みなさんは、アナフィラキシー・ショックという言葉をご存じでしょうか。
何らかの原因物質に人体が晒されたあと、時間をおいてその原因物質に
再び接触することで引き起こされる重いアレルギー反応です。
全身症状となり、短時間で死に至ることもあります。
秋になると新聞紙上をにぎわすスズメバチの刺傷事故が最も有名で、
その記事の中には、たいていこの言葉が出てくるはずです。
「ハチ刺されは2度目が危ない」という言葉を聞いたことがある方も
多いのではないでしょうか。

最近、このアナフィラキシー・ショックを、少し変わった形で体験しました。
ぼくはキイロスズメバチとクロスズメバチに1回ずつ刺されたことがあり、
アシナガバチ系の刺傷事故は、ちゃんと数えていませんが、
おそらく5~10回の間ぐらいであろうと思います。

初めてキイロスズメバチに刺されたのは、取材で行った旅先でのできごとで、
1996年の夏でしたが、その晩、高熱と蕁麻疹に苦しみ、熱は一晩で下がったものの、
蕁麻疹が完全に消えるまでには、2週間ほどかかったことを覚えています。
これは、次に刺されたらやばいかも…、と思ったので、病院で血液検査
(特異的IgE抗体検査)を受けましたが、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチともに
0.34以下という最低の数値。ダニなども一緒に調べてもらいましたが、
検査項目の全てでオール0.34以下となり、仲のよいお医者さんに、
「現代人でこんな人も珍しいかも(笑)」、といじられたのをよく覚えています。

では、そのしつこい蕁麻疹は何だったのかというと、「毒自体に負けたからではないか」
という診断で、アナフィラキシー・ショックというものは、毒への過剰反応みたいな
現象であり、今回の森上さんの症状は、毒自体に体が素直に屈服した結果でしょう、
という見立てでした。

「オール0.34以下」というのは、2度目の刺傷事故でもアナフィラキシー・ショックの
危険がほとんどないと言える数値で、ぼくはその後20年以上にわたって、
ハチを恐れることもなく、野外で虫たちとつきあってきたわけです。

平気でスズメバチと自撮りなどもしてきた
「平気でスズメバチと自撮りなどもしてきた」

ところが今年、意外な形でアナフィラキシー・ショックがぼくを襲いました。
刺傷事故ではなく、「昆虫食」による「経口での発症」だったのです。
これまでにも何度か昆虫食パーティーには出席したことがあり、スズメバチ類も10回以上
食べたことがありますが、過去には一度もショック症状が起きたことはありません。
ひとつの事例報告として、ここに記しておきたいと思います。

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パーティーが始まり、5メニュー食べた後に、アナフィラキシー・ショックが起きた。
食べたものは、カメムシ、バッタ、コオロギ、ツマアカスズメバチ蛹、
蜂の子ご飯(クロスズメバチの幼虫・蛹入り)である。
「蜂の子ご飯」以外の4つは外国産で、国産のスズメバチ類はこれまでに何度も
食べているが、ツマアカスズメバチは初めてだった。幼虫ではなく蛹であり、
毒針を持つ成虫の体が、おおむね完成している。諸症状は、出た順に、

(1)皮膚症状(全身の掻痒 … 数分で発症)。
(2)皮膚症状(皮膚の発赤・両手の急激なむくみ … 数分で発症)。
(3)呼吸器症状(のどに、食べたものの一部が貼りついているような違和感
   … 数分で発症)。
(4)呼吸器症状(気道狭窄? のどぼとけが大きく膨らんで、気道をふさぐような感じ
   … 10数分で発症)。
(5)呼吸器症状(呼吸困難 … 10数分で発症)。
(6)皮膚症状(全身から滝のような大汗 … 10数分で発症)
(7)消化器症状(嘔吐2回 … 10数分~20分ほどで発症。2回目は激しい)。

2度目の嘔吐の後、ほどなく楽になり、呼吸も正常に戻り、会話ができるようになった。
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こんな感じです。気道が急激にふさがって呼吸ができなくなったので、
これがアナフィラキシー・ショックというものだな、と感じました。
のどの狭窄感は強烈で、1度目はちゃんと吐くこともできなかった、という感じでした。
食物由来による「経口」での発症でもこれほどの症状が出るということは、
もし次にハチに刺されたりでもしたら、今度こそ本当にやばいかも…ということで、
23年ぶりの検査を受けにまた病院へ。

特異的IgE抗体検査の結果は、スズメバチ、ミツバチは過去の数値と同じ0.34以下で
変わりませんでしたが、今回はアシナガバチで陽性となり、0.39という数値が出ました。
今回、パーティーで食べてはいないものに、なぜか陽性反応が出たのです。
もっとも、アシナガバチはスズメバチ科であり、両者の毒に「抗原共通性」があることは
よく知られています。アシナガバチ刺傷の経験者がスズメバチに初めて刺された場合、
それは2度目の刺傷事故であると思った方がよい、ということですね。
こうしてみると、この23年間の何回かに及ぶアシナガバチの刺傷事故により
ぼくの体内にアシナガバチ抗体ができており、それがスズメバチを食べたことで
抗原抗体反応を起こしたということになるのでしょうか。

