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 「フユシャクを一緒に見に行きませんか?」と誘っていただき、
27日の夕方、神奈川県某所まで行ってきました。フユシャクとは、成虫が冬にだけ現れる
シャクガ科の蛾の総称で、♀の翅は退化しており、国内から35種が知られています。
一寸野虫さん蛾LOVEさん川北和倫さん、ここまでが、本職の蛾屋さんで、
あとは、尾園 暁さんそよ風ふくさん、ぼく、の「素人3人組」(笑)です。

その3人が集合場所に到着した時には、もう本職のお三方はポイントを一周されたところで、
ここにナミスジフユナミシャク♀がいます。あちらには、クロバネフユシャク♂がいますよ、
と次々にその成果を教えてくださいます。ぼくらも、虫を探すことにかけては
目利きの方なのですが、本職の蛾屋さんの「眼」というのは、もう別次元のスペックですね。
「どうしてこれが眼に入るの?」と、いつもならぼくが一般の方に言われる言葉を、
気がつけば自分で発してしまっています。

冬の残照が、弱々しく濃紺の空に溶けていき、深まりゆく闇の中で冷気が育ちはじめると、
夜はしんしんと冷え込んでいきます。6本のライトが思い思いの木を照らし、
光芒の中に、お目当ての蛾の姿を探します。「クロスジフユエダシャクが産卵しています」、
「ここでは個体数の少ないイチモジフユナミシャクです」、と次々に声が上がりますが、
ぼくには、電話BOXの灯りに来ていたウスバフユシャクぐらいしか目に入りません(笑)。
電話BOXの灯りに来たウスバフユシャク
「電話BOXの灯りに来たウスバフユシャク♂」

自分も見つけなければ・・・という焦りを通り越し、だんだんとみじめな気分になってきた頃、
ようやく、ナミスジフユナミシャクの交尾ペアを、サクラの幹で発見しました。
左側がぼくが発見したもの。右は、尾園さんが発見したペアです。
この晩は、ナミスジフユナミシャクが多く、本種のちょうどよい時期に当たったようです。
ナミスジフユナミシャクの交尾
「ナミスジフユナミシャクの交尾態 2例」

「森上さん、ほらここ、キリガが花に来ていますよ!」 と蛾LOVEさんに教えていただき、
目を向けると、そこには華やかな世界が・・・。
地味な色をしたフユシャクの探索で、およそ色というものを忘れかけていた眼には、
眩しすぎるほどの光景です。
スギタニモンキリガ
「ヤマノモンキリガ」

吸蜜するヤマノモンキリガ。
識別のきわめて難しい類似種(※)が2種いるそうですが、そのどちらでもなく、
まちがいなくヤマノモンキリガであると、識別点の解説つきで教えてもらいました。
それにしても、じつに贅沢な撮影です。
ポイントに案内してもらい、虫を見つけてもらって、さあどうぞと撮影させてもらうことを、
この世界では「殿様撮影」と呼びますが、その上になお、図鑑なみの解説がつき、
最後は埼玉の自宅まで車で送り届けてもらうという「殿様」ぶり(笑)ですから、
もう、いつバチが当たっても仕方がないと思えるほどの、あまりにも贅沢な1日でした。
ただただ、みなさんに感謝です。

路上で白バック撮影
「路上で白バック撮影」

白い紙を路上に敷き、蛾を載せて即席の白バック撮影をする、蛾LOVEさんと川北和倫さん。
善良な市民の目に触れたら、通報されそうな怪しい光景ですが、
この方々がいなかったら、日本の蛾の研究は、まちがいなく何年も遅れることでしょう。
在野の研究者としては、トップクラスのお二人です。

この日は、ぼくとしては、チャバネフユエダシャクの♀が一番の目的だったのですが、
4時間を超える探索でも見つからず。残念だけど、ほかのフユシャクはたくさん見られたし、
まあいいや、次に期待しよう・・・と諦めモードになりかけていた頃、
ぼくの位置からはすでに見えない隊列の先頭から、「いました!」という連絡が入りました。
それっ!とみんなでダッシュ。 坂を一気に駆け上がって、ようやく先頭に追いつきました。

正式名称よりずっと有名な(?)、通称「ホルスタイン」。
存在感たっぷりの大型種で、白地に黒のぶちのある姿を乳牛に見立て、
蛾屋さんたちは、親しみと敬意をこめて、本種の♀を「ホルスタイン」と呼びます。
なにしろ、ナミスジフユナミシャクの♀と並べると、迫力がこんなにもちがうのです。
フユシャクの♀2種
「チャバネフユエダシャクの♀(左)と、ナミスジフユナミシャクの♀」

