10月25日に八王子で行なわれたヒナカマキリ観察会に参加してきました。
本種は、常緑広葉樹林の林床などで見つかる国内最小のカマキリで、
体長は2cmほどしかありません。南方系で、海沿いの土地に多いイメージがあり、
高尾山のふもとみたいな場所にいるというのは、少々驚きでした。

虫好きが集まる観察会ということで、捜索の眼が多いのは、心強い限りです。
ヒナカマキリ観察会
「ヒナカマキリ観察会」

ほどなく、あちこちから 「いた~!」という声が聞こえ、
自分も見つけなければ・・・と気持ちが焦ります。
落ち葉を踏みしめる長靴の先に、ピョンピョンと飛び跳ねる影。
いました、いました。 今にも卵を産みそうな、プリプリのメスです。

参加者には、産卵の期待が持てるメスの方が人気があるようですが、ぼくはすでに
メスの写真はたっぷり撮っていたので、今日はオスが欲しいと思っていました。
参加者との間で、すぐに交換トレードが成立します。
ヒナカマキリは、一般的にオスの方が個体数が少ないと言われており、
実際、オスを見つける方が苦労するものですが、
ここのポイントは、かなりの率でオスが見つかります。

雌雄を同じケースに入れておくと、オオカマキリなどは、
メスがオスを食べてしまうことが多いのですが、本種は平和主義者?のようで、
雌雄2組、計4匹を同じケースに入れていた参加者のもとで、
なんと、2組のカップルが成立してしまいました(笑)。
手の上に乗せてもらって記念撮影。その小ささがよくわかります。
帰ってからは、スタジオで白バックの全身像と顔、痕跡的な翅のアップなどを撮りました。
ヒナカマキリ。♂(左上)、♂の顔(右上)、交尾(左下)、痕跡的な翅(右下)
「ヒナカマキリ。♂(左上)、♂の顔(右上)、交尾(左下)、痕跡的な翅(右下)」

観察会が行われた社寺林は、きわめて多様な樹種に恵まれており、
面積の割に、植生が豊かで昆虫層も厚そうな、なかなかよい環境です。
「青々として、まるで、夏みたいな葉っぱだね・・・」
と参加者と言葉を交わしたコナラで、枯葉のような蛾を発見。
秋に出現するシャクガ、ヒメノコメエダシャクのメスです。
ヒメノコメエダシャク(♀)
「ヒメノコメエダシャク(♀)」

季節の進行に呼応して、この時期相応に傷んだ落葉樹の葉にまぎれていれば、
この枯葉擬態も、ある程度の効果があったのかもしれません。
変なコナラに止まってしまったために、かえって目立つ結果となってしまいました。

観察会もぶじ終了。駅までの道すがら、ミノウスバの飛ぶ姿がちらほらと目につきます。
「文化の日の蛾」などと呼ばれ、その通り、11月3日頃に目撃例の多い蛾です。
ミノウスバ(♂)白バック
「ミノウスバ(♂)白バック」

 ・もともと関東平野などの発生のピークがその時期であること、
 ・11月3日が、「晴れの特異日」であること。
 ・休日である文化の日に、多くの人がレジャーなどで外出すること。
おそらくは、そのような要因が重なって、文化の日の目撃例が多いのではないかと
ぼくは分析しています。

昆虫の図案で、日めくりカレンダーを作るなら、
11月3日は彼らの指定席、ということになりますね。
 前回、東京新聞の記事配信日をご案内した後で日程変更があり、ご迷惑をおかけしました。
しかも、ぼくは登場していませんでしたし(新聞記事の常ですが、記事内容は事前に見せて
いただけません)、期待して新聞を買ってくださった方が少なくとも1名おられるようで、
大変申しわけなかったと思います。

さて、前蛹の状態であったヒメジャノメは、その後、こうしてぶじに蛹になりました。
ヒメジャノメの蛹
「ヒメジャノメの蛹」

ネコ顔の「仮面」を、今なおぶら下げているのは、ご愛嬌です。
自然状態では、風雨に晒されるなどして、羽化までには脱落するのではないかと思いますが、
このまま羽化に至れば、3代に亘る風貌の変化が、1枚の写真に収められるかもしれません。

