家にこもってデスクワークばかりしていると、だんだん気持ちがすさんでくるので、
あとで大変になるのを覚悟の上、今年初めてのフィールド歩きに出かけてきました。
当ブログでも記事にした12月27日のフユシャク・ツアー以来、
実に3ヶ月もの間、フィールドへ出ていなかったことになります。

3月28日。
春の光があふれるフィールドに降り立つと、あまりのまぶしさに立ちすくんでしまい、
こんなふうに陽の光をまぶしがっているようでは、
まるで長わずらいの病人のようだなあ・・・と、ひとしきり反省。
ビロードツリアブが空中をゆらゆらと漂うように飛んでいます。

展開を始めたアワブキの葉
「展開を始めたアワブキの葉」

アワブキの裸芽が、もう展開を始め、すっかり葉の形になっています。
近くにスミナガシのさなぎがないか、しばらく探したのち、菜の花畑へ行ってみました。
冬の間にさびついた撮影技術を、もう一度回復させるには、
花に来て、忙しく仕事している虫たちにカメラを向けてみるのが一番です。

案の定、100カット撮っても、ただの1枚もピントが合いません。
カメラが壊れているわけではありません。壊れているのは自分です。
これは毎年のことなので、慌てずさわがず、ひたすら撮り続けるのみで、
午後になるとだんだんピントが合うようになり、ビロードツリアブの吸蜜写真が撮れました。
ビロードツリアブの吸蜜
「ビロードツリアブの吸蜜」

陽ざしを受けて、すっかり温まった崖。
よく見ると、直径2センチほどの穴がいくつも開いています。
穴の中で何かが動いたような気がして、近寄ってみました。
陽ざしを受けて温まった崖
「陽ざしを受けて温まった崖」

あちこちの穴の入り口で、
こっちにお尻を向けて、押し合いへし合いしている虫たち。
この色と、もようは、どうやらミイデラゴミムシのようですが、
彼らはいったい、ここで何をしているのでしょう?
ミイデラゴミムシたち
「ミイデラゴミムシたち」

オサムシやゴミムシが、同種どうしで示し合わせたように崖の中にもぐり、
集団で越冬している現場を昆虫採集家がスコップなどで掘り当てることを、
「オサ掘り」と呼びますが、「オサ掘り」で掘り当てるような集団越冬の現場が、
春の到来とともに、今まさに「解散」しようという場面に
ぼくは立ち会ったということでしょうか?

穴の開口部に、頭ではなくお尻を向けているのも不思議な光景ですが、
ぼくと同じようにひと冬、引きこもっていたせいで、
彼らも春になじめず、とまどっているのかもしれません。
押し合いへし合い、穴から最初に落ちるのは自分以外の誰かであってほしい、
とでも言わんばかりに争っているような姿には、共感を覚えてしまいました(笑)。
気がつけば、すでにどこかの穴から落下したと思われる個体が足もとを歩いています。
ミイデラゴミムシ(白バック)
「ミイデラゴミムシ(白バック)」

「ミイデラゴミムシ」という、この一風変わった名前の由来は、
拙著「散歩で見つける 虫の呼び名事典」でもご紹介しましたが、
俗称の「屁っぴり虫」の方が、ずっとふさわしい名前だと思います。
身を守るためにお尻から出す毒ガスは、摂氏100度にもなる高温のガスで、
人間の指などがガスの直撃を受けると、そこが茶色く染まり、しばらくの間、消えません。

穴の奥が、浅いのか深いのかを知りたくて、細い木の枝を穴に差し入れてみました。
プッ! プッ! ププッ! という一斉の毒ガス攻撃。
小さな破裂音が響き、辺りに刺激臭が漂います。
ミイデラゴミムシたちは、ひとしきり迎撃したあと、穴の奥に逃げ込み、
これが、奥まで続く深い穴であることがわかりました。

やはり、フィールドへ出ると、何かしら発見があって面白いものですね。
コツバメやキアゲハなど、明らかに春になってから羽化したチョウたちも見ることができ、
春のフィールドをたっぷりと味わって、満足感いっぱいで家路につきました。
まだしばらくは、原稿書きが続きますが、とてもよい気分転換になりました。
 あの大震災から4年経ちました。
4年前の今ごろは、「計画停電」という輪番制の停電で、
電力の供給不足をしのいでいたことを思い出します。

そういえば、そんな写真を撮っていたな・・・と
ふと思い出し、ひっぱり出してみました。

計画停電の町
「計画停電の町」

灯の消えた道路を、時おり通りすぎる車のヘッドライトだけが闇を切り裂き、
原発事故がどのように収束するのかという先行きの不安とともに、
みんなが暗い夜を怖れていたことを思い出します。

日常そのものが脅かされる経験をすると、
日常の延長にある忙しさなどは、実に他愛もないことに思えてきますね。
4年前の暗い夜を思い出し、
忙しくても弱音を吐いている場合ではないと、自分を戒めました。

イボタガの翅(アップ)
「イボタガの眼状紋」

上の写真は、イボタガの翅のアップです。
3月の2日と3日に、1匹ずつが羽化したというご報告をしましたが、
きょう現在、まだ生きています。
まだ気温が低く、代謝が不活発であろうとは思いますが、
半月以上も飲まず食わずで生きているのは、大したものだと思います。

(※ イボタガの成虫は、エサを食べません。
   ぼくが虐待しているわけではありませんので、念のため。)
 きのう3月9日に、ようやく、5月発売の本の入稿を終えました。
心身ともにぬけがらのようになっていますが、明日には正気に戻らないといけません。
6月発売の本の制作が、すぐ後に控えています。

ぼくの目の前には、本物のぬけがらが2つ。
イボタガが羽脱したものです。
前回のブログで、

> ベランダは、森の中よりはずっと暖かいので、
> 3月になったら、羽化ができる環境を整えてやらないといけません。

と書きましたが、3月2日に羽化水槽に入れ替え、その晩のうちに1匹、
翌日、2匹めが羽化しました。危ない、危ない。 あのままミズゴケの中で羽化し、
脱出できないまま翅が伸びていたら、ぐちゃぐちゃになってしまっていたと思います。

イボタガ角版
「イボタガ」

入稿前の忙しい時期の羽化でしたが、なんとか、白バック、生態写真ともに
撮影を済ませました。外はまだ冬枯れの風景ですが、前回のブログで書いたように、
わが家には、落葉せずに葉をつけたままのイボタノキの鉢植えがあるので、
これを利用して、ちょっと季節を進めた感じの生態写真も押さえておきました。
上の写真は、鉢植えを使ったスタジオ撮影です。

このブログも、徐々に平常運転に戻していきますので、
またどうぞよろしくお願いいたします。