上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 機材紹介の3回目、今回が最終回です。
機材に興味のない方にとっては、つまらない話題が続き、すみませんでした。
それでは、最後にストロボについてのお話を。
日帰りセット(ストロボ)
「日帰りセット」

<L>
オリンパスの、エレクトロニックフラッシュT32 (自作ディフューザー付き)。
10年以上も前に絶版になった、古い古いストロボです。フィルム世代の製品ですね。
外付けストロボとしては、背の低い特異なスタイルをしており、光軸に近い位置から
光を放つことができるため、被写体との間合いが取れないトキナーの魚眼ズームと
組み合わせて使います。 ほとんど「魚眼撮影専属」のような使い方ですが、
ぼくのカメラバッグ内で最もパワーのあるストロボ(GN32)であるため、
強い光を必要とする撮影シーンにおいても、まれに出番があります。

<M>
ニコンの SB-R200(カメラのシューに、直接取り付けることはできません)。
カメラからできるだけ遠く離して、被写体の横や、背後から照射します。
ワイヤレスで、カメラ側から発光量をコントロールでき、
カメラの内蔵ストロボと組み合わせて2灯照明にします。
ぼくの絵づくりを特徴づけているのが、このストロボであると言えます。

昆虫を、見たままに描写しようと思ったら、カメラ側からのストロボ1灯では、
立体感が全く得られません。光は通常、上から(空から)来るのが自然ですが、
カメラ位置からの直射光は、立体感も陰影も打ち消す「正面衝突の暴力的な光」であり、
内蔵ストロボ1発で済ませるのは、非常に雑な撮り方です。
そこで、もう1灯をどうやって焚くか、昆虫写真家はそれぞれに工夫を凝らしています。
撮影時に、光の方向が異なる2灯目を入れたい、というのは、もう前提みたいな話であり、
議論の余地があるのは、どうやって入れるか、という点のみです。
少し前には、フラッシュブラケットという器具が流行しました。 カメラ位置から、
アーム状のものを伸ばしてその先にストロボを取り付け、カメラを構えれば
被写体の斜め後方に、つねにもう1灯が自動的に配置される、というスタイルです。

ぼくは、これを導入しませんでした。背後からの1灯が、常に同じような角度からの
照明になるため、ワンパターンになるのを怖れたことと、ブラケットを装着したカメラは
あまりにも突出部分の多い、ゴツい躯体となるため、藪の中では枝などに引っかかり、
小回りが利かなくなることを良しとしなかったためです。
そこで考案したのが、棒の先端にストロボを取り付け、カメラは右手だけでホールドし、
左手に持った「棒つきストロボ」で、最適な位置からもう1灯を焚く、というやり方です。
棒つきストロボと、その実演例
「棒つきストロボと、その実演例」 ※ 宴会芸ではありません。

発光部を手前に向けておくために、棒の先の自由雲台が手前に倒れこむような角度で
固定してあり、これがよい「引っかかり」となって、肩にかつぐスタイルで持ち歩けます。
「かつぎ棒」と呼ばれる所以ですね。

2つ前の機材コラムで、「ストロボが内蔵されていないカメラは0点」、と書きましたが、
なぜ、外付けではダメで、内蔵ストロボでなければならないか?
それは、左手をバックライト専用に取られるため、カメラの操作は右手のみに集中します
(だから、オートフォーカスを多用します)。そのままの姿勢で、カメラをしばらく
ホールドしなければならないというケースが、1日に何度となくあるのに、
カメラ側が外付けストロボでは、絶対的な重量が増す上に、重心が高く不安定になり、
片手ホールドでは腕がすぐに疲れてしまい、ブルブルと震えてくるからです。
もちろん、腰を据えて撮影できる場合は、2灯目の固定には素直に三脚を使用します。

作例写真:アオドウガネを2灯照明で
「作例写真:アオドウガネを2灯照明で」

これは、上で紹介した「バックハンド・右サイドライティング」を使った作例です。
正面からの内蔵ストロボ1発では、アオドウガネの青い輝きが全く出ません。
右サイドから、もう1灯を入れることで、こんなにもくっきりと青さが出ました。
陰影処理が、かなりテキトーな作例なので、アオドウガネの影が見苦しいですが、
効果が最も顕著に現れているサンプルを選びました。

