12月24日の夜に、虫仲間とフユシャクの観察に行ってきました。
よりによって、わざわざクリスマスイブを選ばなくても・・・と言われそうですが、
年末までの間に、みんなの都合のよい日がこの日だけだったという衝撃の事実(笑)。
ぼくは、その日は彼女と過ごすので・・・と最初は難色を示したのですが、
わかりやすい嘘をありがとうございます!と、全く取り合ってもらえませんでした。

仕方がないので、エア彼女との予定はキャンセルし、
みんなと一緒に埼玉県下のフィールドに繰り出すことに。

暮れゆく雑木林
「暮れゆく雑木林」

3時の集合直後に撮った写真です。
あっという間に日が落ちていく、冬の雑木林。
時おり、冷たい風が枯れ葉を巻き上げていきます。

先に来ていたメンバーが、珍しいサザナミフユナミシャクを発見していました。
食樹として、ほとんどクヌギに依存していると言われる蛾ですが、
昼間はなぜかサクラの樹皮に止まっていることが多いようです。

サザナミフユナミシャク♂
「サザナミフユナミシャク♂」

撮影しやすい場所に止まっているとは限らないため、
時にはこんな恰好で撮影するハメに(笑)。

よきパパたちのご乱心?
「よきパパたちのご乱心?」

お二人ともよきパパで、立派な家庭人ですが、
虫を前にすると、みごとにリミッターが外れます(笑)。
ぼくは完全に足を投げ出してうつぶせになることが多いため、
通行人に「大丈夫ですか?」と声をかけられることもしばしばですが、
ちがう意味で、大丈夫ではないのかもしれません・・・。

夕方にこうして下見をしたあと、いったん食事に出て、
日が暮れてから現場に戻ってくるのが、フユシャク観察の基本パターンです。

吸蜜するカシワオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)
「吸蜜するカシワオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)」

真っ暗な雑木林で、ライトに浮かび上がるカシワオビキリガ。
ツバキやサザンカは、冬に活動する蛾たちにとっては重要な吸蜜源です。

樹液に集まるフサヒゲオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)
「樹液に集まるフサヒゲオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)」

夏とちがい、樹液が出ている木はほとんどありませんが、
それだけに、貴重な樹液を虫たちは見逃しません。
目ざとく見つけて、こうして集まってきます。

トイレの灯りにクロオビフユナミシャク
「トイレの灯りにクロオビフユナミシャク」

屋外トイレの灯りは、よい観察ポイントで、しばしば多くのフユシャクが飛来します。
ここのトイレには、クロオビフユナミシャクが来ていました。
もちろん男子トイレですが、それでも相当に怪しい行動にはちがいありません(笑)。
こういう札にドキリとさせられるということは、
自分がもう不審者になってしまった証拠でしょうか・・・。

不審者に注意!
「不審者に注意」

樹木の枝では、シロオビフユシャク、ウスバフユシャク、クロバネフユシャクと
次々にオスが見つかり、ほどなく、交尾しているイチモジフユナミシャクが見つかりました。

イチモジフユナミシャクの交尾
「イチモジフユナミシャクの交尾(左がメス)」

やはり、フユシャクの写真は「交尾シーンを撮影できてナンボ」です。
翅のあるオスと、翅のない(あるいは、ほとんどない)メスが同一種であることを示す、
またとない証拠写真になります。
フユシャクの中には、メス単独では外見から種名を特定できないものもあり、
オスとの交尾態で見つけないかぎり、種名をつけて写真を発表することができない、
そういう場合もあります。
イチモジフユナミシャクの雌雄(白バック)
「イチモジフユナミシャクの雌雄(白バック)」

イチモジフユナミシャクのメスは完全な無翅ではなく、痕跡的に翅が残っています。
わずかに残った翅を鮮やかなグリーンに飾りたてるのは、密やかなおしゃれ心でしょうか。
活動時間帯は夜間ですから、フユシャク男子たちの目を惹きつけるためではないはずです。
グリーンのない冬の落葉広葉樹林では、保護色になるということもないでしょう。

余談ですが、フユシャクのメスは、歩行中は触角を前に伸ばしますが、
静止すると、触角をたたみます。今回のイチモジフユナミシャクのメスは
その反応がいちじるしく速く、静止したその瞬間に触角をたたむ、という感じでした。
白バック上を高速(かなりの速さで歩きます)で歩きまわっている間は触角が写りますが、
速すぎて全然ピントが合わない。 よし止まった! と思った時には、もう触角が写らない。
イチモジフユナミシャクのメスの静止状態(白バック)
「イチモジフユナミシャクのメスの静止状態(白バック)」

・・・こんな写真になってしまうわけですね。

そういうわけで、触角が写っている方の写真は、白バック上を長時間歩いてもらい、
疲れて歩行速度が落ちたタイミングで撮影しました。
このメスには、本当に気の毒なことをしたと思いますが、その時間は5時間にもおよび、
立ち止まるたびに、つまようじの先端でお尻をツンツンしながら歩くように促すのは、
肉体的疲労と自責の念とで、ぼくも相当にしんどい時間でした。
左手でつまようじをあやつり、立ち止まりそうになると、
その都度、右手でカメラを構えるわけですね。
フユシャクの活動性が高まらないよう、スタジオには暖房を入れることもできず、
フィールドで冷えた体を温めることもなしに、ぼくのクリスマスイブは、
フユシャク女子のお尻だけを見つめて明けていきました・・・。

■ ■ ■
ひどく更新のおそい気まぐれなブログに、
今年もおつき合いいただいた読者のみなさま、ありがとうございました。
お健やかに、よいお年をお迎えください。