最後の最後に目的を達成する、という、ドキュメント番組さながらの展開で、
ほかにも7種のフユシャクを一度に見られ、ぼくとしてはホクホクの1日でしたが、
この場所に通いなれている一寸野虫さんによれば、
「この時期なら、本来は2ケタ種が見られても不思議ではない」そうです。

5時間にも及ぶ真冬の虫さがしで、体こそ冷え切ったものの、
それだけに、すばらしい虫仲間の温かさがひときわ身にしみて、
感謝と満足感いっぱいで、「よいお年を!」とご挨拶してお別れしました。
一年の締めくくりのフィールドとしては、これ以上は望めないほどの、
最高の1日だったと思います。

(※ 当初、そのまぎらわしい別種の一つ「スギタニモンキリガ」として
アップしてしまいました。「スギタニ」との識別点を教えていただいているうちに、
ぼくの中で両者が入れ替わってしまったようです。お詫びして訂正いたします。)
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9月1日から始めたブログですが、どうにかこうにか、ここまで続けてくることができ、
ぶじに新しい年を迎えられそうです。最近では、お会いする方に「読んでいますよ!」
とお声をかけていただくことも増え、大変ありがたいことだと感謝しております。
当ブログにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。
お健やかに、よいお年をお迎えください。
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2014.12.26  年の瀬
 2014年も押し詰まってきました。
きのうは、年賀状を出したあと、とんかつの「和幸」へ行って食事をしましたが、
ずいぶん空いているなあ・・・と不思議に思い、ああそうか、今日はクリスマスだったな・・・、
と納得しました。世間の多くの人にとっては、とんかつの気分ではないのでしょう(笑)。

年賀状 & シジミの貝殻
「年賀状 & シジミの貝殻」

ぼくは、どっぷり昭和に浸かった人間なので、伝統として廃れつつある年賀状も、
毎年かならず出しています。枚数が多いので、切手を貼るのが現実的ではなく、
そこだけは、「料金別納スタンプ」で済ませていますが。
「和幸」へ行ったのは、ここの定食に、シジミの味噌汁がついてくることを
思い出したからです。 
「シジミチョウ」という名は、二枚貝であるシジミ貝との相似から来ている、
というのが定説ですが、その資料写真を撮るために、シジミの貝殻が欲しかったのですね。
こうして、タッパーに集めて貝殻だけを持ち帰りましたが、ものすごく怪しい客です(笑)。
クリスマスだというのに、この人はいったい何をやっているのだろう・・・。

12月14日の記事「おだやかな冬の日」で、何人かの仲間と飯能のフィールドを歩いたという
話題をアップしましたが、ご一緒した「昆虫記者」と、「昆虫エッセイスト」のブログでも、
当日の様子がアップされていますので、ご紹介します。
「虫撮る人々」
http://blogs.yahoo.co.jp/mushikisya/11967095.html
「鈴木海花の虫目で歩けば」
http://blog.goo.ne.jp/mushidoko64/e/9818d46c0f2f57b49f0699481c7086b3
同じ場所を一緒に歩きながらも、視点や視座が人によって異なるのがおもしろいと思います。

きょう26日は、ベランダに置いてある蛾の蛹のケースを点検しました。
野外と同じ時期に羽化させたい蛹は、冬の間、湿らせた水苔に埋めた状態で、
その飼育ケースを外気温と同じ場所に保管しています。
イボタガやエゾヨツメ、トビモンオオエダシャク、オオミズアオなどがいますが、
気をつけなければならないのは、過度の乾燥です。保水効果の高い水苔と言えど、
関東の冬の乾燥した気候のもとでは、月に1回は様子を見て、
乾いていたら、水を補充しなければなりません。

その飼育ケースの1つを取りだしたところ、2つのケースの隙間に身を潜めている
お客さんがいました。
クビキリギス。 成虫越冬するキリギリスの仲間です。
越冬中のクビキリギス
「越冬中のクビキリギス」

12月初旬の点検時には、ここにいなかったことは確実ですので、すっかり寒くなってから、
越冬場所を求めて移動してきたのでしょう。11月中には越冬場所を決めてしまうのかと
思っていましたが、そうでもないようです。