セミの羽化の連続撮影は、一晩がかりの仕事です(翅が色づくには時間がかかります)。
しかし、「バラ売りカット」も時には必要で、そういう写真にまで時間はかけられません。
下のカットは、「かつぎ棒」を肩から下ろし、通りすがりのわずか30秒ほどで撮影した
ものです。内蔵ストロボを上げ、かつぎ棒のストロボスイッチを入れて、左手を伸ばす。
セミの左後方からの「フォアハンド・バックライティング」で、姿勢にも無理がなく、
腕にやさしい角度です。 あとは、「ピピッ!(合焦音)」、「バシャピカッ!」で、
いとも簡単に撮れてしまいます。
作例写真:アブラゼミの羽化
「作例写真:アブラゼミの羽化」

内蔵ストロボは、うちわ型のディフューザー「影とり」を使って、柔らかな光で被写体を
包み込み、バックライトは、指向性の強い光をそのままぶつける。
前者を強くすれば、図鑑的な写真に、後者を強くすれば、印象的な写真になります。
こんなふうに、ぼくはストロボを駆使しています。

※ 「かつぎ棒」の使用例は、別角度からの写真が、ぼくを取材してくださった
時事通信社の記事内に出ています。あわせてご覧ください。
http://www.jiji.com/jc/konchu?p=professional0001
スポンサーサイト
機材紹介の2回目。今回は「レンズ」編です。
日帰りセット(レンズ)
「日帰りセット」

<D>
トキナーの魚眼ズーム10-17mm。
広角端(10mm側)にすると、180度の画角をもつ完全な対角線魚眼レンズとして機能します。
強烈なイメージ表現ができますが、どの焦点域でも地平線が歪んで写るなど、
描写にクセのあるレンズです(下記作例参照)。
魚眼作例:海と空とイシガケチョウ
「魚眼作例。海と空とイシガケチョウ」(既出の写真ですが・・・)

昆虫写真を本格的に始めると、対角線魚眼レンズを使った撮影表現に、
かならず一度はハマるものですが、どうしても海野和男さんのモノマネに終わってしまい、
その先のオリジナル表現に到達した人は、まだ誰もいないのではないか?と思います。

<E>
ニコンの10-24mm。
歪みのない広角接写をしたい場合、トキナーの魚眼ズームに代わって出番となります。
「昆虫の生息地の風景写真」にも使いますが、優秀なコンパクトデジカメが増えてきて、
最近は、風景撮影を「コンデジ」で済ませることも多くなりました。

<F>
ニコンの85mmマクロ。
メインのマクロレンズです。野外での昆虫撮影の90%以上はこのレンズを使います。
手ブレ補正機能を備えていますが、機能をONにしていると「かえってブレる」
ような印象があり、多くの場合、ぼくはこの機能をOFFにして使っています。
このように、「手ブレ補正機能が、挙動不審な動きをし、かえってブレを呼ぶ」
という話は、意外なほどよく耳にします。

<G>
タムロンの90mmマクロ。
オートフォーカスで狙いにくい虫は、こちらのマクロレンズを使います。
ピントリングの回転方向が、ニコンの純正レンズと逆ですが、
ぼくはニコンと逆回転のオリンパスのカメラで育ったので、
今でも、ニコンの純正レンズではマニュアルフォーカスが上手にできません。
ニコン純正レンズと回転方向が逆であることで、ぼくとしてはむしろ恩恵を受けています。
ちなみに、ペンタックスがニコンと同一方向で、キャノンとオリンパスは逆回転です。
ニコンが主力機となってから10年が経ちましたが、いまだに強い違和感があり。
ニコンの回転方向になじむことは、おそらく生涯ないだろうと思います。

<H>
タムロンの70-300mm。
D7000と組み合わせると450mm相当の画角になる、本格的な望遠レンズです。
接近を許さないトンボの撮影などに使います。
ニコン純正レンズとは比較にならないほど、優秀な手ブレ補正機能を備えています。
ただし、このレンズには、絞りの作動に問題をもつ個体があり(価格com.などを参照)、
カメラ屋の店頭で試写させてもらって、良好な個体を購入しています。
このレンズは2本持っていますが、使えるものを探し出すのに非常に苦労しました。
ぼくの経験では、「良好な個体の方がむしろ少ない」ので、注意が必要です。