久しぶりの快晴のもと、来年出る本に載せるための昆虫を求めて、秋の野に繰り出しました。
すでに1冊を編めるだけの撮影は、一通り終えていますが、「撮れ高」(=撮影できたもの)
でページ構成を組みなおすフレキシビリティがあるので、各ページの完成図を想像しながら、
「写真があれば使いたくなるかも」、という昆虫をリストアップし、あちこち採集に出かけて
います。白バック写真のモデルスカウトに飛び回っている、という状態ですね。

暑くも寒くもない秋の野は、いかにもさわやかで、もう、蚊の襲来もありません。
それはそれで結構なことなのですが、ぼくは、この時期のフィールドが意外に苦手です。
整備された歩道を散策するだけでは、わからないことですが、
藪(やぶ)や叢(くさむら)に分け入ると、さまざまな不快因子が、
たちどころにまとわりついてくるのが、この季節なのです。
ひっつき虫が付着した足
「ひっつき虫が付着した足」

徘徊すること10分。イノコヅチやチヂミザサなど、いわゆる「ひっつき虫」と呼ばれる
植物の種子が、あっという間に体を覆います。これは、無駄な抵抗をしても仕方がないので、
付着するに任せて、1日を過ごさなければなりません。
ヒトは、家に帰れば服を脱いでしまい、洗うなり、ごしごしとこすり取るなどすれば
よいわけですが、犬の散歩中に、愛犬がこんな姿になってしまったら、
愛犬家の方は、どのように対処しているのでしょう。
犬は聞き分けがよいから、ぼくのような姿にはならない?

体への付着以上に不快なのが、網がこんな状態になってしまうことです。
ひっつき虫が付着した網
「ひっつき虫が付着した網」

こうなると、網がスムーズに振りにくくなり、付着の仕方によっては、
網がスイングの風圧でも十分膨らまずに、きちんと枠の中で捕らえたはずの虫を、
奥のポケット部分に追い込めず、ふたたび枠から脱出されてしまうこともあります。
網を振った後は、普通ならば、網を反転させて中に入ったゴミを出し、
反転・反転を繰り返しながら、リバーシブルに使い続けるのですが、ひっつき虫だらけの
この状態になってしまうと、被害を受ける側を片面に固定しておかないと、
内側までこんな状態になると、採集したチョウなどは翅を傷めてしまうことにもなります。

そして、何といっても、いちばん不快なのがこれ。
網の柄に付着したクモの巣
「網の柄に付着したクモの巣」

網の柄にびっしりと絡んでいるのは、クモの巣です。
秋になると、おびただしいジョロウグモの巣が木々の間を埋めつくし、
藪に入り込むと、ちょうど顔の高さで、次々にぶつかってきます。
これを避けるために、手に持った網の柄をぐるぐる振り回しながら前進するのですが、
藪を抜けると、網の柄はこんな姿になっています。
まあ、網がこうなってくれなければ、自分の顔が、こんな状態になっていたわけですね。

いちばん探していた虫、ヒメギスは結局発見できず、くたびれもうけの1日となりました。
一見さわやかな秋の野は、虫を求めてその中に深く入り込むと、意外なまでに攻撃的です。
 前回、実地テストを経て安全宣言したササの鉢植えで、ヒメジャノメが前蛹
(蛹になる準備期間。幼虫の姿のまま体が縮んで動かなくなる)になっています。
本来、10月も後半の今の時期には、「年内羽化組」はもういないはずで、
幼虫のまま越冬態勢に入るはずですが、これは撮影のための、いわば「促成栽培」です。

フンを出し切って透明感を増した体のグリーンがいかにも美しく、
黒バック+逆光ストロボで、その美しさを表現してみました。
ヒメジャノメの前蛹(アップ)
「ヒメジャノメの前蛹(アップ)」

鉢植えであれ、あるいは野外であれ、アップの写真表現としてはこの撮り方で良く、
撮影時にほとんど迷うこともないのですが、
夜の野外で、カメラを少し引いて周辺の環境まで見せたい場合は、
常にライティング(照明)に迷いを感じつつ、撮影することになります。

