上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 「そろそろ?」と、虫仲間を誘ってみました。
仲間とはありがたいもので、たったこれだけのメールで了解してもらえます。
「うん、そろそろだね。土曜日はどう?」ということで、
27日の土曜日に、埼玉県内のとある川の土手に行ってみました。

お目当ては、早春にだけ出現する、「フチグロトゲエダシャク」という蛾。
埼玉県RDB2008で絶滅危惧I類とされており、どこでも見られるという蛾ではありません。
もともとは草原性の種だと思いますが、
平坦な草地は都市計画の格好のターゲットにされ、徹底的に開発されつくしたせいか、
人間が利用できない河川敷や、川の土手などに細々と生き残っています。

早春の土手
「早春の土手(フチグロトゲエダシャクの生息環境)」

10時すぎから土手に立ち、オスの飛来を待ちます。
メスには翅がなく、飛ぶことができないので、飛んでくるオスを待つのが定石です。
オスが突然、吸い寄せられるように地面に落下すると、そこにはメスがいて、
交尾も観察できるというのが、フチグロトゲエダシャク観察の方程式。

10:45にオスが飛来して、目の前の草に止まりました。
しかし、残念ながらそこにはメスの姿がありません。
草の入り組んだところに止まられてしまい、あまりよい写真にはなりませんでした。

フチグロトゲエダシャク♂
「フチグロトゲエダシャク♂」

早々に1匹が飛来したので、気温が上昇する正午にかけて次々に飛来するのでは?
と期待したのですが、その後は、いっこうに姿を見せません。
遠くの方を飛ぶ、それらしい姿を2度ほどチラッと見かけただけで、
3時間が過ぎてしまいました。
写真は、待ち時間に撮影したヒメフンバエのメス。春によく見かけるハエです。

ヒメフンバエ♀
「ヒメフンバエ♀」

川辺に生えているエノキの幹から、ボコボコとはみ出している組織。
いったいこれが何であるか、おそらく昆虫由来のものにちがいないと思い、
以前ずいぶん調べましたが、昆虫由来ではなく細菌性のもので、
「エノキこぶ病」と呼ばれるものらしいです。
見られるのは春先だけで、葉が茂る季節には消失するという印象を持っていますが、
それで合っているでしょうか?

エノキこぶ病
「エノキこぶ病」

13時を過ぎて、強い北風が吹き始めたので、これ以上は待っても無駄とあきらめ、
川の土手を下りることにしました。
幸先よく1匹目が来たというのに、最初の1匹が、最後の1匹になるとは。

水辺のある森
「水辺のある森」

近くの森の中へ移動すると、木々が風をさえぎってくれますが、
陽当たりが悪くなる分、差し引きゼロで、寒さはいっこうに解消されません。
水辺の多いこの森には、湿地を好むハンノキが多く、
冬になっても枝先に残る毬果(きゅうか)がよい目印となって、
これがハンノキだとすぐわかります。

ハンノキの毬果
「これが見つかればハンノキ」

ハンノキの樹皮に顔を近づけ、たんねんに見ていきます。
「あった!」
仲間が声を上げました。ミドリシジミの卵塊です。

ミドリシジミの卵
「ミドリシジミの卵塊」

ミドリシジミは、幼虫がハンノキの葉を食べるため、
ハンノキの多いこの森では毎年、多数の発生が確認されています。
卵の直径は、わずか0.85ミリほど。
7~8月の、産卵直後のきれいな卵とちがい、冬に見つかる卵は、
風雪に耐えてきた歴史を物語るかのように、ゴミやコケのようなものが
あちこちに付着しています。写真の卵も、ところどころが緑色になっていますね。

春のきざしを求めて出かけたフィールドでしたが、
「もうちょっと」、といったところでしょうか。
近々、ここを訪れるチャンスがもう一度あればよいのですが。
スポンサーサイト
 ちょうど1週間前の木曜日。
気持ちよい青空が広がったので、家から30キロほど離れた雑木林へ向かいました。
葉をすべて落とした梢が、まるで毛細血管のように空に貼りついています。

冬の雑木林
「冬の雑木林」

林床はふかふかの落ち葉で覆われ、その上を軽やかに駈けまわる音が
あちこちから聞こえてきますが、姿が見えません。
すぐ後ろで音がしたので振り向くと、視野の隅をかすめるように、
コジュケイが駈けぬけていきました。