さて、来年2月8日(日)に行われる「虫cafe!」のご案内をそろそろ・・・と思い、
先ほど、「特設サイト」↓を見てみたのですが、すでにチケットは完売とのこと。
http://www.mushikura.net/20150208/20150208.html
「むしトー ーク!」というライトニング・トークのコーナーにぼくも出演するのですが、
12月10日のチケット発売日より前に、ご案内しておかなければならなかったようです。
上記サイトの下の方に、出演者一覧が出ています。
すでにチケットをお持ちの方とは、2月8日にお会いしましょう・・・という
少々まぬけな告知となってしまいました。

明日は、今年最後のフィールド。
虫仲間と、フユシャク(冬だけに現れるシャク蛾)の姿を求めて、夜の森へ出かけてきます。
 デジタル一眼レフカメラ・ニコンD7000の4号機が修理から返ってきました。
同じ機種を4台持っているので、識別のために「4号機」などと呼んでいるのですが、
特に「お気に入りのカメラ」というわけではありません。
今どきのデジタル一眼レフカメラの取扱説明書は300ページ以上もあり、
機種を変えるごとに、そんなものをいちいち読まされるのは敵わないので、
D7000だけを使い続けることで、説明書を読む苦痛から解放されています。
要は、面倒だからずっと同じ機種でよい、ということですね。

そういう意味では、これから一生使わなければならない大事なカメラではあるので、
この4号機は購入後、1年ほど箱から出さずに、新品のまま保管してありました。
でも、1年間の保証期間が切れてしまう前に、一応は動作確認をしておこうと思い、
SDカードを入れて試写してみました。
ところが、この4号機が、どうもおかしなカメラで、いつものスタジオ、いつもの照明で
同じように撮影をしても、色が大幅に狂います。背面液晶モニターで画像を確認しながら、
ようやく「正しい」色に導き、画像をパソコンに取り込んでみて驚きました。
色が、信じられないほど大きく狂っているのです。何度かテスト撮影をしてみて、
これは背面液晶モニターの表示色がおかしい、という結論に至りました。
ところが、修理に出しても、ちっとも直ってこない。
「直した」と言うのですが、そのまま突き返されたとしか思えません。
色は明らかに狂っています。業を煮やして、3号機とともにサービスセンターに持ち込み、
「4号機を、これと同じ表示色にしてくれ」と言って再修理に出しました。
1号機から3号機までは、完全に色の統一が取れています。
サービスセンターの窓口担当者は、「おっしゃる通り、私どものサービスセンターの備品の
D7000も、お客様の3号機の色に近いですね。失礼いたしました」、と言って預かりました。

何日か経ち、ニコンから電話がありました。
予定日に修理が終らないので、少し時間をくれ、というのです。
こちらとしては、無傷の3号機も一緒に預けているわけで、こんなタイミングで
万一、1、2号機のいずれかに故障でも発生すると、仕事に支障が出ます。
遅れる理由の説明を求めました。
「背面液晶モニターの表示色は、ずっと同じではありません。時代によって変えています。
どちらかといえば、青味が強かった時代から、最近の機種では黄色味が強くなっており、
D7000も、後期のものでは黄色味が強くなっています。青味が強く出るような部品を
探して直さなければならないので、もう少々お時間をいただけると助かります。」
Sさんというその女性担当者は、こともなげに、そのように言いました。

突っ込みどころ満載のコメントだと思います。
(1)同一機種の表示色を、断りもなく発売期間の途中で変更していること。
   とにかく、ちょっとやそっとの差異ではないのです。
   これでは、2台(以上)を併用して仕事することはできません。
   背面液晶モニターを使った撮影画像の確認作業が無価値化します。
   同一機種を選んでいるのに、スペアボディとして機能しないのです。

(2)このことを、ユーザーに告知していないばかりか、サービスセンターの窓口担当者さえ
   知らなかったこと。 「私どものサービスセンターの備品のD7000も、お客様の
   3号機の色に近いですね。失礼しました」と言って預かっているわけですから、
   同じD7000でも、「発売期間後期のものは、仕様として表示色を変えている」、
   という情報が、社内でまったく共有されていないということでしょう。