交換レンズは、
ニコンとタムロンが各2本、トキナーが1本の、計5本ということになります。
今回は、小物類なども一緒にご紹介しましょう。

<I>
レインポンチョ(雨具)
背中の部分に、リュックサックのための空間が設けてあり、
カメラザックを背負ったまま着用できます(折りたたみ傘も一応持って行きます)。

<J>
アングルファインダー。
カメラの真上から、ファインダー像を見るためのアクセサリーです。
カメラにバリアングルモニターが搭載されていれば、不要となるアクセサリーですから、
早く中級機以上のモデルに、バリアングルモニターを搭載してほしいものです。

<K>
ミネラルウォーターのペットボトル。
フィールドへは、スポーツドリンクやお茶ではなく、水を持って行きます。
目を洗ったり、ドクガの毒刺毛を洗い流したり、また、採集した昆虫に水を与えるような
ケースでも、ミネラルウォーターは有効です。
飲料用としてだけでなく、「多目的に使える」ということでは、水に勝るものはありません。

ストロボについては、次回「日帰りセット(機材紹介/その3)」でお話したいと思います。
 前回の記事で予告したとおり、ぼくの撮影機材について、ご紹介したいと思います。
カメラ→ レンズ→ ストロボの順に、おそらく、3回の連続記事になると思います。
新開さんのブログ(前回参照)で、ぼくがかついでいた「かつぎ棒」は、照明機材なので、
ストロボの紹介記事(次々回予定)の中で、使用例をご覧いただきたいと思っています。

まず、機材を収納するカメラバッグですが、肩かけ式はなく、全て背負い式のもので、
「日帰りセット」、「お泊りセット」とぼくが呼んでいる、大・小2種類を使い分けています
(それぞれにスペアがあるので、実際には4つ持っています)。
名前のとおり、日帰り取材や、1泊程度の短期取材に持って出るのが「日帰りセット」、
山に1週間こもるなど、ある程度の長期取材に持ち出すのが「お泊りセット」です。
「お泊りセット」と言っても、基本的には機材のスペアが追加になるだけで、
故障などのアクシデントがなければ、「日帰りセット」で十分に仕事ができます。

というわけで、「日帰りセット」の中身について、第1回は、カメラボディから。
日帰りセット
「日帰りセット」

<A-1、A-2>
ニコンD7000ボディが2台。
故障やトラブルの多い機種ですが、現在の主力機はこの一眼レフカメラです。
値段がこなれてきた3年ほど前に、6万円台で購入しました。今ではすでに絶版の機種です。
一緒に出かけた編集者のほうが高いカメラを持っていたりして、
気まずいことがあります(笑)。 もっとも、高価なカメラは「性能が良い」というだけで、
多くの場合「機能は不足」しており、
ぼくの仕事には使えない、というケースが少なくありません。
たとえば、ストロボが内蔵されていないカメラは、ぼくにとっては0点です。
1つでも欠けていると、そのカメラは0点、という「地雷項目」が3つあり、
以下の項目は、3つとも全部そろっていて、初めて購入の検討対象になります。
  (1)ストロボが内蔵されていること。
  (2)ストロボの同調速度が250分の1秒か、それより高速側であること。
  (3)ボディの背が低いこと。

10万円以下の一眼レフにもたいてい備わっている、ごく当たり前の機能ばかりだと思います。
ところが、ニコンの最高機種D4S(55万円)は、ひと目で(1)も(3)も備えていないのが
わかり、たった1秒で「スペック不足」と判断して、検討が終了してしまいます。
高ければよいというものではありません。
昆虫撮影において、ボディの背が低いことは重要な「スペック」であり、
1ミリ低くするごとに、価格が1万円ずつ上昇してもよいと思うほど、譲れない項目です。

地表面で暮らす昆虫の撮影では、「海抜ゼロメートル」の世界が描けなければいけません。
ゼロメートルどころか、「海抜ゼロセンチメートルの世界」も珍しくありません。
地面にいる、体高1センチのマダラバッタを、ごく普通に真横から撮るとします。
この時、レンズマウントの下部が5センチも下方に出っ張っているD4Sでは、
人間のポートレートを、数メートルもの高さから撮らなければいけないという、
とんでもないカメラアングルの制約を受けるのと同じことが起きます。
昆虫撮影において、カメラボディの背が低いことは、それだけで「スペック」なのです。