樹皮から盛大に樹液がにじみ出ているのが見えます。 アオマツムシの産卵痕です。
穴そのものの直径は5ミリほどですが、広範囲ににじむ樹液が、よい目印になります。
産卵の時期は9~10月頃で、お尻の産卵管を抜き差ししながら、
こんな姿勢で木に卵を産みこみます。

アオマツムシの産卵痕と、産卵中の姿(9月に撮影)
「アオマツムシの産卵痕と、産卵中の姿(9月に撮影)」

ササ薮をいくつかくぐり抜け、林の奥深くに到着しました。
ここは、立ち枯れや倒木が多く見られる場所です。
朽木にひそんで冬越しをする昆虫を、ここで探してみようと思ったのです。

立ち枯れと倒木
「立ち枯れと倒木」

朽木は、その腐朽の度合いによって、
硬いものから、土に還る直前のようなやわらかいものまでありますが、
どのような硬さを好むかは、虫によってさまざまです。
かなり腐朽が進み、やわらかくなった立ち枯れからは、
ヤホシゴミムシと、大型のコメツキムシの幼虫が出てきました。
よく見ようと捕えると、手のひらの上でよく動きます。
オオナガコメツキでしょうか。

立ち枯れから出てきた虫
「立ち枯れから出てきた虫」

朽木内で越冬する昆虫を撮影する場合は、ひそんでいた越冬室を壊してしまうと、
越冬中らしく見えない、季節感のない写真になってしまいます。
そういうわけで、上の写真は、よくない例。
やわらかすぎる朽木で、よくやる失敗例です。

今度は、倒木を少し慎重にほじってみることにしましょう。
ごく浅いところからオオイシアブ(チャイロオオイシアブかもしれません)の蛹が、
それより深いところからは、クロナガオサムシなど、いろいろな虫が出てきました。

倒木から出てきた虫
「倒木から出てきた虫」

上段左から、時計回りに、オオイシアブ(?)の蛹、
クロナガオサムシ、ヒゲジロハサミムシの幼虫、コクワガタの幼虫。

別の倒木からは、コガタスズメバチが2匹、見つかりました。
こちらも越冬室を壊してしまい、失敗カットになりましたが、
朽木は思いがけない割れ方をすることがあり、
慎重に作業をしても、うまくいかないときもあります。

1匹のおなかからは、寄生虫である「スズメバチネジレバネ」が
顔を出しているのが見えます。
連れて帰り、スタジオで白バック写真を撮ることにしました。

スズメバチネジレバネに寄生されたコガタスズメバチ
「スズメバチネジレバネに寄生されたコガタスズメバチ」

コガタスズメバチでは、本来、越冬能力を持つのは女王バチだけですが、
スズメバチネジレバネに寄生されると、働きバチであっても晩秋に命尽きることなく、
越年できる能力を獲得します。
きわめて不可解なことですが、寄生虫によって、寿命が引き伸ばされるわけですね。
ハリガネムシに寄生されたカマキリが、ハリガネムシによって
水辺へ行くように誘導されるのと似ていますが、
寄生者はいったいどのようにして、寄主を操作するのでしょうか。

越冬しないはずの働きバチが、「朽木内に越冬室を作る」という、
コガタスズメバチ界の「越冬作法」をわきまえているというのも、
考えてみれば実に不思議です。
女王の座につくべき者だけが知ればよいことであり、
この「王家の言い伝え」を、一介の働きバチがどうして知ったのでしょうか。
昆虫の世界には、そんなミステリーが、いたるところに転がっています。
 ぼくは 「おばあちゃん子」で育ったせいか、
年配の女性とお話をしていると、非常に穏やかな、満たされた思いになります。
血のつながったおばあちゃんは、ずいぶん前に死んでしまったけれど、
その後も、「慕うおばあちゃんがいる」という状況がとても好きです。
自分も50歳をすぎて、いい年こいたおっさんなのですが・・・。

そんな、慕っていたおばあちゃんが、亡くなってしまいました。
地元のフィールドに出かける際、
食事のためにかならず立ち寄っていた、老夫婦の経営するレストラン。
和・洋・中なんでも作ることができ、腕のよい料理人であるご主人と、
いつも太陽のような笑顔で迎えてくれたおばあちゃん。

昨年末から2回続けて姿が見えず、ご主人と見知らぬウエイターさんだけなので、
とても心配していました。 3回目となる今回も不在で、食事を終えて支払いの際に、
思い切って、「最近、おかみさんの姿が見えないけれど、お元気でしょうか?」
とご主人に訊ねてみました。
すると、「言おうかどうか、迷っていたのですが・・・」という言葉につづき、
「12月に亡くなりました」、というお返事が。

