィルム時代のぼくの実体験ですが、それが、システムカメラの正しい売り方だと思います。
ところが、(1)、(2)、(3)の特殊レンズを全てラインナップしているメーカーは、
今やキヤノンだけになってしまいました。ニコンには(3)がなく、
それ以外のメーカーには、驚くべきことに(2)も(3)もありません。
ぼくは、一眼レフカメラでは、ニコンユーザーに「うっかり」なってしまいましたが、
(3)を使うためだけに、キヤノンのボディを1台、所有しています。
昆虫の「本格的な」撮影をめざす方が、これから一眼レフシステムを導入されるなら、
キヤノン以外のメーカーを選ぶべき積極的な理由はない、と申し上げておきます。

メーカーの悪口はこれぐらいにして(笑)、特殊レンズの作例をアップしておきましょう。
記事がやや長くなってしまったので、高倍率マクロレンズの作例は割愛します。「拡大率が
非常に高い」という写真は、実写作例がなくても、ご想像いただけるものと思います。

対角線魚眼作例(右が魚眼)
「対角線魚眼レンズの作例。 左は、望遠系マクロレンズで撮影 (アブラゼミの抜け殻)。」

左右とも一眼レフでの撮影ですが、左の写真ならば、コンデジでも十分に撮れますね。
しかし右のように、こんなにも広い環境を写し込んだ写真は、コンデジでは撮れません。
画面の対角線方向に180度の画角(真横が写る)を持つ「対角線魚眼レンズ」は、
描写に歪みはあるものの、昆虫のいる環境を丸ごと描写できる貴重なレンズなのです。

ティルト作例(左から、しない、した、その状態のレンズ)
「ティルト/シフトレンズ 「PC-E Micro NIKKOR 45mm」 による作例(オオクワガタ)。」

ピント面というものは、撮像素子面(やフィルム面)と平行であるのが普通です。
紙のプリントを複写すれば、全体にピントが合うのはこのためですね。
プリントに正対しているのに、プリントの上の方だけピントが合っていて、下に向かって
ボケていく、なんてことがないのは、ピント面が、撮像素子面と平行であるからです。
しかし、昔の「蛇腹カメラ」などは、蛇腹部分をフレキシブルに動かすことで、
レンズだけを上に向けたり横に向けたりして、ピント面をコントロールすることが
できました。こういう撮り方を「ティルト」と言い、ティルト/シフトレンズは、
ピント面と撮像素子面との間の、平行の関係を崩すことができます。
左のオオクワガタは、ティルトせずに撮った写真。真ん中がティルトした写真で、
右は、その状態のレンズです(このまま、カメラをタテ位置にして撮影しています)。
オオクワガタの後ろ脚と、お尻に注目してください。ここまで角度のついた
厳しいアングルからでも、きちんと奥までピントを合わせることができるのが、
ピント面のコントロールを可能とするティルト/シフトレンズなのです。

ティルト/シフトレンズは非常に高価なもので、ぼくは23万円で購入しました。
今では「深度合成」という手法で、ティルト/シフトレンズが受け持っていた撮影領域の
一部がソフト的にできるようになってしまったし、このレンズさえ買っていなければ、
さっさとニコンを見限って、キヤノンに鞍替えできたかなあ・・・と、時々後悔するレンズです。

メーカーの、もの作りの哲学には、すでに顕在化している需要に応えるだけの
「マーケット・イン」と、「こんなもの作ってみたぜ!」と、製品先行で需要を掘り起こし、
顧客に独創的な提案をしていくタイプの 「プロダクト・アウト」とがありますが、
カメラメーカーたるもの、見栄を張ってでも、後者の姿勢をアピールすべきだと思いますね。
昨今のカメラメーカーの、あまりにもスケールの小さな損得勘定や、
ボリューム・ゾーンにおもねるだけの短絡思考は、見ていて息苦しくなるほどで、
こんなにも「売れ筋、売れ筋」と言っているようでは、そのうち、
カタログの「標準ズームレンズ」、「望遠ズームレンズ」の次のページには、
「EXILEのCD」、「村上春樹の本」、「崎陽軒のシューマイ」が、
ごく普通に並ぶ日が来てしまうかもしれません。

・・・ああ、一度は軌道修正したのに、結局、メーカーの悪口で終ってしまった(笑)。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。