(3)「途中で表示色を変えた」ということを、単なる修理遅延のお詫びレベルで、
   屈託なくユーザーに公開してしまえるという情報管理のあり方。
   表示色を断りもなく変更することは、「メーカーの哲学として、セーフです」、
   と思っていればこそ、そんなことが言えるわけですね。
   普通に考えれば、部外秘にしておき、D7000複数持ちのユーザーからクレームが
   来たら、余計なことは言わずに、ただ「申しわけありませんでした」と言って、
   旧表示色に直して返すのが、企業としてのリスクマネージメントではないでしょうか。
   こちらが聞いてもいないのに、「途中で色を変えました」なんていうことを、
   ユーザーに対して軽々しくしゃべる神経が信じられませんでした。
   カメラにとっての「色の再現」って、そんなに軽いものなのでしょうか。
   「当社の液晶モニターは信じちゃイカンよ」、とメーカー自身が認めたも同然です。

11月25日の記事で、
昆虫撮影で一眼レフを使うなら、キヤノン以外のメーカーを選ぶべき積極的な理由はない、
と申し上げましたが、他のメーカーがまるでダメだ、とまでは言いませんでした。
しかし今回、メーカーの哲学というものが、はからずも明らかとなり、ニコンには本当に
ガッカリしてしまいました。キヤノンへの移行を、そろそろ本気で考えた方がよさそうです。
システム丸ごとの変更ともなれば、最低でも100万円以上はかかるだろうなあ・・・。
それより、300ページの取扱説明書を、とうとう読まされる日が来てしまうのか・・・。

D7000ユーザーには有益な情報かもしれませんが、批判記事は読んでいて楽しくないですね。
話題を変えましょう。
11月16日の記事でご紹介した「カキノヘタムシガ」の続報です。
幼虫はその後、こんな蛹になりました。
カキノヘタムシガの蛹
「カキノヘタムシガの蛹」(ちょうど1cm程度の大きさ)

本来は蛹にならず、幼虫のままで越冬します。これは暖かい室内飼育で人工的に
蛹化(ようか)させたものですね。この蛹が、非常によく動くのですが、
もともとは粗末な繭のようなものに包まれており、
そこから出さない限りは、動くことはできないはずです。
蛹化直後はこんなに動かなかったので、あるいは羽化が近いのかもしれません。
成虫の姿を、近々ご紹介できればよいのですが。
 すばらしい虫の本を1冊、ご紹介したいと思います。
『ハムシハンドブック』 尾園 暁著 (文一総合出版)。
今年の夏に出版された本ですから、当ブログの読者の方なら、
すでにご存知、あるいはとっくに持っている、という方も多いかもしれませんね。

著者の尾園さん から献本いただいた時、玄関先で開封し、(これはスゴイ!)と、
靴も脱がずにそのまま最後のページまで見てしまったことを思い出します。
12月もすでに後半。 もう、「昆虫本 オブ・ザ・イヤー2014」はこの本で決まり、
と言ってよいでしょう。

ハムシハンドブックハムシハンドブック
(2014/08/11)
尾園 暁

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『ハムシハンドブック』 尾園 暁著 (文一総合出版)

同社のハンドブックシリーズからは、ぼくも 『樹液に集まる昆虫ハンドブック』 など、
これまでに2冊の本を出していますので、昆虫をテーマとしたハンドブックが出版されると、
つい「隅々まで点検する」といった感じの見かたをしてしまい、
制作側の目線で、辛目の採点をしてしまうことが多いのですが、
この本については、見終って、恐れ入りました・・・と「無条件降伏」してしまいました。

自分の視力が良くなったのではないか? と錯覚するようなシャープな写真が並んでおり、
これらは「被写界深度合成」と言って、ピントの位置を少しずつずらしながら
たくさんの枚数を撮り、ピントの合った部分だけを後で合成するという、
非常に手のかかる技法で撮られています。
もう少し大きな虫ならともかく、多くが1センチにも満たないハムシの撮影でこれをやる
というのは、もう、気の遠くなるような作業です。それを、200種も・・・。
出版社のほうから依頼があった企画でも、ぼくなら「二つ返事で辞退」します(笑)。
それを、自分から売り込んだとお聞きして、感心するよりも呆れてしまいました。

ハムシというのは、同じような大きさ、同じような色の種が多く、
これまでは手頃な図鑑もなかったことから、「○○○48」のメンバーがみな同じに見える
(オッサンだけかもしれません・・・)ような状態からいつまでも脱却できず、
種名が判明しないためにせっかく撮った写真が発表できない、ということも多々ありました。
こういう本が出版されると、過去のお蔵入り写真の中から改めて「出荷」できる
ハムシ写真が増えそうで、そういう点からもたいへん助かります。