「入院しています」、というぐらいのお返事は覚悟していたけれど、
まさか、亡くなっていたとは・・・。
食事の合間に世間話をするぐらいで、お名前も知らないおばあちゃんでしたが、
1日の撮影を終えたあと、すっかりおなかをすかせて到着するぼくを、
あの満面の笑顔で迎えてくれることはもうないのだと思うと、悲しくて仕方がありません。
「二度と会えない人」が、またひとり増えてしまいました。

事前になんの兆候もなく、就寝中のまさかの急死だったそうで、亡くなったご本人も、
新しい年の春を迎えることができないとは、夢にも思わなかったでしょう。

春の光景
「春の光景」

今回はフィールドの帰りではなく、おばあちゃんの安否を確かめるためだけに
お店に寄ったわけですが、
覚悟していた以上の、最悪のニュースを聞くことになってしまいました。

親戚が亡くなれば、連絡が来るけれど、亡くなっても、連絡がもらえるような関係ではない。
そんな人のなかにも、自分にとって、かけがえのない人がいるものですね。

暗い話題なので、写真だけでも明るいものをアップしておきます。
そのレストランで食事した、3年前の春の日。
いつものフィールドで撮った写真。
 昆虫写真家・新開 孝さんの新刊 『虫のしわざ観察ガイド』 が発売になりました。
自然の中で見つかる昆虫の巣や、虫こぶ、食痕(葉に残された食べあと)などを、
どの虫の「しわざ」によるものか、豊富な写真とともに解説したフィールド図鑑です。

虫のしわざ表紙
『虫のしわざ観察ガイド-野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』新開 孝著(文一総合出版)

「協力者」のところにぼくの名前もありますが、
新開さんがこの本を制作されていることは、前から知っていたので、
ずっと発売を待ち遠しく思っていました。

待ちこがれていた分、ぼくの中では、内容に対する期待値が
どんどん上昇していたのですが、そのイメージさえも上回るすばらしい完成度で、
届いた本を玄関口で開封して、靴も脱がずに立ったまま全ページを見てしまいました。

かねてより知りたいと思っていた、ササの葉のミシン目のような痕が、
どんな虫の「しわざ」であるか。 あるいは、クリの木の下で見つかる
「飛び跳ねる円盤」の正体・キンケノミゾウムシのライフサイクルはどんなものか。
また、幼虫が作る「虫こぶ」をよく見かける割には、成虫の姿を見たことがなかった
ヨモギエボシタマバエの白バック写真まであり、ものすごい密度です。

生きものの痕跡図鑑というのは、昆虫以外では、これまでにも何度か出版されてきました。
しかし、昆虫の食痕などには正体不明のものも多く、
昔から、「ときどき話題に出ては、消えていく出版企画」という感じだったので、
「とうとう出たかあ・・・、しかも、このレベルで!」と、感動を禁じえません。

ぼくは、すぐれた図鑑というものには、
優秀な検索機能を備えた実用書としての側面だけではなく、
掲載されているものたちへの「あこがれを育む機能」がなければならないと、
常々そう思っています。
そういう観点からも、この本の構成は見事と言うほかなく、まだ見たことのない
虫の「しわざ」に対して、「これをぜひ見てみたい」、「いつか絶対に探し出してみよう!」
そういう思いを喚起させてくれるページが続きます。

この見せ方は、編集の阿部さんや、デザイナーの西山さんの手腕によるところも
大きいと感じます。 「編集・阿部浩志、デザイン・西山克之」といえば、
ぼくの 『虫とツーショット』 とまったく一緒のチーム編成なのですが、
ここに新開さんが加わり、力のある人たちがコラボすると、
ここまで大変な本ができるんだなあ・・・と、打ちのめされてしまいました。

定価は、税別1800円。
この内容で、144ページもあって、これはすごいサービス価格だと感じます。
今回は「協力者」ということで、ぼくはラッキーにもいただいてしまったのですが、
そうでなければ、倍の値段でも迷わず買っていたと思います。

今日は2月4日。 ちょうど立春を迎えたとはいえ、
昆虫そのものの姿はまだほとんど見かけない季節ですが、
木々が葉を落とし、空気が澄みわたり、地面が草に覆われていない今の時期は
見通しがよく、虫たちの「痕跡」を探すには、絶好の条件が整っています。
この本をお供に、ぜひ冬の里山を歩いてみてください。
きっと新しい視点の先に、思いがけない発見が待っているはずです。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。