自然光のない夜間の撮影では、
いかなる照明をもってしても、その環境描写は「嘘」になります。
夜の闇をまとっている昆虫は、どこに止まっていようが、闇そのものが環境となるからです。
写真家の照明が、いかに巧みに見えようとも、それは環境としての闇を切り裂き、
視覚的に認知できるように暴き立て、
「ヒト都合」の虚構に仕立て上げているに過ぎないわけですね。
こんな照明で本当によいのだろうか・・・という迷いが、常につきまとうわけです。

昆虫写真家のこのような思いを、前提としてまずご理解いただいた上で、
ハウツー的な目先の方法論を言えば、強い逆光を入れると、
いかにも夜間的に見える写真にはなります。
抽象絵画のような、鑑賞作法としての特別な見方など必要はなく、
黒の背景に逆光が入っているというだけで、誰もがひと目で、
「あ、夜っぽい」と自然に思える描写になるということですね。
反面、夜間にその昆虫を探そうという人のために、
「探すイメージ」を提供する、といった観点から照明を考えると、
逆光という照明は、現実から最もかけ離れた「ありえないイメージ」ということになります。
探す人の手もとには、かならず懐中電灯があるはずで、懐中電灯光は、
逆光とはベクトルが真逆の、「手前から奥へ」という方向の光であるからです。

両者のライティングを比較してみましょう。
まずこれが、手前から奥へ向かう光。
懐中電灯光を模した、カメラ内蔵ストロボ1灯のライティングです。
懐中電灯を持って虫を探す視点からは、虫の姿はこのように視界に飛び込んでくるはずです。
こんなイメージを念頭に置いて、お目当ての虫を探せばよい、ということになりますね。
ヒメジャノメの前蛹(ロング)内蔵ストロボ1灯による順光表現
「ヒメジャノメの前蛹(ロング)内蔵ストロボ1灯による順光表現」

しかしこれでは、被写体であるヒメジャノメの前蛹が、ちっとも美しく見えません。
透明感は、逆光(透過光)を入れない限り、透けていること自体が表現できないのです。
また、手前から奥へ向かうという「順光」では、近距離のものほど明るく描写されるため、
ここでは、手前のササの茎が白く飛んでしまって、非常に目障りでもあります。

今回は、「鉢植え」という取り回しのよさから、スタジオに持ち込んで、
いかようにも凝ったライティングをしてみることが可能です。
ストロボ5灯を使った「ていねいな」照明を施してみました。
ヒメジャノメの前蛹(ロング)ストロボ5灯による表現
「ヒメジャノメの前蛹(ロング)ストロボ5灯による表現」

ササの茂みの中にぶら下がる「天然のシャンデリア」といった感じの
美しい前蛹が表現できましたね。
しかし、これは懐中電灯を片手に虫を探すときのイメージからはかけ離れています。
アップの写真であるなら、もともと周辺環境をそぎ落とした表現ですから、
この照明でよいだろう、ということになりますが。

夜であることを、どう表現するか。 それは、とても難しい問題です。
描写できないのが闇であるにもかかわらず、写真家はそこで引き下がるわけにはいかない。
闇を光で暴きつつ、なお闇の深さを損なうことなしに、見る者に届けなければならない。
闇を生かすも殺すも、光の使い方ひとつで決まり、
写真の使用目的によっても、闇の暴き方は、ひととおりではないわけです。
もっと掘り下げていくと、「夜そのものの表現」という、
より大きなテーマに繋がっていることも見えてきます。

自然光がふんだんにある昼間とちがい、夜は、自分が目的を持って放つ光以外は存在せず、
写真家の思いが、より色濃く絵づくりに反映される現場と言えます。
夜間照明には、常に「迷いがある」と書きましたが、それは、少し大げさに言えば、
写真に自身の考えや、場合によっては思想まで投影されることもありうるからだと思います。
夜間撮影では、「写真に写りこむ全ての光に説明責任がある」、と言ってもよいでしょう。
「フォトグラフ(写真)」は、「光の(photo)」と「描く(graph)」を語源としていますが、
光のない夜の情景を、「フォトグラフ」に表現するためには、
闇と、その中にいる被写体を、どのような光で、いかに描くべきなのか。
終りなき試行錯誤は、今後もずっと続くのだと思います。

