兵庫県伊丹市にある「伊丹市昆虫館」で、
「企画展『だっぴ』・・・ひと皮むけましてん」が、あす27日(水)より始まります。

「企画展『だっぴ』・・・ひと皮むけましてん」のポスター
「企画展『だっぴ』・・・ひと皮むけましてん」のポスター

企画タイトルが、いかにも関西っぽいですね(笑)。
4月18日(月)まで、という長期開催で、ぼくの写真もたくさん使って
いただいておりますので、お近くの方はぜひご覧いただければ幸いです。
伊丹市昆虫館のサイトはこちら→ http://www.itakon.com/

顔ハメ看板
「顔ハメ看板」

観光地でよく見かけるような、顔ハメ看板。
企画展の間、館内に設置されるそうです。こちらも、ぼくの写真で作っていただきました。
「虫とツーショット」ではなく、「虫になってツーショット」ですね。
お子さんと一緒に、記念写真をどうぞ。

さて、前回の記事に書いた「プラタナスグンバイ」ですが、
やはり、あの木の樹皮下で集団越冬していることがわかりました。
といっても、ムクドリが本当に彼らを食べていたかどうかは、推測の域を出ませんが・・・。
3ミリ強ほどの小さな虫で、わずかな隙間にも身を潜めることができ、
浮いた樹皮をほんの少しめくるだけの、非常にせまい範囲でも発見できます。

樹皮下で越冬中のプラタナスグンバイ
「樹皮下で越冬中のプラタナスグンバイ」

「外来種」で、しかも「街路樹の害虫」というダーティーなプロフィールですが、
非常に美しい虫だと思います。
この場所はプラタナスの並木になっており、ほかの木でも探してみたのですが、
なぜか1匹も見つからず。この1本の木だけに集中しています。

環境条件がまったく同じに見えても、実際に虫に選ばれるのは、そのうちの1つだけ、
という現象は実は珍しいものではなく、たとえば同じような条件の沼が多数ある場所で、
たった1つの沼だけにゲンゴロウが集中している、といったケースはよくあることです。
われわれ人間にはわからないレベルの「微差」が、重要な選択指標となっているのか、
あるいは、フェロモンのようなものを出して「集合をかけている」のか。
それこそ虫になって訊いてみたいものです。
 先週の金曜日のこと。
プラタナスの巨木の下を歩いていると、樹皮がぱらぱらっと落ちてきました。

落ちてきた樹皮
「落ちてきた樹皮」

風もないのに、いったい何ごと? と見上げれば、4メートルほどの高さに鳥の姿が。
幹の垂直面に止まるその姿勢から、一瞬、こんな都心にコゲラ(キツツキ)? 
と驚いたのですが、すぐに、ああムクドリか・・・と気づきました。

いったい何をしているのだろう? と見ていると、
樹皮を次々に剥いでは、その下にいる何かを食べているようです。
捕食対象にくちばしを垂直につきたてる 「ついばむ」スタイルではなく、
樹皮を剥いだあとの幹に頬をこすりつけるようにして、くちばしの側面を使い、
何かをこそげるようにして食べています。

このプラタナスには、暖かくなれば多数の「プラタナスグンバイ」が発生するのを
毎年のように見ており、今の時期は、樹皮下に集団を作って越冬しているはずです。

プラタナスグンバイ(白バック)
「プラタナスグンバイ」

プラタナスグンバイというのは、
日本では2001年に初めて見つかった北米原産の外来種で、セミに近いなかまですが、
ムクドリはおそらく、そのプラタナスグンバイの越冬集団を食べているのでは
ないかと思います。
食べているものが、ぼくの位置からはまったく見えないというのも判断の根拠で、
体長3ミリ強ほどの小さい虫ですから、この距離からは絶対に見えないはずです。
頬をこすりつけるようにして、くちばしの側面を使っていることも、
いかにも「微小な昆虫の集団をまとめて食べている」ように見えます。

で、その写真はどこ? と突っ込まれる展開ですが、
実はちょうどカメラを体から離したところで、うかつにもぼくは「丸腰」でした。
ダッシュでカメラのところまで引き返し、5分もかからずに現場に戻ったのですが、
すでにムクドリの姿はなし。 地上に散らばる樹皮だけの写真になってしまいました。
やはり、カメラは肌身離さず持っていないといけませんねえ・・・。
樹皮をひろい上げて、プラタナスグンバイの姿をさがしましたが、見つからず。
といっても、ぼくの過去の観察事例では、樹皮下で越冬するプラタナスグンバイは、
たいてい樹皮側ではなく、幹側に集団を作っているので、
こんなことも十分ありそうに思えます。

この日の夜は、業界の新年会。
立食パーティーの開始を待つ間、昆虫写真家で集まって談笑しているところを、
科学絵本の編集者のIさんに撮っていただきました。

新年会にて
「新年会にて」

右から、仙台の中瀬潤さん、宮崎の新開孝さん、ぼく、沖縄の湊和雄さん
こんな大御所に囲まれて、4コマ漫画のオチみたいなぼくは、
いちばん隅っこに座らないといけませんねえ。 湊さんすみません・・・。
 年末にフユシャク探しに出かけたメンバーと一緒に、
神奈川県内の別の場所に、今年はじめての「フユシャク詣で」に出かけました。
3連休の初日の土曜日。渋滞を避けて、電車・バスで待ち合わせの場所へ向かいます。
前回の12月26日と比べると、かなり冷え込みのきびしい、真冬らしい日ですが、
発生が遅れていた種が出現しているかもしれません。

