2016.04.30  4月の断片
 4月ももう終りで、今月はたったの2回しかブログ更新ができなかったか・・・
と忸怩たる思いですが、企画撮影を予定どおり進めるだけで時間を使い果たしてしまい、
ほかの撮影が、ほとんどできない状態でした。すみません。
そんなわけで、断片的な報告を。

シオヤトンボの羽化殻(ぬけがら)
「シオヤトンボの羽化殻(ぬけがら)」

4月9日。東京都下の里山です。
田んぼのへりで見つけたシオヤトンボの羽化殻。
当日羽化したばかりと思われるテネラル(新鮮)な成虫の姿も近くで見かけました。
マクロレンズで撮ったあと、春の感じを出したくて、対角線魚眼レンズでもう1枚。

ツマキチョウの相合傘
「ツマキチョウの相合傘」

4月12日。東京・池袋の駅近くにて。
集合時間までのほんの30分、時間ができたので、
駅のそばの小さな緑地で撮ったツマキチョウの交尾。左がオスです。
「相合傘」の植物はムラサキハナナ。幼虫の食草でもあり、
おそらくは成虫の吸蜜源にもなっていると思いますが、なぜか成虫は花に止まらず、
吸蜜に訪れるのは、黄色い花を咲かせる植物のみ。

ツマキチョウの訪花(オス)
「ツマキチョウの訪花(オス)」

シロチョウ科は赤い色がよく見えないので、ムラサキハナナは赤そのものでは
ないとはいえ、近くに黄色い花があれば、そちらへ行くのかもしれませんね。

ハナグモに捕えられたツマキチョウ
「ハナグモに捕えられたツマキチョウ」

4月23日。さいたま市内の自然公園にて。
ハナグモに捕えられたツマキチョウのオス。
この公園はツマキチョウが少ないので、モンシロチョウならたくさんいるのに、
何もわざわざツマキを狙わなくても・・・とボヤきながらの撮影です。
ハナグモの腹部の模様が恐ろしい顔のようで、悪役感たっぷりですね。

板子一枚下は地獄?
「板子一枚下は地獄?」

撮影中にやってきたミツバチ。
板子一枚下では何が起きているのか、「知らぬが仏」とはこのこと。

講演会&観察会(助手のKさん撮影)
「講演会&観察会(助手のKさん撮影)」

4月24日。東京都北区にて。
毎年ご依頼をいただいている講演会&観察会(環境リーダー講座)。
室内で写真をご覧いただきながらお話をしたあと、外へ出て参加者のみなさんに
実際に虫を観察していただいているところです(黄色の矢印がぼく)。
この緑地にはムクロジの木があり、ヨコヅナツチカメムシが見られるはずなのですが、
今回は見つけることができず、ちょっと残念でした。

ここしばらく、38度台の発熱が続いており、体調は絶不調なのですが、
季節は待ってくれないので、休んでいるわけにもいかず、なかなか熱が下がりません。
いまだに地震が収束の気配を見せない九州の友人も心配で、
春を迎えた喜びのうすい4月となりました。
 大きなできごとが色々あり、前回の更新からずいぶん間が空いてしまいました。
すみません。

さて、昆虫写真家の中瀬 潤さんから新刊を2冊、送っていただきましたのでご紹介します。
岩崎書店 「うまれたよ!」 シリーズの、
『うまれたよ!ホタル』と、『うまれたよ!ボウフラ』です。

うまれたよ!ホタル

うまれたよ!ボウフラ
『中瀬 潤さんの新刊 2冊』

中瀬さんは、これまでにも同シリーズから、
『うまれたよ!コオロギ』や、『うまれたよ!テントウムシ』などを出版されていますが、
今回の2冊は、これまでにも増して、いっそうすばらしい内容に仕上がっています。

中瀬 潤さんといえば、お名前にも「さんずい」の漢字が多く、
「水に棲む虫を撮らせたら日本一」の昆虫写真家ですが、
ホタルの幼虫も、カの幼虫であるボウフラも、幼虫時代を水の中ですごす水生昆虫です。
それだけに、力のこもった作品には見ごたえがあり、
児童書というよりは写真集を見ているようです。

まず、『うまれたよ!ホタル』。
ゲンジボタルは、卵・幼虫・さなぎ・成虫と、すべてのステージで光りますが、
その微弱な光を掬い上げるためのカメラの設定が、闇の深さを損なうものであってはならず、
こんなふうに絶妙なバランスで撮影するのは大変むずかしいものです。
また、光の点や線だけでは、天地左右もわからない意味不明の写真になってしまいますから、
状況を説明するための、最低限の照明はどうしても使わなければなりません。
人工照明が闇を暴きすぎると、単なる説明写真になり、詩情は一気に失われます。
その点の描写が、この本は大変すばらしく、川岸の切り株で産卵する2匹のメスの写真や、
上陸した幼虫が、かすかに光りながら崖をのぼっていくシーンなどは、
闇の中で密やかに行われる営為として見事に描き出されており、
見ていて厳粛な気持ちにさせられます。
児童書に求められる理科的な要素は巻末にひとまとめにし、
本編の方は大きなストーリーとして描かれたことで、感動的な名作となっています。

次に、『うまれたよ!ボウフラ』。
このテーマで1冊の本を作られたということに、まず驚きました。
ホタルは万人に愛される昆虫ですが、ボウフラ(=カ)が好きな人なんて、
まずいないでしょう。
その上、あのデング熱騒動以来、目の敵にされているヒトスジシマカが
キャスティングされており、
ぼくはてっきり、中瀬さんは人気昆虫のホタルとバーターで、このテーマを
無理やり押しつけられたんではないか? と、本を開くまでは邪推していました(笑)。
ところが、「うまれたよ!」シリーズの1冊にふさわしく、読者が途中からボウフラに
好意的に感情移入してしまいそうな温かいまなざしで撮影されており、
こんなにほのぼのとしたボウフラの写真を、ぼくは見たことがありません。
中瀬さん、イヤじゃなかったんだな・・・ということは、本を開けばすぐにわかります。
さなぎになる直前の、

「うまれて 9日め。
ボウフラは、
むにゅむにゅ ぶしゅっと
へんな うんちを
たくさん だした」

「ぶるん。
その うんちを
いきおいよく ふりとばすと(後略)」

という文章が添えられている写真などは、ボウフラの愛らしさに悶絶(!)してしまいます。
このページは、ぜひとも一度、ご覧いただきたいと思います。

ヒトスジシマカの一生は、『小学館の図鑑NEO昆虫』では、ぼくが担当したので、
全ステージをひととおり撮ったことはあるのですが、
ぼくの写真には、つくづく 「愛が足りない」 と思いました。

今年は取材の折々に、対象がどんな昆虫であれ、
きょうは愛が足りていたか? ということを自問したいと思います。