著者の尾園さんは若手の昆虫写真家で、ぼくはかつて、尾園さんから一度だけ
ある昆虫の標本写真撮影の照明技法について質問を受けたことがあるのですが、
あっという間に彼の方がうまくなり、
今では、「昔は、尾園に質問されたこともあるんだぜ!」と言って自慢(?)
しなければならないような、情けない状態になってしまいました(笑)。
でもまあ、こんな企画を自分から売り込むような人は普通ではなく、
普通でない人には到底勝ち目はない、と悟ったほうがよさそうです。

本書を見ていて思ったのは、これは著者には全く責任のないことですが、
ハムシの和名というのは、どうして2種類も3種類もあるのだろう? ということでした。
たとえば、「アカバナカミナリハムシ」のところを見ると、別名として、
「アカバナトビハムシ」や「ホソカミナリトビハムシ」などの「別名」が併記されています。
ただでさえ名前が覚えられない無名の昆虫に、和名が3つも与えられているわけですね。
あの「オオクワガタ」でさえ、「オオクワガタ」以外の呼び名はないというのに。

世間の人々の関心のうすいマイナーなグループで、研究者たちの「基幹事業」であるはずの
名前の統一さえできず、それぞれの立場からこんなにも別名を主張し合っているようでは、
みんなウンザリして、「ハムシ界」に寄りつかなくなるのでは? と心配してしまいます。
いくつもの政党が乱立して政策の微差をことさらに言い立て、対立しているような構図にしか
見えないのですが、ハムシ屋さん同士、もう少し仲良くやっていただけないものでしょうか。
「ハムシ本人」には、なんの主義も主張もないと思います。

本書の表紙にある「葉上の宝石」は、とても素敵なキャッチコピーだと思います。
ハムシだけは、「体長」のかわりに、「カラット」表示してもいいかも?
 ちょうど1週間前の日曜日。
宮崎在住の昆虫写真家・新開 孝さんを中心とする8名のメンバーで、
埼玉県飯能市のフィールドを歩いてきました。

風もなく、おだやかなポカポカ陽気で、12月だというのに、太陽の光がまぶしいぐらいです。
この時期は晴れていても、風があるというだけでひどく体感温度が下がるものですが、
無風に近い林縁の斜面は、太陽光パネルのように熱を受けて温まっており、とても快適です。

冬の昆虫観察では、一部を除き昆虫が飛んだり跳ねたりしないので、遠方を見る視線でなく、
より近く、より足もとを見つめる視線になり、必然的に、歩みもそれだけ遅くなります。
「時速100メートル」といったところでしょうか。
国会審議で野党が使う「牛歩戦術」の方がずっと速いぐらいです(笑)。

虫がいたよ~
「虫がいたよ~」

誰かが何かを見つけると、みんなで集まって、どれどれ・・・と覗き込み、
場合によっては一人ずつ順番に撮影するので、
通りがかったハイキングの人まで、しばしば足を止めて、
「何がいるんですか、めずらしいものでも見つけたんですか?」 と覗き込んできます。
「虫? ああそう、虫ね・・・」と落胆して去って行かれるケースが多いのですが、
手のひらに乗るぐらいの大きさのものを皆で覗き込んでいるわけですから、
いったいそこに、どんなものを期待されたのでしょう。
こんなところで、オオサンショウウオなどを期待されても困ります(笑)。

さて、Iさんが林縁で、重なり合っている怪しいコナラの葉っぱを発見。
そっと開いてみると、そこにはミヤマセセリの幼虫がいました。
探そうと思って見つかるものではないので、これはお手柄でした。参加者のほとんどが
初めて見るものです。もっと寒くなると、葉っぱごと落ちて、そのまま冬を越します。
巣の中にいたミヤマセセリの幼虫
「巣の中にいたミヤマセセリの幼虫」

陽当たりのよくない切通しには、そのような場所を好む地衣類が育っており、
Sさんがあっと言う間に、地衣類に化けているコマダラウスバカゲロウの幼虫を発見。
「ここにいるのを、前に見て知っているから」と言いますが、
それでも5秒で発見とは、お見事というほかありません。
何しろ、こんな虫が、こんなところに身を潜めているのです。
地衣類の中に潜むコマダラウスバカゲロウの幼虫
「地衣類の中に潜むコマダラウスバカゲロウの幼虫(頭を下に向けています)」