<お知らせ>
先日、虫仲間である昆虫エッセイストの鈴木海花さんが、東京新聞の取材を受けられました。
明日21日の朝刊に掲載されるそうです。ぼくも同行して、写真なども撮られているのですが、
今回はオマケなので、紙面に載るかどうかは、わかりません。あやふやな告知で恐縮です。
<お知らせの訂正(申しわけありません) 10/21 7:40>
急遽、「23日」の朝刊に変更になったそうです。大臣の辞任問題などが原因かもしれません。
 昨晩、タッパーの中から、ニャーニャーと呼ぶ声が聞こえたような気がして、
起き上がって様子を見てみました。
ニャー_8579
「ニャー」

タッパーの中には、この子たちがいます。ネコ顔のイモムシ、ヒメジャノメの幼虫。
「愛らしさ」ということでは粒ぞろいのタテハチョウ科のイモムシの中でも、
飛びぬけてラブリィな存在と言えるのではないでしょうか。

まあ、実際はネコのように鳴いたりはしないので、
「鳴き声がしたかも?」 というのは、イモムシLOVEの、ぼくの後づけの妄想ですが、
この子は、不慮のできごとに遭遇し、確かに飼い主のヘルプを必要としていました。
脱皮に少々手こずったらしく、古い頭の殻が、糸ですっかり絡んでしまっており、
この古い頭殻を、ずるずると引きずったまま歩いていたのです。

ヘルメットが、ちょうど耳の脇にぶら下がっているような格好ですから、
かなり鬱陶しいのでしょう。
いやがって、何とか外せないかと、新しい頭をこすりつけるようにして押すのですが、
その光景は、まるでネコの親子が頬をすりすりしているようにしか見えず、
ネコ好きなぼくにとっては、これはちょっとたまりません(笑)。
「助けてあげるけど、ちょっとだけそのままね! 写真とるから!」と、
このネコ顔のイモムシの災難に乗じて、いろいろな角度から激写しました。
頬をすりすり_8580
「頬をすりすり」

ピンセットでつまんでそっと引っぱると、古い頭殻は意外なほどあっさりと取れ、
「もっと早く取ってよねっ」 といった顔で、イモムシはササの葉っぱに戻っていきました。

いま、ササ類を食べるイモムシのページを作るために、
他にヒカゲチョウの幼虫なども、同じように飼育しています。
切ったササの葉は、まったく日持ちがしないので、幼虫をストレスにさらさないように
するには、ほぼ毎日のように、新しい葉と取り替えてやらなければなりません。
ササは、株ごと掘り起こしてこようにも、根は地下で複雑に絡み合っていますから、
非常に手のかかる、面倒な作業になります。
園芸ショップに問い合わせてみると、オオクマザサならあるというので、
鉢植えを買ってくることにしました。

こうした場面で、気をつけなければいけないのが、残留農薬の問題です。
園芸ショップの鉢植えというのは、虫の喰い痕があると商品価値が下がりますから、
虫がつかないように管理されています。
「虫のために買っていく」なんていうお客は、まずいないと言ってよいでしょう。
農薬や殺虫剤の使用履歴について、ちゃんと答えられるお店で買うことが大事です。

今回は、「えっ! 虫にやるの? 殺虫剤まいたばっかりだよ!」
と即答でした。
「しかもね、糊、使っているのよ、糊。」
「?」
「あのね、葉っぱに糊をつけて、その糊に殺虫剤を噴きつけるわけ。
簡単には洗い流せないわよ~」
・・・ということで、毎日毎晩、じょうろで水をまき続けて、2週間が経ちました。
その間、大型台風も立て続けに通過したので、マンションのベランダとはいえ、
かなり雨も吹き込んだはずです。そろそろ、利用できるかもしれません。

ネコ顔のイモムシが、明日の朝、ぐったりしていたら嫌だな・・・と心配しつつ、
とりあえず1匹を隔離して、鉢植えから取ったオオクマザサの葉っぱ1枚とともに
別のタッパーに入れてみました。
「ニャー(これ、まだダメだよ)」などと、鳴いて知らせてくれればよいのですが、
どうしても1匹に、「人柱」になってもらわなくてはなりません。

夜中に、「ニャー」と呼ばれた気がして、目が覚めてしまったのは、
やはり、気にかけていたからでしょう。
思いがけず、脱皮失敗の子を、いち早く助けてやることができてラッキーでした。
そして、おそるおそるフタをあけてみた隔離タッパーの中でも、
ネコ顔のイモムシが葉を食べ進めており、ここまで食べて平気な顔をしている以上、
殺虫剤問題は、ひとまずこれでクリアしたと言ってよさそうです。

