2014.09.20  古い水路
 昆虫写真家の大先輩である新開 孝さんのブログ「新ひむか昆虫記」で、
当ブログをご紹介いただきました。
http://www.shinkai.info/himuka_blog/2014/09/post-1967.html
「かつぎ棒」という謎の器具を、ぼくが肩にかついでいる姿がアップされており、
まるで、疲れたおじさんがツボ押し器具を背中に押し当てているような構図ですが(笑)、
あれは健康器具ではなく、照明機材です
(確かに、ああしていると気持ちが良いのですが・・・)。
当ブログの「カテゴリ」には、「機材など」という項目が用意してありますが、
まだ記事を何も配信していませんので、
近々、機材についての紹介記事をアップしたいと思います。

さて、この写真、いったい何に見えるでしょうか? 
焼け焦げたレンガ塀? それとも、ステンドグラスの失敗作?
ミヤマカワトンボ(♂)の翅脈(右後翅)

実は、この少しいびつな幾何学模様の正体は、「ミヤマカワトンボ」というトンボの
後ろばねの一部を拡大したものです。
トンボには珍しく色のついたはねを持ち、山地の渓流などに棲む、かなり大型のトンボです。
ミヤマカワトンボ(♂)
「ミヤマカワトンボ(♂)」

模様の本体は、はねの中を走る「翅脈(しみゃく)」と呼ばれる器官。
今ではもう、すっかり乾いて硬くなり、往時の面影はありませんが、
かつて、この翅脈の中を勢いよく液体が流れていた時期がありました。

それは、ミヤマカワトンボの幼虫(ヤゴ)が、
陸上で最後の脱皮(羽化)を終えて、はねを獲得した時のこと。
幼虫の体内でぎゅっと押さえつけられていたはねが、脱皮により「解放」されると、
それまで小さく縮こまっていたはねに体液が流れこみ、
その奔流が翅脈を駈けぬけて、はねをぐんぐん伸ばしていきます。
「翅脈」とは、過去の一時期、体液の奔流を通すための「水路」だったのです。

同じく大型のトンボである「ギンヤンマ」が、はねを伸ばす様子をご覧いただきましょう。
過去に「作品紹介」としてもアップした写真ですが、
はねが伸びていくにしたがって、胴体がみるみるスリムになっていくのがわかります。
はねを伸ばすギンヤンマ(4点合成)
「はねを伸ばすギンヤンマ(4点合成)」

胴の部分(腹部)が、体液のタンクとして機能しているのでしょう。
はねが完全に伸びきると、不要になった体液を回収し、
今度は何回かに分けて尻の先から捨てます(落ちる瞬間の雫が見えています)。

こうして、一度だけ開通した「水路」は、やがて水門が閉ざされると乾いて固まり、
今度は、傘の骨のように機能して、はねを支えます。
枝先に止まる赤トンボが目につくようになる季節ですが、真っ赤なおなかだけでなく、
はねの中を縦横に走る「翅脈」にも、ぜひ、目を向けてみてください。
ギンヤンマの翅脈
「ギンヤンマの翅脈」