いるとわかって探しても、探し出すのにもう少し苦労しそうなものですが、
「あ、ここにも、ここにもいる」と次々に3匹も見つけ出してくれました。
コマダラウスバカゲロウの幼虫は、いわば「巣を作らないアリジゴク」で、
落とし穴を作らず、通りすがりの小さな昆虫などを捕らえてそれをエサとしています。
すり鉢状の落とし穴を作るアリジゴクというのは、むしろ例外的な存在で、
ウスバカゲロウの仲間の幼虫の多くは、巣を作らずに生活しています。
そんな効率の悪い狩りをしていて、よく成虫になれるものだなあ・・・と感心してしまいます。

落とし穴を作るタイプのアリジゴクは、子供時代に飼ってみた人も多いと思いますが、
飼育すると意外にエサに困った、という話を聞くことがあります。
おそらく、エサをやるべき頻度を誤解されているのでしょう。待ち伏せ型の狩りを行う虫は、
絶食に強いものが多く、アリジゴクの場合、たとえば3齢(終齢)の幼虫にクロオオアリを
1匹与えたら、2~3週間は与えなくても大丈夫です。
もっと頻繁にエサをやらねば・・・とおそらく誤解されているのだろうと思います。

また、それでもエサに困るという人は、釣りエサとして売られている「赤虫(ユスリカの
幼虫)」を釣り具屋さんで買ってくれば、これは非常によいエサになります。
200円(税別)を最小単位として売られていることが多く、
その中に、おそらく300匹以上の赤虫が入っているでしょう。
湿らせた新聞紙などに包んで冷蔵保管すれば、かなり長い間、生かしておくことができます。

釣りエサにする赤虫は、泥深い水の底に住む水生昆虫であり、
乾燥した地面に巣穴を作るアリジゴクが、自然の中で出会うチャンスはありません。
遭遇可能性はゼロと言ってよいでしょう。まるでライオンに鯨肉を与えるような構図ですが、
3齢(終齢)の幼虫に赤虫だけをやっておけば、ちゃんと蛹になり、成虫になります。
赤虫も、捕えられれば暴れますから、2齢以下の小さいアリジゴクの場合は、
赤虫を捕獲できるかどうかがカギになります。
なお、いかなる場合も、赤虫の体が濡れているとアリジゴクが捕獲しづらそうなので、
湿らせた新聞紙などから出した赤虫は、1分間程度は放置し、
体表を乾燥させた方がよいと思います。

ポカポカの斜面で記念撮影
「ポカポカの斜面で記念撮影」

お弁当を食べたあと、斜面で記念撮影。ポカポカ陽気の、冬の好日を皆で楽しみました。
また季節を変えて、同じ場所を訪れてみたいものです。
 「マレーシア紀行」の第3回、今回が最終回です。

旅先でも最低限の白バック撮影がこなせるよう、持っていくべき機材の選択には、
ほとんど迷う余地もなかったのですが、モデルの昆虫をキープしておくための容器は、
どんなものをどれだけ持っていくか、出発前にかなり悩みました。
現地で、タッパーなどを調達するのは難しいと思っていたからです。

商店の陳列棚
「商店の陳列棚」

ところが、町のごく普通の雑貨屋さんに入ってみれば、タッパーはもちろん、
日本以上に昆虫向き(?)の多種多様な容器が並んでおり、これは、うれしい誤算でした。
写真の上段2点と、下段右は、同じ雑貨屋さんの商品棚です。
赤いフタがついている円筒形の容器(上段左の写真)は、
最初から虫を入れるために作られたものかと思うほどで、ねじ込み式のフタを
少しゆるめておけば空気交換もでき、穴を開ける必要がありません。
下段右は、日本の昆虫館がバックヤードで幼虫飼育に使っている容器と同じに見えますが、
10個入りでわずか5.4リンギット(当時のレートで151円相当)という、破格値でした。
オマケで掲載した下段左の写真は、食料品を売るスーパーの棚です。
マレーシアではどこでも日本の「ミロ」が大人気のようで、食事をした店でも、
コーヒーや紅茶に混じってドリンクメニューに「ミロ」があり、これには驚かされました。

さて、「虫屋の聖地」と呼ばれる19マイルは、確かに昆虫の楽園なのですが、
いつもいつも都合よく「大物」に出会えるとは限りません。そこで、時には
オラン・アスリから譲ってもらった昆虫をモデルにして、やらせ撮影をすることもあります。
オオコノハムシとその卵
「オオコノハムシとその卵」