内蔵ストロボが必須アイテムで、なぜ外付のストロボではいけないか? については、
ストロボの使用方法をご紹介する回に、お話ししたいと思います。
ぼくの撮影は、ストロボの使用頻度が非常に高く、このブログにアップした昆虫写真で、
ストロボ不使用のものは、今までにたった1点のみです。
フィルム時代は99%がストロボ撮影で、デジタルになってから比率が減ったとはいえ、
それでも90%以上はストロボを使っていると思います。

<B>
カメラバッグの外にぶら下げているこのポーチには、オリンパスSTYLUS TG-3という、
完全防水のコンパクトカメラが入っています。「水没もOK」なので、こうして外に
ぶら下げておいても、雨や水しぶきが気になりません。「仰天機能」をいくつも搭載した
意欲的な多機能カメラですが、なぜか「広角端で接写ができない」という、
コンパクトカメラとしては致命的な欠点を持っており、「第2サブカメラ」の位置づけです。
広角端での接写というのは、「最低限、まずそれだけはできなければいけないだろう」、
という機能ではないかと思うのですが・・・。

<C>
このほか、カメラマンベストのポケット内に、カシオEX-ZR1000という
コンパクトカメラを入れています(挿入写真)。これが、「第1サブカメラ」です。
バリアングルモニターを搭載しているため、カメラアングルの自由度が高く、
また、「パスト連写」という、「時を遡って過去のできごとが撮れる」機能を備えており、
たとえばテントウムシが枝先から飛び立った瞬間にシャッターを押せば、
飛び立つ直前からの写真が連続でちゃんと撮れている、という夢のような機能です。
現在、昆虫撮影に向くコンパクトカメラとしては、カシオが最も優れていると思います。

この4台のカメラを持って、ぼくは近所の公園から、時には海外まで出かけています。
レンズとストロボについては、稿を改め、次回以降にお話ししたいと思います。
2014.09.20  古い水路
 昆虫写真家の大先輩である新開 孝さんのブログ「新ひむか昆虫記」で、
当ブログをご紹介いただきました。
http://www.shinkai.info/himuka_blog/2014/09/post-1967.html
「かつぎ棒」という謎の器具を、ぼくが肩にかついでいる姿がアップされており、
まるで、疲れたおじさんがツボ押し器具を背中に押し当てているような構図ですが(笑)、
あれは健康器具ではなく、照明機材です
(確かに、ああしていると気持ちが良いのですが・・・)。
当ブログの「カテゴリ」には、「機材など」という項目が用意してありますが、
まだ記事を何も配信していませんので、
近々、機材についての紹介記事をアップしたいと思います。

さて、この写真、いったい何に見えるでしょうか? 
焼け焦げたレンガ塀? それとも、ステンドグラスの失敗作?
ミヤマカワトンボ(♂)の翅脈(右後翅)

実は、この少しいびつな幾何学模様の正体は、「ミヤマカワトンボ」というトンボの
後ろばねの一部を拡大したものです。
トンボには珍しく色のついたはねを持ち、山地の渓流などに棲む、かなり大型のトンボです。
ミヤマカワトンボ(♂)
「ミヤマカワトンボ(♂)」

模様の本体は、はねの中を走る「翅脈(しみゃく)」と呼ばれる器官。
今ではもう、すっかり乾いて硬くなり、往時の面影はありませんが、
かつて、この翅脈の中を勢いよく液体が流れていた時期がありました。

それは、ミヤマカワトンボの幼虫(ヤゴ)が、
陸上で最後の脱皮(羽化)を終えて、はねを獲得した時のこと。
幼虫の体内でぎゅっと押さえつけられていたはねが、脱皮により「解放」されると、
それまで小さく縮こまっていたはねに体液が流れこみ、
その奔流が翅脈を駈けぬけて、はねをぐんぐん伸ばしていきます。
「翅脈」とは、過去の一時期、体液の奔流を通すための「水路」だったのです。

同じく大型のトンボである「ギンヤンマ」が、はねを伸ばす様子をご覧いただきましょう。
過去に「作品紹介」としてもアップした写真ですが、
はねが伸びていくにしたがって、胴体がみるみるスリムになっていくのがわかります。
はねを伸ばすギンヤンマ(4点合成)
「はねを伸ばすギンヤンマ(4点合成)」

