少し前に、ネコ顔のヒメジャノメ幼虫が蛹になったというご報告をしましたが、
今度は、同じササの鉢植えで、ヒカゲチョウが蛹化のときを迎えました。
ササ類を食草とするイモムシの取材ということで、もともとは、ヒカゲチョウの方を
メインの撮影対象として飼育を始めたのですが、ぼくが、ネコ顔のヒメジャノメばかりを
「猫かわいがり」した結果、ヒカゲチョウの幼虫は、今回がブログ初登場となります。ヒカゲチョウ幼虫(白バック)
「ヒカゲチョウの幼虫」

ヒメジャノメの幼虫と同じように、頭に2本の突起をつけてはいるのですが、
両者が平行に伸びているため、耳のようには見えません。
尾端も2つに分かれているので、一見、どちらが頭かお尻か、わかりにくいスタイルです。
こういう、体の前と後ろがわかりにくい昆虫は決して珍しいものではなく、
一般的には、捕食者である鳥などへの視覚攪乱効果があるのではないかと言われています。
捕食者が、頭であると誤認してそこを攻撃すると、実はそこはお尻の先であって、
昆虫としては、最初の一撃が致命傷となることを回避でき、
「次の矢」を受ける前に、辛くも逃げ切ることが可能、というしくみなのですが、
あくまでそれは、飛んだり跳ねたりできる虫ならではの対応であって、
ゆっくり這うだけのイモムシにとって、体の前後を誤認させるこのスタイルが
どのように機能しているのか謎です。

きゅっと丸まってフリーズしていた「前蛹」の状態は、まる1日以上続きます。
10月20日の記事でご紹介した、ヒメジャノメと同じスタイルですね。
時が満ちると、脱皮の衝動が波のように全身に伝わっていき、
体を伸ばすとともに、蛹化が始まります。
ヒカゲチョウの蛹化(前半)
「ヒカゲチョウの蛹化(前半)」

頭のすぐ後ろが、まず割れるようで、幼虫の皮が、体の後ろへ後ろへと送られていきます。
尾の先端で葉にぶら下がっているわけですから、この脱皮は、重力に逆らう方向となり、
あくまで虫自身による自発的な動きです。 何としてでも、一気に脱ぎ切るのだ、という
強い意志を感じるほどで、ファインダー越しに見ている方にも力が入ります。
幼虫時代の頭が、もとあった位置から、体のおなか側を通り、後方(写真では上の方)へ
ぐんぐん送られていくところに注目してください。

脱皮がとりあえず完了すると、最後は、まだやわらかい体をぶるん、ぶるんと振り回し、
足場の固定が万全であるかどうかを、確かめているようなしぐさを見せます。
ヒカゲチョウの蛹化(後半)
「ヒカゲチョウの蛹化(後半)」

この運動は十数回ほども続き、蛹はその後、ピタリと動きを止めました。
ようやく、重力に身をゆだねることができ、ホッとした、というところでしょうか。
あとは、時間をかけてじわじわと、ゆるんでいたような輪郭が締まり、
蛹らしい、鋭角的なシルエットに変化していきます(下段右端の写真)。
蛹化開始から、脱皮が完了するまでに、およそ15分。
輪郭が整うまでには、もう15分ほどかかりました。
全体でも、わずか30分のドラマということになります。

あちこちのササの葉裏で、毎年、数知れぬ同じドラマが展開されているはずですが、
それを見られるチャンスは限られています。いち早くそれを見届け、伝えたいと思う
気持ちがあるうちは、昆虫写真家は長時間の撮影待機にも耐えられるわけですね。

ところで、10月16日の記事で、
「切ったササの葉は、まったく日持ちがしない」、と書いたのですが、
同じようにクロヒカゲを飼育されている 新開 孝さんのブログ 「ひむか昆虫記」で、
ほとんど同じ時期に、
「ササの葉はちょっと工夫すれば、4〜5日は保つから飼育は簡単」
という記事が出てしまいました(笑)。
「ぼくの立場がないじゃないですか(泣)」、というメールをさし上げたのですが、
新開さんは、この出来の悪い後輩に、「こうすればいいんだよ」と言って、写真まで添えて
秘伝を親切に教えてくださり、これは他言してはいけないのだろうな・・・と思っていたら、
10月31日のブログで一般公開されました。なんという気前のよさでしょう(笑)。

まあ、何も工夫しないと、ササは萎れやすいもの、ということは
確かにそのとおりではあるのですが、ぼくの知識と工夫が足りませんでした。
読者の皆様にはお詫び申し上げます。
両ブログの記述に相違がある場合は、「ひむか昆虫記」 優先でお願いします(笑)。

あ、新開さんは今日がお誕生日でしたね。おめでとうございます。