このオオコノハムシは、そのようにして撮った写真で、止まっている樹種まで
矛盾のないように演出してあります。 「擬態名人」として、ここまで名高い昆虫も
あまりいないのではと思いますが、逆光に葉が透けると意外にその存在が目立つものだなあ・・・
と思いました。右の写真は、手前からストロボを当てて、明るさのバランスをとっています。
容器の中で卵を産んだので、卵の白バック写真も撮影。
1cm近くもある、特大サイズの卵です。

ハナカマキリの幼虫
「ハナカマキリの幼虫」

日本にも、緑色や褐色などの体色を武器に、一定のカムフラージュ効果を
上げているカマキリはいますが、こうして体型まで変えて、
自分を何かに似せている日本産カマキリはいません。
ハナカマキリは、体型そのものが花びらのような形に変化しており、
うすいピンク色の体色と相俟って、花への擬態効果を極限まで高めています。
図鑑などでよく見るのは、ランの花に紛れて姿を隠している写真で、ぼくもこうして、
そんな写真を撮ってみましたが、一説によると、むしろ花のない場所で獲物を待つことで
自分が花になりきり、誤認した虫たちが自分に向かって飛んでくるのを待ち構えて捕獲する
という、「隠れる擬態」でなく「目立つ擬態」ではないか、との考察もあります。
ちなみに、ハナカマキリが花になりきることができるのは、幼虫時代に限られ、
成虫になるとあまり花には見えず、擬態効果はかなり薄れます。

19マイルだけでなく、クアラ・ウォー(Kuala Woh)で見た虫たちもご紹介しましょう。
アカエリトリバネアゲハ、ツムギアリ、タマムシ、ハンミョウ
「アカエリトリバネアゲハ、ツムギアリの顔、タマムシの仲間、ハンミョウの仲間」

クアラ・ウォーは、ジュースの売店などもある、公園のような環境で、川で泳いだり、
水遊びを楽しんだりできる観光地として、いつも現地の人々で賑わっています。
ここは温泉が出る場所で、砂地にある水たまりに手を入れてみると確かに温かく、
完全にお湯です。この温泉が、チョウの好む成分を含んでいるらしく、
マレーシアの国蝶「アカエリトリバネアゲハ」が吸水に集まる場所として、
昔からよく知られています。

上の写真はこの場所で見た虫たちで、左上から時計回りに、
アカエリトリバネアゲハ、ツムギアリの顔、タマムシの仲間、ハンミョウの仲間です。
アカエリトリバネアゲハは、1匹が静かに止まっているだけでも、
その付近の空間を制圧するような重厚な存在感があって、
マレーシアの国蝶として、こんなにもふさわしいチョウは他にいないと思います。

旅の終りに、キャメロンハイランドにある昆虫園に立ち寄ってみましたが、
園内でぼくの腕に舞い降りたアカエリトリバネアゲハと眼が合い、
その威厳と風格には、こちらが気圧されそうでした。
アカエリトリバネアゲハは、サワガニの死体などには決して来ないので、今回ばかりは、
腕に止まってくれたのは、ぼくが「臭かったから」ではないと思います(笑)。

数センチの至近距離から見た夢幻の輝きを、ぼくはいつまでも忘れないでしょう。
アカエリトリバネアゲハの翅
 「マレーシア紀行」の第2回です。

今回、旅の前半は、テレビクルーの車で移動できたので、そこは非常に助かりましたが、
バスは1日に2、3本しかないため、レンタカーを使わないのであれば、
現地の移動は、基本的にタクシーに頼るしかありません。
現地経験の豊富な鈴木さんが、レンタカーはやめた方がよいと助言してくれたので、
旅の後半、テレビクルーと別れたあとは、タクシーで移動しました。
チャーターする場合、1時間あたり25リンギット(当時のレートで700円相当)が
標準だそうで、日中のまる1日(8時間程度)をチャーターしたことがありましたが、
この時は350リンギット(同9800円相当)を請求され、
あとで別の運転手に、「それはボッタクリだったね」、と言われました。
「1時間25リンギット」の単価で計算すれば、確かに350リンギットは高く、
8時間なら200リンギット(同5600円相当)あたりが適正価格でしょう。

タパの町のタクシー会社では、運転手はどうやら「My車両」で営業しているようで、
車両を見れば、運転手の人柄がそこに表れているように感じます。
車がきれいに管理されており、英語が話せる運転手ならば、ある程度信頼してよさそうです。
ボッタクリ・タクシーは、車の底に穴が開いて地面が見えるようなボロ車で営業しており、
英語がまったく話せない運転手でした。
移動中に、運転手との会話の中から情報収集も期待できることを考えると、
英語ができる運転手にお願いする方が、断然おトクです。