胴の部分(腹部)が、体液のタンクとして機能しているのでしょう。
はねが完全に伸びきると、不要になった体液を回収し、
今度は何回かに分けて尻の先から捨てます(落ちる瞬間の雫が見えています)。

こうして、一度だけ開通した「水路」は、やがて水門が閉ざされると乾いて固まり、
今度は、傘の骨のように機能して、はねを支えます。
枝先に止まる赤トンボが目につくようになる季節ですが、真っ赤なおなかだけでなく、
はねの中を縦横に走る「翅脈」にも、ぜひ、目を向けてみてください。
ギンヤンマの翅脈
「ギンヤンマの翅脈」
 前回の続きです。
この森で見られる「謎の幼虫」は、オナガミズアオではないか、と書きました。
オオミズアオ型の幼虫で、しかしオオミズアオではなく、ハンノキ依存が強いことから、
オナガミズアオ以外に、有力な候補を見出せません。
オオミズアオ(上)とオナガミズアオ?(下)
「オオミズアオ(上)とオナガミズアオ?(下)」

体の各部の特徴を見ていきましょう。
まず、謎の幼虫がオオミズアオでないことは、頭部の「色」と「大きさ」でわかります。
オオミズアオならば、頭部は赤褐色で、体の大きさに見合う頭のサイズを持つはずです。
しかし、この幼虫の頭は緑色で、体の大きさとの比率において頭部だけが不釣合いに小さく、
これはオナガミズアオ幼虫の特徴に完全に一致します。
頭部の比較。オオミズアオ(左)とオナガミズアオ?(右)
「頭部の比較。オオミズアオ(左)とオナガミズアオ?(右)」

では、この幼虫がオナガミズアオであるとしたならば、本種のもう一つの特徴として、
背面にある毛束のつけ根が、毛束を取り巻くように、リング状に黒くなっているはずです。
典型的なオナガミズアオ幼虫の全身写真と、リング紋のアップをご覧いただきましょう。
典型的なオナガミズアオ幼虫の全身像と、毛束つけ根の黒いリング
「典型的なオナガミズアオ幼虫の全身像と、毛束つけ根の黒いリング」

「全身、斑点だらけ」といった、派手な印象ですね。
これより、ずっとおとなしいイメージにはなるものの、
オオミズアオの毛束にも一応、淡い赤褐色のリング紋が認められます。
ところが、今回の採集個体をはじめ、この森のハンノキで見つかる幼虫には、
リング紋自体が一切ないのです。
下の写真は毛束の部分を拡大したものですが、左がオオミズアオ、真ん中はオナガミズアオ、
そして右が、この森のハンノキで得られる幼虫です。
毛束つけ根のリング紋の比較
「毛束つけ根のリング紋の比較」

オオミズアオでさえ、地味なリングをはめているというのに、
このあっさりした、無紋の毛束を持つ幼虫は、いったい何者なのでしょうか。
幼虫図鑑等で、オナガミズアオの解説を見てみると、「オオミズアオとの識別点」として、
毛束つけ根の黒いリング紋の存在が挙げられています。
識別ポイントとして機能するということは、この黒いリング紋は、
「常に安定してオナガミズアオ幼虫に出現するもの」、と捉えてよいはずです。
こんなにツルンとした、無紋のオナガミズアオ幼虫が果たしているのでしょうか・・・?

今度こそ、飼育下で羽化させて確かめる覚悟を決めたものの、なにしろ羽化は翌春です。
「オナガミズアオに間違いありませんでした」、とご報告できるのは、
まだまだ遠い先の話になりそうです。
そして、予想通りにオナガミズアオであった場合、「毛束つけ根の黒いリング紋」は、
もはや幼虫同士の種間識別点としては機能しない、ということになるのかもしれません。
2014.09.15  夜の森へ
 夜の森へ出かけてきました。
ねらいは、「オオミズアオ」という蛾の幼虫を採集すること。
葉裏にいる幼虫さがしは、経験上、夜にライトをつけて梢を見上げると、
よい結果につながることが多いものです。
保護色というのは、上から来る太陽光のもとでその真価を発揮するようになっており、
下から強いライトで照らすという、いわば「想定外」の照明下では、反射率の関係で、
葉の緑と、幼虫の体の緑とが、明白に分かれて見えることが少なくありません。
昼間に太陽をバックに梢を見上げ、葉に浮かぶ幼虫のシルエットを探すというのは、
一見合理的なようで、葉が幾重にも重なり合っている場合は、案外むずかしいものです。