一鉢340円のオオクマザサでは、もしかしたら、
「わたしって、そんなに安い女なの?」 と叱られてしまうかもしれませんが、
そっちの「ニャー」は聞こえないフリをして、この鉢で育ってもらうことにしましょう。
とりあえず、ぼくも今晩はぐっすり眠れそうです・・・。
 「どS」という言葉を知らなかったお嬢さんがいます。
「えっ、どえす ってなに? 京都のことば?」 などと言うので、
「違う違う、それはちなみに、どすえ ね」 と、誤解を解いてあげたのですが、
「知らない」 ときっぱり言われてしまうと、若いお嬢さんに
改まって「どS」の意味を教えるのも、なかなか気恥ずかしいものです。

「え~と、オスとメスがいてね。ほら、カマキリって虫、いるじゃん?
メスがさ、オスを食べちゃうでしょ。ああいうメスをね、どSって言うんだよね」
と、噛み噛みで説明しましたが、われながら下手な、おバカ解説です
(というか、少し違うような気もするし・・・)。

さて、そこで(?)「著者自身による著書紹介」の2回目です。
オオカマキリ―狩りをする昆虫  (科学のアルバム・かがやくいのち)オオカマキリ―狩りをする昆虫 (科学のアルバム・かがやくいのち)
(2013/03)
森上 信夫

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「オオカマキリ-狩りをする昆虫」(あかね書房)2013年3月発行

「オオカマキリ-狩りをする昆虫」(あかね書房)の撮影を担当した時、
編集サイドからの注文には、当然、交尾の写真も、
また、交尾後の、メスによるオスの共食いシーンの写真も含まれていました。
カマキリの本を作る以上、これらは絶対に欠かすことのできない定番写真です。
昆虫の「特定の1種の生活史を追う」 というタイプの科学絵本の撮影では、
先走ったオリジナリティより、まずはいったん「様式美」をきちんと踏襲する
ところから始まります。

これが意外にやっかいなもので、
(1)本でよく見かける「超定番」シーンなのに、いざ自分が撮影しようとすると、
   待っても待っても、意外にその場面が訪れない。焦りで、心が折れそうになる。
(2)撮りつくされているシーンなので、後発本には、より高いクオリティが求められ、
   70点ぐらいの写真では、なかなかOKをもらえない。
   「割とフツーですね」、と言われてしまう
   (露骨にダメとは言われないが、要は、「察してくれ」ということ)。
   100点に近くないと、胸を張って提出できず、
   自分の技術の拙さを思い知って、ここでもまた、心が折れそうになる。
という、「二重苦」と向き合うことになります。

オオカマキリの「交尾後の共食いシーン」は、
この(1)にも(2)にも該当するもので、撮影はなかなか大変でした。
交尾中のオオカマキリを野外で見つけることは、少ないながらもありますし、
飼育下で羽化させた未交尾の雌雄をお見合いさせれば、
人為的に交尾態を作り出すことは、そんなに難しいことではありません。
問題はその先で、交尾を終えたオスは、まんまと逃げおおせてしまい、
なかなか、メスに食われてはくれないのです。

まあ、それはそうですよね。積極的に食われたいというオスもいないでしょうし、
うまく逃げおおせることができれば、また違うメスに出会えるチャンスもあるわけです。
ぼくは、婚活中の多くのカマキリの仲を取り持ち、まるで、「やり手ババア」のように
新婚カップルを次々に誕生させてきましたが、何組目かに、ようやくメスの手にかかり、
頭からバリバリと食われていくオスの姿をカメラに収めることができました。
出版社の出版物として、本の掲載写真をここにそのままアップすることはできませんが、
食われていくオスが、上半身を失ってなお、最後まで交尾器の連結を解かなかった、
その接合部分の写真がこれです。
交尾中に食われるオオカマキリのオス(部分)
「♀(上)に食われ、上半身を失いながら交尾を続けるオオカマキリの♂(大幅トリミング)」