前回は三脚も持たない軽装でしたが、年も改まったので心を入れ替えて、
カメラバッグも本気モードのもの。三脚も持参です。
メンバーのひとり、昆虫写真家の尾園 暁さんも、
やはり年末には持っていなかった大きな三脚持参で、本気モードをうかがわせます(笑)。

フユシャクの観察は、夜がメインなので、午前中から探索を始めてしまうと、
こんなに寒い季節は、夜まで体力がもちません。 午後スタートで、
夕食タイムに一度体を温めてから、改めて夜の部に繰り出すことにします。

クロスジホソサジヨコバイ
「クロスジホソサジヨコバイ(通称:マエムキダマシ)」

まずは昼の部。
ヤツデがあったので、葉をめくると・・・。
やはりいました。クロスジホソサジヨコバイ。この写真では、頭が下を向いています。
お尻の方に2つの丸い紋を持ち、これが眼のように見えることから、
マエムキダマシ(前向き騙し)の通称があります。どちら側が体の前方であるか、
眼をねらって攻撃を加える捕食者を欺いているのでしょう。
知人のIさん(ボルネオに一緒に行ったIさんとは別人)が2005年頃につけた
名前ですが、それが通称として、ここまで世間に浸透するとは思いませんでした。

池のほとりで、鳥の撮影に来ている人が、カワセミがいるよと教えてくれました。
カメラを持っていると、鳥の撮影に来たものと思われることがよくありますね。
ぼくも真似をして、望遠レンズを取り出します。
本気モードのカメラバッグで来たので、450㎜相当の望遠レンズが入っています。

カワセミ
「ザリガニを捕えたカワセミ」

曇っていて、かなり暗かったので、カメラぶれしてしまいました。
上の写真は、ソフトを使ってシャープに見せていますが、本に印刷できるような
シロモノではありません。 単なる「証拠写真」になってしまいました。
池の柵には、ナミスジフユナミシャクのメスが止まっていましたが、これはスルー。
フユシャク観察では、最も見つけやすいもののひとつです。
ほかに何かいないか・・・と歩いていると、
Wさんが、鉄柵の下面に止まるニジュウシトリバを見つけてくれました。

ニジュウシトリバ
「鉄柵の下面にいたニジュウシトリバ」

蛾屋さん(蛾の愛好家)たちにとっては、ひどく珍しいものではないようですが、
ぼくは初めて見ました。ニジュウシトリバは、漢字では「二十四鳥羽」と書き、
鳥の羽のように見える24個のパーツ(左右12個ずつ)から
2枚の翅ができ上がっていることが名前の由来です。
羽ばたいても空気が抜けてしまって、普通に飛べないのでは?と思いますが、
「歩く蛾類図鑑」Sさんに訊いたら、そんなことはないそうです。
ぼくにとっては、昼の部の一番の収穫になりました。

夜の部は、尾園 暁さんの湘南のフィールドへ。
幸先よく、チャバネフユエダシャクのメスが見つかりました。
黄色い色がぬけてきた「虎ロープ」に止まっており、
カムフラージュ効果は抜群で、自分がいるべき場所を心得ているかのようです。
この白黒模様が乳牛のように見えることから、通称「ホルスタイン」と呼ばれ、
この名前をつけたのは、先ほどニジュウシトリバを見つけてくれたWさんです。
ネット時代は、「これはうまい!」というアッパレな呼び名は、
すぐに広まって定着しますね。「ホルスタイン」とは、実にうまいネーミングです。
ウスバフユシャクのオスや、交尾中のナミスジフユナミシャクも見られました。

フユシャク3種
「フユシャク3種」

真冬の夜間に行うフユシャクの観察は、夏以上に不審者そのものの行動で、
おまわりさんに見咎められても、昆虫観察であることが、なかなか信用してもらえません。
時には氷点下になるような条件ですから、昆虫などいないと考えるのが普通で、
決しておまわりさんが悪いわけではないのですが、複数で行動していると怪しさも減るので、
そういう意味からも、仲間で行動できるのは、ありがたいことです。
しかも、蛾の研究者として、在野では国内屈指のSさんとWさんがいて、
詳細な解説つきで回れるという豪華さは普通では味わえないもので、
寒さも忘れるような充実した時間を過ごすことができました。
ご案内いただいた尾園さんはじめ、みなさんありがとうございました。
2016.01.01  謹賀新年
 あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は、1年以上も前から会期が決まっていた
新刊発売記念の写真展にぶじ間に合って、2冊の本を出版することができました。
最新刊の、『調べてみよう 名前のひみつ 昆虫図鑑』(汐文社)が、
ちょうど10冊目の著書ということになります。
税別3200円と高い本ですが、お近くの図書館などにリクエストしていただければ幸いです。

著書紹介2016元旦
「2015年の新刊(上段中央の2冊)」

もう一つの新刊 『虫とツーショット ― 自撮りにチャレンジ! 虫といっしょ』
(文一総合出版 ・ 税別1200円)は、
新聞や雑誌、ネットメディアなどに、数多くの書評や取材記事を掲載していただきました。
現在もネット上でご覧いただけるものとしては、デイリーポータルさんの記事や、
メレ山メレ子さんによる書評などがありますので、ぜひお読みいただければ幸いです。

「デイリーポータルZ」 (2015年8月12日記事)
http://portal.nifty.com/kiji/150812194292_1.htm

「メレンゲが腐るほど恋したい」 (2015年6月13日記事)
http://mereco.hatenadiary.com/entry/20150613/1434176503

現在、また新しい本の準備を進めています。
完成間近となりましたら、当ブログにてご案内させていただきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。