さて、今日は意外なものに出くわし、森の入り口で肝を冷やしました。
ライトに浮かび上がる白い影。人間のような姿をしています。
森の木立が風にきしむ音が聞こえると、人影は一瞬、走り出すようなしぐさを見せました。
怪しい人影
「怪しい人影」

真夜中の遭遇相手として、ヒトほど怖いものはありません。
こんな時間に森をうろうろしているのは、少なくとも善良な市民ではないはずです
(「おまえもな」と言われそうですが・・・)。
おそるおそる近寄ってみると、人影の正体はこんなものでした。
人影の正体
「人影の正体」

人騒がせな「オブジェ」に、多少動揺しつつ、
気を取り直して、真っ暗な森へ入っていきます。
まず、ハンノキで、オナガミズアオ(?)の幼虫を発見。オニグルミの梢には、
シャチホコガとモンホソバスズメ(?)の幼虫の姿が浮かび上がります。
そして・・・。
いました、いました。 同じオニグルミで、オオミズアオの、プリプリに育った幼虫を発見。
大型のイモムシの採集では、止まっている細枝から無理に引きはがすと、
幼虫の全力抵抗により脚を傷めてしまうことがあるので、細枝ごと伐り取るのが定石です。
最後に、ミズキの木でも、大小2匹のオオミズアオの幼虫を見つけ、夜の森を後にしました。
ライトに浮かび上がるオオミズアオの幼虫
「ライトに浮かび上がるオオミズアオの幼虫」

モンホソバスズメと、オナガミズアオに、「?」をつけたのには、理由があります。
オニグルミを食べるスズメガは3種おり、エゾスズメの幼虫だけは
その姿がよく知られていますが、残る2種「モンホソバスズメ」、「アジアホソバスズメ」
の写真は、ほとんど発表されていません。
今回の幼虫は、Web上で見られる「モンホソバスズメ」の幼虫写真によく似てはいますが、
確証が得られないので「?」付きとし、自分で育てて確認することにしました。

「オナガミズアオ」の「?」には、もう少し複雑な事情があります。
オナガミズアオの幼虫の写真は、数多く発表されており、珍しいものではありませんが、
この森で見られる幼虫は、典型的なオナガミズアオの姿をしてはいないのです。
オオミズアオでないことは確実なので、ハンノキ限定で見つかる以上、
オナガミズアオではないかと思っていますが、
よく知られたオナガミズアオの幼虫とは少しばかり様子が異なるのです。
まだ成虫まで育てたことはなく、今までずっと、モヤモヤした思いを引きずってきました。

この「謎の幼虫」については、稿を改め、次回もう一度お話をすることにします。
一夜の収穫
「一夜の収穫。上から、
オオミズアオ、オナガミズアオ(?)、モンホソバスズメ(?)、シャチホコガ」
 時事通信社さんがぼくを取材してくださり、本日より、「時事ドットコム」内の
「昆虫記者のなるほど探訪」( http://www.jiji.com/jc/konchu?p=professional0001 )に
記事がアップされました。

過去には、養老孟司さんや鳩山邦夫さんなど、誰もが知っている著名人も登場した
由緒あるコーナーに、こんなにマイナーな昆虫カメラマンが登場していいのか・・?
と申しわけない思いです。

記事を執筆された「昆虫記者」こと、天野和利さんは、
「時事通信社解説委員」という、近寄りがたい肩書をお持ちの一方、
虫好きとしても有名な方で、取材でぼくの撮影に同行してくださった姿からは、
お堅い感じは微塵も感じられませんでした。
おそらく、ぼくが見ているのは「戦士の休日」状態の、くつろいだお姿なのでしょう。
お互い「虫好き」というだけで、年齢も職業も肩書も関係なく、
あっという間に距離が縮まるというのは、いつもながら気分のよいものです。
取材というよりは、ちょっと歳のいった昆虫少年ふたりが野を行く、という感じでした。
(> 天野さん、取材なのに、緊張感なさすぎですみません・・・。)