タパの町から、19マイルやキャメロンハイランドなどへ続く一本道は、
雨が降れば、いとも簡単に崖くずれを起こし、何度か移動の足を止められました。
「雨が降ったら崖くずれ」
「雨が降ったら崖くずれ」

11日間の旅のうちに、少なくとも3回はこうした崖くずれがあり、大迷惑でしたが、
当局としては、抜本的な対策工事を施す気はさらさらないのでしょう。
修復工事で生活している人への、仕事斡旋の意図がおそらくあるのだと思います。
崖くずれと、その修復工事は、現地の人々にはすっかり日常の風景のようでした。

「シュモクバエの仲間」
「シュモクバエの仲間」

19マイルの川沿いで、ぜひ見たい、と思っていたシュモクバエを発見しました。
左右の複眼がこんなにも離れており、複眼を含む頭部の形状が金づちに見えることから、
英語では「ハンマーヘッド・フライ」(金づち頭のハエ)と呼ばれています。
眼と眼の間隔が、大きいものや小さいものがいましたが、それが個体差なのか、
性差なのか、あるいは別の種類なのかは、ぼくにはわかりませんでした。
体長1cmにも満たないハエですが、拡大してみると、この造形の妙には惚れ惚れします。

「アギトアリ、アオスソビキアゲハ、コノハムシ、トガリメバッタ」
「アギトアリsp. アオスソビキアゲハ、トガリメバッタ、コノハムシsp.1齢幼虫」

さて、少しでも多くの昆虫をご紹介しましょう。左上から時計回りで、
アギトアリの仲間、アオスソビキアゲハ、トガリメバッタ、コノハムシの仲間の1齢幼虫。
「アギト」とは「顎(あご)」を意味し、このように180度も開く大あごを持っています。
アオスソビキアゲハも、今回の旅で、ぜひ見たいと思っていた種でした。
日本のどのチョウにも似ていない、奇抜なデザインには非常に心惹かれます。
コノハムシの仲間の幼虫は、コノハムシかオオコノハムシかわかりませんでしたが、
真っ赤な色をしていました。これではカムフラージュ効果がないように見えますが、
日本にも、クスノキのように新芽だけが赤くなる植物がありますから、
1齢幼虫のうちは、本来そういった場所にいるべき虫なのかもしれません。
トガリメバッタは、とがった眼より、不思議な形状をした尻の方が印象的です。

「シロアリモドキの仲間とその巣」
「シロアリモドキの仲間(15mm程度)とその巣」

川沿いの木の肌に、うっすらと白いものが見えます。
一見、カビのようですが、これは、シロアリモドキが糸で作った隠れ家で、
本種が紡ぐ絹糸は、「生物界で最も細い糸」と言われています。
分類上、紡脚目(ぼうきゃくもく)に属し、「紡」ぐ「脚」を持つグループという意味で、
本種が糸を出す器官は、口でも尻でもなく、驚いたことに「脚」なのです。
特殊な形状を持つ前脚から絹糸を出し、樹皮などに巣を作って、その中に隠れています。
日本でも、九州や沖縄には、同じ仲間が分布しています。

「タイショウオサゾウムシ」
「タイショウオサゾウムシ」

ゾウムシと言えば、日本では多くの種が、茶色で小さくて特徴がなく、
地味な昆虫の代表のように扱われていますが、
マレーシアには、こんなにも大きく、華やかなゾウムシがいます。
鈴木さんに、「そいつの爪は危険だよ」、と教えてもらいましたが、
無造作に手を出していたら、大ケガをしていたかもしれません。
厚い布越しに、指に止まらせてみましたが、本種のしがみつく力はすさまじく強力です。
これだけの力で、長い爪を突き立てられたら、確かに無事では済まないでしょう。
体表にはベルベットのような質感があって、
光沢を持つタイプの甲虫とは、また違った美しさを感じました。

オラン・アスリが売りに来る甲虫には、ゾウムシが多く、
人気昆虫であるはずのカブトムシ、クワガタムシは、最後まで1匹も見られませんでした。
鈴木さんによれば、ここでは、カブトムシはもっと標高を上げないと見られない、
とのことです。カブト・クワガタ人気に頼らない昆虫商売も珍しいと思いますが、
ここへ来る日本人には、それだけマニアックな虫屋さんが多いということなのでしょう。

第3回(最終回)に続きます。
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