上半身も下半身も差し出し、メスの食欲と性欲に全身で奉仕しつつ、
この世から跡形もなく消えていくオス・・・。
これこそ、究極の愛のかたちと言えるのかもしれません。

「どS」についての解説をひとしきり聞いて、じゅうぶん納得顔のお嬢さんに、
「じゃあ、森上さんは、どMでしょう(笑)」 と言われてしまいました。
いやいや、オオカマキリに比べたら、まだまだ修行が足りません。
というか、言葉も知らなかったようなお嬢さんに、そんなに簡単に見破られるようでは、
オトナとしてなさけないです・・・。
 10月4日の記事で、「自分はブログだけで精一杯、FBまでは無理」と書いたのですが、
海野和男さんが、ちょうどこの日からFBを始められたようで、「小諸日記」に、

「実際見てみると、正直、今の時流はfacebookなのだなと、つくづく思った。
世の中ブログではなくて、今やfacebookなんだと言うことがはじめて理解できた。
何事もやってみなければわからない。ぼくも今回の機会を逃せば、
今の世界から取り残された老人になるところだった。」

と書かれていたのを読み、あまりのタイミングに、のけぞってしまいました(笑)。
「おまえは取り残された老人だ!」 とお叱りを受けたような心境です。 がっくり・・・。
もっとも、8月の時点では、ぼくは物故者かと思われていたような男ですから、
「故人キャラ」から「老人キャラ」へ、というのは、
生きてる分だけ「昇格」した、と思わなければいけないのかもしれません(笑)。

さて、昆虫写真家の尾園暁さんのブログ「湘南むし日記」で、
オオトビサシガメの産卵の話題から、当ブログにリンクを張っていただきました。
「オオトビサシガメ/産卵」で検索すると、ぼくの写真が先頭に出てくるという
ことなのですが、その写真はブログ内にはなく、先日ご案内した時事通信社の取材記事
の中にあります。記事中には、産卵時期等についての記載はありませんでしたので、
当ブログで写真を添えて、情報公開させていただきますね。

オオトビサシガメの産卵
「オオトビサシガメの産卵」

撮影日は今年の「5月6日」で、東京都町田市での撮影です。
最近の写真かと思われ、越冬前にも産卵を行なうのかと誤解された方が
おられるようですが、産卵時期は、本種の知見としてすでに知られているとおり、
春でまちがいないと思います。
おもしろいのは、卵の「積み上げ方」で、こんなふうに産みます。
オオトビサシガメの卵塊
「オオトビサシガメの卵塊」

まさか、と目を疑うスタイルではないでしょうか。
図鑑などで、これを文章だけで表現するとしたら、
「卵は円筒形で、卵塊状になる」、という記述になるのでしょうが、
こんな形の卵塊になるとは、文章だけでは誰も想像できないでしょう。
円筒形の底の部分が葉に接するわけではないのです。
撮影しながら、この雑な積み方に呆れてしまい、
「おまえなあ・・・、ビールの空き瓶だって、そんなふうに積むやつはいないぞ」
と、思わずカメムシに突っ込みを入れてしまいました。

ぼくは友達があまりいないので、よく昆虫相手に、こうして突っ込みを入れたり、
一人でボケたり(突っ込んではもらえないので)して、楽しんでいるのですが、
雑木林で誰もいないと思って油断していると、ふと気づけば背後で見ている人がいて、
ものすごく恥ずかしい思いをすることが結構あります。
通報されないように気をつけなければ・・・。

オオトビサシガメは、日本国内のサシガメ(刺し亀)中の最大種で、
体長は27mmにも達します。ちなみに、2番目に大きいのが、
都市の公園などでもすっかりおなじみになった「ヨコヅナサシガメ」で、
こちらは、大きくても24mmまでです。
ヨコヅナサシガメ
「ヨコヅナサシガメ」

2番目なのに、どうして「横綱」なの? と思われるかもしれませんが、
「大きいからヨコヅナ」ではなく、腹部をぐるりと縁取るような白黒の模様帯が、
土俵入りの際に横綱が締める綱(=横綱)に見えることから命名されています。
同じカメムシの仲間でも、ツチカメムシのグループ最大種「ヨコヅナツチカメムシ」は、
真に大きいことからの命名ですから、ややこしいですね。