「昆虫記者のなるほど探訪」の第一クール分はすでに書籍化されており、
ぼくの記事を含め、現在Web上で読めるのは、それ以降のものです。
先に述べた養老孟司さんや鳩山邦夫さんなどの記事は、書籍のほう、
『昆虫記者のなるほど探訪』(時事通信社)で読むことができ、
通信社の解説委員とは思えない、独特の「脱力系」の文体には、とても癒されます(笑)。
「人物ウォッチング」みたいな楽しみ方もできますので、
虫好きはもちろん、虫好きでない方にも、おすすめの1冊です。
 前回、ヒトスジシマカが腕に止まっている写真をアップしたら、
ある女性に、「森上さん、肌がすごく汚ない」と言われてしまいました。
思わず、「感想はそこかい!」とツッコミ返して? しまいましたが、
こうして、意外なところから、思いがけないタマが飛んでくる、というのが、
ブログをやるということなのでしょう(笑)。
ルーキーが厳しい洗礼を受けた気分ですが、気を取り直してフィールドへ出てきました。

近所の公園に、シナノキが数本、植えられています。
本来は山に生えている木で、この場所に最初からあったものではないでしょう。
この木で、「タケウチトゲアワフキ」という小さな虫が、ひっそりと代を重ねています。
セミに近い仲間で、成虫でも8ミリほどのちっぽけな虫ですが、
5月の連休ごろに現れる成虫は海外のツノゼミのような不思議な姿をしており、
知る人ぞ知る、人気昆虫です。
おそらくは、シナノキについて、どこかの山から運ばれてきたのでしょう。
この場所に定着した経緯の是非はさておき、
自宅近くでこの虫が観察できるというのは、ちょっと得をした気分です。
タケウチトゲアワフキ成虫(白バック)
「タケウチトゲアワフキ成虫(白バック)」

例年、5月に成虫を見たあとは、タケウチトゲアワフキのことは忘れているのですが、
幼虫期であるはずの今、どのように過ごしているかが気になり、様子を見に行ってきました。
シナノキの細枝に、まるで幾重にも指輪をはめたかのような、
不思議なリングがはまっています。これが幼虫の巣です。
タケウチトゲアワフキ幼虫の巣
「タケウチトゲアワフキ幼虫の巣」

枝を完全に一周しているわけではなく、裏から見ると、壺の口のような開口部があり、
時おり、こうして幼虫の排泄物が雫となって落ちてきます。
幼虫は巣内に身を潜めたまま、枝に口吻を突き刺して、汁を吸っているのです。
タケウチトゲアワフキ幼虫の排泄
「タケウチトゲアワフキ幼虫の排泄」

アワフキといえば、通常はふわふわした泡状の巣に幼虫が潜んでいるものですが、
タケウチトゲアワフキの巣はソリッドな「構築物」で、かなりイメージが異なります。

持ち帰った巣を、慎重に割ってみました。
ピキッ!という乾いた音がして、意外なほど簡単に亀裂が入りました。
中は液体で満たされており、動くものがいます。針の先に引っかけるようにして、
少しずつ、そうっとその体を引きずり出しました。
体長3ミリほどの幼虫が姿を現しました。なるほど、アワフキの幼虫らしい姿をしています。
タケウチトゲアワフキ幼虫(白バック)
「タケウチトゲアワフキ幼虫(白バック)」

顔が下につくのをいやがるように、脚をつっかい棒にする、この姿勢をくずしません。
ほかの幼虫も同様で、これはこの個体に限ったことではないと確かめましたが、
いったい、このポーズには、どんな意味があるのでしょうか?
巣の中にいれば歩く必要もないはずの幼虫が、
意外なほどしっかりした脚を持っている、というのも、思いがけない発見でした。
 ずいぶん多くの方にブログをご覧いただき、恐縮しております。
なにしろ、物故者かと思われていたほど存在感のない男なので、
頼りないブログ主に代わって、たくさんの方が宣伝してくださったようです。
ありがたいことで、心よりお礼を申し上げます。

