機材紹介の3回目、今回が最終回です。
機材に興味のない方にとっては、つまらない話題が続き、すみませんでした。
それでは、最後にストロボについてのお話を。
日帰りセット(ストロボ)
「日帰りセット」

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オリンパスの、エレクトロニックフラッシュT32 (自作ディフューザー付き)。
10年以上も前に絶版になった、古い古いストロボです。フィルム世代の製品ですね。
外付けストロボとしては、背の低い特異なスタイルをしており、光軸に近い位置から
光を放つことができるため、被写体との間合いが取れないトキナーの魚眼ズームと
組み合わせて使います。 ほとんど「魚眼撮影専属」のような使い方ですが、
ぼくのカメラバッグ内で最もパワーのあるストロボ(GN32)であるため、
強い光を必要とする撮影シーンにおいても、まれに出番があります。

<M>
ニコンの SB-R200(カメラのシューに、直接取り付けることはできません)。
カメラからできるだけ遠く離して、被写体の横や、背後から照射します。
ワイヤレスで、カメラ側から発光量をコントロールでき、
カメラの内蔵ストロボと組み合わせて2灯照明にします。
ぼくの絵づくりを特徴づけているのが、このストロボであると言えます。

昆虫を、見たままに描写しようと思ったら、カメラ側からのストロボ1灯では、
立体感が全く得られません。光は通常、上から(空から)来るのが自然ですが、
カメラ位置からの直射光は、立体感も陰影も打ち消す「正面衝突の暴力的な光」であり、
内蔵ストロボ1発で済ませるのは、非常に雑な撮り方です。
そこで、もう1灯をどうやって焚くか、昆虫写真家はそれぞれに工夫を凝らしています。
撮影時に、光の方向が異なる2灯目を入れたい、というのは、もう前提みたいな話であり、
議論の余地があるのは、どうやって入れるか、という点のみです。
少し前には、フラッシュブラケットという器具が流行しました。 カメラ位置から、
アーム状のものを伸ばしてその先にストロボを取り付け、カメラを構えれば
被写体の斜め後方に、つねにもう1灯が自動的に配置される、というスタイルです。

ぼくは、これを導入しませんでした。背後からの1灯が、常に同じような角度からの
照明になるため、ワンパターンになるのを怖れたことと、ブラケットを装着したカメラは
あまりにも突出部分の多い、ゴツい躯体となるため、藪の中では枝などに引っかかり、
小回りが利かなくなることを良しとしなかったためです。
そこで考案したのが、棒の先端にストロボを取り付け、カメラは右手だけでホールドし、
左手に持った「棒つきストロボ」で、最適な位置からもう1灯を焚く、というやり方です。
棒つきストロボと、その実演例
「棒つきストロボと、その実演例」 ※ 宴会芸ではありません。

発光部を手前に向けておくために、棒の先の自由雲台が手前に倒れこむような角度で
固定してあり、これがよい「引っかかり」となって、肩にかつぐスタイルで持ち歩けます。
「かつぎ棒」と呼ばれる所以ですね。

2つ前の機材コラムで、「ストロボが内蔵されていないカメラは0点」、と書きましたが、
なぜ、外付けではダメで、内蔵ストロボでなければならないか?
それは、左手をバックライト専用に取られるため、カメラの操作は右手のみに集中します
(だから、オートフォーカスを多用します)。そのままの姿勢で、カメラをしばらく
ホールドしなければならないというケースが、1日に何度となくあるのに、
カメラ側が外付けストロボでは、絶対的な重量が増す上に、重心が高く不安定になり、
片手ホールドでは腕がすぐに疲れてしまい、ブルブルと震えてくるからです。
もちろん、腰を据えて撮影できる場合は、2灯目の固定には素直に三脚を使用します。

作例写真:アオドウガネを2灯照明で
「作例写真:アオドウガネを2灯照明で」

これは、上で紹介した「バックハンド・右サイドライティング」を使った作例です。
正面からの内蔵ストロボ1発では、アオドウガネの青い輝きが全く出ません。
右サイドから、もう1灯を入れることで、こんなにもくっきりと青さが出ました。
陰影処理が、かなりテキトーな作例なので、アオドウガネの影が見苦しいですが、
効果が最も顕著に現れているサンプルを選びました。

セミの羽化の連続撮影は、一晩がかりの仕事です(翅が色づくには時間がかかります)。
しかし、「バラ売りカット」も時には必要で、そういう写真にまで時間はかけられません。
下のカットは、「かつぎ棒」を肩から下ろし、通りすがりのわずか30秒ほどで撮影した
ものです。内蔵ストロボを上げ、かつぎ棒のストロボスイッチを入れて、左手を伸ばす。
セミの左後方からの「フォアハンド・バックライティング」で、姿勢にも無理がなく、
腕にやさしい角度です。 あとは、「ピピッ!(合焦音)」、「バシャピカッ!」で、
いとも簡単に撮れてしまいます。
作例写真:アブラゼミの羽化
「作例写真:アブラゼミの羽化」

内蔵ストロボは、うちわ型のディフューザー「影とり」を使って、柔らかな光で被写体を
包み込み、バックライトは、指向性の強い光をそのままぶつける。
前者を強くすれば、図鑑的な写真に、後者を強くすれば、印象的な写真になります。
こんなふうに、ぼくはストロボを駆使しています。

※ 「かつぎ棒」の使用例は、別角度からの写真が、ぼくを取材してくださった
時事通信社の記事内に出ています。あわせてご覧ください。
http://www.jiji.com/jc/konchu?p=professional0001