さて、FBもできない「取り残された老人」は、今日も裏の雑木林へ出かけ、
ヤブカ・レディースの、熱烈な「友達申請」でも受けてくることにします・・・。
2014.10.04  ブログ雑感
 ブログを始めてから、1ヶ月たちました。
自分で決めた締切を自分で守れるかどうか・・・と弱気になり、最初から「月2回更新」と
低い目標を設定しておいたために、どうにかこうにか「1ヶ月もった」格好です。
「毎日更新」と宣言して、そのとおり実行できている人は本当にすごいな、と
つくづく思いました。
夏の終り - クモの巣にかかったアブラゼミ
「夏の終り - クモの巣にかかったアブラゼミ」

パソコン操作がひどく苦手で、自分の手で記事をアップできるようになったのは、
前回のエントリーからです。それまでは、知人に写真と文章原稿をメールで送って、
アップ操作をしてもらっていました。
そんなわけで、SNSなど双方向のメディアでは、受け答えをいちいち「知人にお願い」
というわけにもいかないので、敬遠して近づかないようにしています。
「こんなの簡単だよ」という人には、
「できない子の気持ち」はわからないと思います(笑)。
スマホにアプリを入れる能力もなく、買った時のまま、何も入れずに使っているほどで、
今どきLINEも使えないなんて、「こんなことができない霊長類なんていないよ」、
と説教されてしまったことがあります。
フェイスブックもツイッターもやっていないと絡みづらい、と言われておりますが、
そういうわけで、「ブログが精一杯」ですので、ご理解いただければと思います。

一応、スマホを持ってはいるので、自分のブログを見てみたことがありますが、
見え方が全然ちがうことに驚きました。トップページがなく、いきなり個別エントリーの
見出しが並ぶ画面が先頭に表示され、まるで表紙がなく、「目次から始まる本」みたいです。
これでは、リンク先一覧なども見られないので、スマホだけでご覧になっている方は、
ぜひ一度、パソコン画面でもご覧になっていただければと思います。

メールフォームを使って情報をくださった方、ありがとうございました。
あのオナガミズアオらしき幼虫は、すでに繭をつくり、長い眠りに入っています。
「自分の見たオナガミズアオの幼虫も、同じように毛束のつけ根にリング紋がなかった」、
と教えてくださった方がいらっしゃいます。有益な情報をありがとうございました。
秋を迎え、ほかの幼虫たちも次々に繭をつむいでいます。
育ち切った幼虫は、蛹化スタンバイになると色が変わりますが、
腹側にもともとのグリーンを残したまま、背中側がピンクになるものが3つ続きました。
「蛹化の兆しのツートンカラー」をまとった3種です。
蛹化カラーの、オナガミズアオ(?)、モンホソバスズメ(?)、ルリモンシャチホコ
「蛹化カラーの、オナガミズアオ(?)、モンホソバスズメ(?)、ルリモンシャチホコ」

9月中に、出版企画が一つ決まりました。編集者のNさん、ありがとうございます。
来年5月頃には、このブログで新刊のご案内ができるものと思います。
考えてみれば、2005年に出した「ウスバカゲロウ」(ポプラ社)以来、
ぼくは、児童書と大人向けの本を、完全に交互に出してきました。
「ウスバカゲロウ」(児童)→「昆虫の食草・食樹ハンドブック」(大人)→
「虫のくる宿」(児童)→「樹液に集まる昆虫ハンドブック」(大人)→
「オオカマキリ-狩りをする昆虫」(児童)→「散歩で見つける 虫の呼び名事典」(大人)。
ということは・・・。 法則?どおり、次は「児童書」の番です。
ぼくのようなレベルでは、「企画は、おおむね通らない」のが普通なので(笑)、
出版順を自分でコントロールすることは不可能ですから、
不思議なことだなあ・・・と思っています。
この本のための新撮ができるのも、あとひと月ぐらいでしょうか。
何としてでも、よい本にしたいと思っています。

ブログの更新ペースですが、「月2回更新」では、さすがに間延びしすぎと思え、
かといって、今の「3~4日に1回更新」というのも、正直きついので、
「巡航速度」としては、「週に1回更新」程度が、落ち着きどころなのかもしれません。
もうしばらくは、今のペースを維持できるように努力してみて、
自分に合ったペースをつかみたいと思っています。

引き続き、当ブログをご贔屓によろしくお願いいたします。