さて、ここしばらく陽射しがなく、いつになく涼しい9月が続いていますが、
夏の太陽に、もうひと踏ん張りしてもらわないと、予定の撮影が終りません。
前日に「晴れ」の予報を確認して、行き先を決めていたのですが、
迎えた朝は、肌寒いほどの曇り空で、行き先の予報も「曇りときどき雨」。
晴れてこそ、渓流の上を飛ぶ2種類のトンボ撮影が目的だったのですが、
厚い雲が太陽をさえぎり、気温もここまで低いと、おそらく姿を見せないでしょう。

ブログを始めて最初のフィールド行きぐらい、リアルタイムで記事を配信したかったなあ・・・、
と思いながら外出を中止し、少しさかのぼって過去記事を。

フィールド撮影で、いつも鬱陶しいのがヤブカの襲来ですが、
実際には「ヤブカ」という名前の蚊はおらず、
ヤマトヤブカや、ヒトスジシマカなどを総称して、ヤブカと呼んでいます。
デング熱が世間を騒がせていますが、日本国内で媒介蚊となるのがヒトスジシマカで、
関東平野では、いちばん個体数の多い蚊と言ってよいでしょう。
背中の中央を走る「ひとすじ」の白いラインと、「縞」模様のある脚が特徴の「蚊」が
「ヒトスジ・シマ・カ」で、公園や墓地などに多い蚊です。
家の中には、あまり入ってきません。

デング熱騒動の少し前に、ヒトスジシマカの「吸血後 白バック写真」を撮るべく、
採集に行ってきました。採集といっても、「待っていれば向こうから来てくれる」
わけですから、こんなに楽な採集はありません。
蚊もぼくも、今日はお互いが相手を採集してやろうという、「相思相愛」の奇妙な関係です。
あっという間に野外での吸血シーンの撮影は済み、
スタジオに連れ帰った個体で、白バックの撮影も終えました。
ぼくの顔が写っているカットは、自撮りです。
「困り顔」をしてみてはいますが、2匹も同時に止まってくれて、
(これはおいしい展開だぞ・・・)と、内心ホクホクしており、演技でこんな顔をしてみています
(通報されないよう、ちゃんと木陰に隠れて一人芝居をしています)。

次のブログ更新まで、間が空きすぎると、
今度は「デング熱で倒れたか?」と思われかねないので、
次回は、あまり間をおかずにアップするよう努力したいと思います(笑)。

連れ立ってランチタイム(ヒトスジシマカの吸血)
「連れ立ってランチタイム(ヒトスジシマカの吸血)」

ヒトスジシマカの吸血
「ヒトスジシマカの吸血」

血を吸ったヒトスジシマカ(白バック)
「血を吸ったヒトスジシマカ(白バック)」
虫の呼び名事典-1191散歩で見つける
虫の呼び名事典

(2013/07/15)
森上 信夫

商品詳細を見る

「著者自身による著書紹介」の第1回です。
現時点では、この「散歩で見つける 虫の呼び名事典」が、ぼくの最新刊になります。
2013年夏に発売となり、多少は話題の本となって?
ラジオの番組などにも呼んでいただきました。

内容は、虫たちの「姿のプロフィール」として、
スタジオで撮った白バック写真と野外での生態写真を、
そこに「素性のプロフィール」として、その虫の名前の由来を添え、
よく見かける虫たちの「紳士録」を作ってみました、というコンセプトです。

昆虫愛好家向けというより、虫に興味を持ち始めた方、
これから虫に興味を持っていただきたい方を対象に書き下ろしましたので、
本文解説には、名前の由来に留まらず、その虫の興味深いエピソードを
できるだけたくさん入れてみました。各ページの余白には、
「一行キャッチ」とぼくが呼んでいる、ちょっとくだけた「欄外註」が、
「ぴあ」のはみだしのように(たとえが古すぎ?)、全種に入れてあります。

「呼び名事典」シリーズの1冊として、
「事典」という、やや堅い名前がついてはいるものの、
実態は「教養も身につく、写真入りの楽しい昆虫エッセイ」というスタンスで、
ぜひ、ご自宅のトイレなどに常備いただき、
折々に、どこからでも拾い読みしていただきたい本です。
この本を「待合室に置きました」、と言ってくださった歯医者さんがいます。
お~、それはいいポジションだな! と思わずニンマリしてしまいました。
床屋さんの待合室などにもおススメです。

↓「虫の呼び名事典」の書店貼りポスターです。
呼び名事典ポスター
2013年7月15日初刷、 同年10月20日2刷。 世界文化社


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。