ブログの更新が少々滞りました。すみません。
出版企画をひとつ通すのに、かなり難航し、通ったあと、脱力しておりました。
来年初夏には、これで何とか2冊の本が同時に出せそうです。がんばらねば・・・。

ツバメシジミの交尾(600万画素コンデジ)
「ツバメシジミの交尾(600万画素コンデジ)」

さて、昆虫撮影にはどんなデジカメがよいか、ときどき相談を受けることがありますが、
選択肢が多すぎて、どう選んでよいか、悩んでしまう方が多いように思います。
規格が実質的に1種類のみだったフィルム時代とは異なり、
デジカメでは、レンズの焦点距離ひとつとっても、撮像素子のサイズにより、
同じ焦点距離のレンズが望遠にも標準にもなるので、
慣れるまでは、確かにややこしいものだと感じますね。

相談を受けて一番困るのは、すでに一眼レフを購入されていて、
「どうしてもシャープに撮れないが、どうしたらよいか?」 と訊かれるケースです。
購入の前であれば、迷わずコンパクトデジカメ(コンデジ)をお薦めするのですが、
高価な一眼レフを購入後だと、「無駄な買い物をしましたね」、とも言えず、
「とりあえず感度を400~800にして、F16に絞り、内蔵ストロボを光らせてください」
という、苦しまぎれの「対症療法」をお伝えするしかありません。
一眼レフで写真を撮るということは、乗りこなしの難しい10トントラックのハンドルを
握るようなもので、どうしてもそういう車が必要なのだ、という「覚悟」がない限り、
それと同様にシャープな写真を撮るのは難しいものです。
ぼくも、観光旅行には、昆虫に出会える可能性があっても、一眼レフは置いていきます。
使いにくい、面倒なカメラを持っているというだけで旅行が楽しくなくなってしまうし、
意外な虫との出会いがあったとしても、コンデジさえ持っていれば何とかなるからです。

カメラ初心者の「虫屋」(=昆虫愛好家)さんが、記録としての昆虫写真を撮り、
学会誌や同好会誌に投稿しようという場合、コンデジで撮る方が圧倒的に失敗の少ない、
よい写真が撮れると思って間違いありません。ピンボケになりやすい接写の領域で、
ピントの失敗が少なく、はるかに歩留まりがよいのがコンデジなのです。
100の苦労をして100点の写真が撮れるのが一眼レフなら、
10の苦労(?)で、80点の写真が撮れてしまうのがコンデジだと言ってよいでしょう。
アゲハ(1200万画素コンデジ)
「アゲハ(1200万画素コンデジ)」

セグロアシナガバチの巣材集め(1200万画素コンデジ)
「セグロアシナガバチの巣材集め(1200万画素コンデジ)」

アゲハのポートレートと、セグロアシナガバチの巣材集め(お墓にある卒塔婆の表面を
齧っている)を、ごく平凡な1200万画素のコンデジで撮ってみました。
アゲハの方は、すでに雑誌でも使ったことがあるカットですが、商業印刷に十分使えます。
背景が見通せる位置から撮影したセグロアシナガバチの方は、
うしろのお墓がうっすらと見え、昆虫のいる周辺環境がわかるということでは、
バックが完全にボケてしまう「一眼レフ+マクロレンズ」という組み合わせより、
ずっと雰囲気のある描写をしてくれると言ってよいと思います。
わずか1万7千円で買ったコンデジ(カシオEX-ZR100)ですが、なかなか見事な描写です。

写真の二大失敗要因は、「ブレ」と「ピンボケ」ですが、
コンデジは、その構造上、ピントの合うエリア(奥行き)が広く、
一眼レフよりずっとピンボケになりにくい、というアドバンテージを持っています。
たとえばVサインをしている人物を撮る場合、Vサインにピントを合わせれば顔がぼけ、
顔にピントを合わせればVサインがぼけてしまうのが一眼レフですが、
コンデジで撮ると、どちらにもきっちりピントが合っているという、
一眼レフでは決して撮れない写真が簡単に撮れてしまうこともあるほどです。
コンデジは「ピンボケから解放されたカメラ」と言えるでしょう。
アブラゼミ(600万画素コンデジ)
「アブラゼミ(600万画素コンデジ)」

一眼レフには、非常に高性能のオートフォーカス機能が搭載されていますが、
少し意地悪な言い方をすれば、そうでもしないとコンデジ並みにピントが合わないからだ、
と言ってもよいと思います。
このアブラゼミの写真といい、上の方で紹介したツバメシジミの交尾写真といい、
ピントの合うエリア(奥行き)の広い特徴を活かした撮影は、適度に背景も描き出し、
周辺環境の情報量の多いこうした写真は、記録的価値としては特にすぐれています。

コンデジの進化には、めざましいものがあり、最近では、何枚も連写して
よいものを後から選べたり、連写したカットを、明暗に傾斜配分して合成することで、
明部を飛ばさず暗部もツブさないという、奇跡の「両立」写真が簡単に撮れてしまったり、
保守的な一眼レフを、はるか彼方に置き去りにするような先進機能を搭載した
意欲的なコンデジが次々に登場してきています。
ぼくは、一眼レフは2010年発売の機種をいまだに使い続けており、買い替えたい機種も
市場に存在しませんが、コンデジは、毎年のように新機種を買っています。
フィールドへ持って出る機材の95%以上の重量は、今なお一眼レフシステムのものですが、
お昼の弁当を食べながらふと気づけば、今日は、朝からコンデジしか使っていないなあ・・・、
ということが、しばしば起きるようにもなってきました。
12kgある日帰り取材のセットが、いずれは1kg以下で済む日が来るのかもしれません。
今どきのコンデジ、恐るべしです。