今回のショック症状は、そもそもアナフィラキシー・ショックという確定診断が
得られているわけではない(病院へ行った時はもう回復していたため)ので、
ぼくの報告によって、医師もアナフィラキシー・ショックと判断したわけであり、
経口での発症というのが、果たして世の中にどれぐらい症例があるのかも
ハッキリしません。

そんなわけで、事例報告という意味でも、誰かが調べた時に検索で出てくるように、
ここに記しておきたいと思いました。

アナフィラキシー補助治療剤・エピペン
「アナフィラキシー補助治療剤・エピペン」

今回処方してもらったアナフィラキシー補助治療剤・エピペンです。自己注射の薬ですね。
上が外箱、中が本体、いちばん下に写っているものは、自己注射のための練習用です。
この注射薬を常に携行すれば、山でハチに刺された時にも、自分で対応が可能になります。
もっとも、アナフィラキシーが起きた時のショック症状は進行が速く、
自己対応前に、それを不可能にするほどの容態になる可能性もあると聞きました。

今回ぼくは、楽しい雰囲気を壊さないようにパーティー会場を抜け出して、
トイレにこもっているうちに症状がどんどん進んだのですが、
いま考えてみれば、これは非常に危険な行動だったかもしれません。

ちなみに、今回のエピペンの自己負担額は3000円程度で、
どの医師でも処方できるわけではなく、資格をもった医師だけが処方できます。
院外処方箋を持参した薬局では、たいそう驚かれ、「これは常備していない薬である。
処方した記憶がない。入荷したら連絡するので、もう一度来てほしい」、
ということで出直しました。注射薬なので、郵送はできないのだそうですね。

さて、今年のブログアップは、本日で終了です。
すっかり月に1回程度の更新頻度になっていて、こんなことでいけないとは感じており、
来年はもう少しがんばりたいと思っておりますが、どうなりますことやら…
(がんばります、と断言できないヘタレな自分がなさけない)。

今年も気まぐれなブログ更新におつきあいいただいた皆様、ありがとうございました。
どうぞお健やかに、よいお年をお迎えください。
 あけましておめでとうございます。
引っ越しを済ませた後、年内に一度はブログを更新したいと思っていましたが、
結局、新年のご挨拶となってしまいました。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は、7月にフレーベル館より『虫・むし・オンステージ!』という本を
出すことができました。おかげさまで好評をいただき、
近く海外版も出ることが決まっております。

また、9月にはNHK-Eテレの「沼にハマってきいてみた」に
出演させていただきました。その一部をこちらで視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=I-QwKjXbMVw

2018年の新刊『虫・むし・オンステージ!』
「2018年の新刊 『虫・むし・オンステージ!』」

引っ越しのドタバタがあったおかげで、10月から全く写真を撮っていませんでしたが、
年内に一度はフィールドへ出たいと思い、12月19日に神奈川県下のフィールドへ
出かけてきました。埼玉県時代より、ときどき足を運んでいた場所です。

月光
「月光」

梢ごしの月光が足もとにうっすらと影を作る、風のない比較的暖かい晩でした。
この時期のお目当てといえばもちろん、冬にだけ現れる蛾・フユシャクですが、
どうも例年とは異なり、この時期に出るべきものがまだ出ていない、そんな印象でした。

クロオビフユナミシャク♀
「クロオビフユナミシャク♀」

比較的多かったフユシャクは、クロオビフユナミシャク。
このメスは、木製のベンチ上を歩いていました。
オスの姿もちらほら目にしましたが、ほぼ同時期に出るはずのチャバネフユエダシャクが
全く見られません。ここでは個体数が多いはずのナミスジフユナミシャクも、
気の早い出始めの個体がいてもよいはずですが、1匹も見つけられませんでした。

キマエキリガ
「キマエキリガ」

秋に出るこの蛾がまだいたことも、「冬が本格到来していない感」の演出に
ひと役買っていましたが、蛾の達人によれば、
神奈川県下のキマエキリガは、2008年に採集された1個体のみで、
ぼくが見たのは、神奈川県では10年ぶり2個体目であるとのこと。

う~ん、そんなに貴重な記録だったのか。
無知というのは怖いなと、自分が情けなくなりました。

お正月も荷解きの真っ最中で、まだスタジオセットが組めない状況ですが、
一刻も早く、最低限の仕事ができるようにセッティングしたいと思っています。
更新の遅い気まぐれなブログですが、今年もときどき覗いてみていただければ幸いです。

こちらでは除夜の鐘ではなく、港から0時に汽笛が聞こえてくるという話なので、
これからちょっと近所まで出かけてきます。
 55年間住んだ埼玉県を離れ、神奈川県に引っ越すことになりました。
慣れ親しんだフィールドを離れるのは非常につらいことですが、
なぜ神奈川県に移るのかというと、これは介護にかかわる問題で、
ぼくには選択の余地がなかったということです。

新しい住居の周辺は完全な市街地で、
これまでのように徒歩圏内に取材できる場所はありませんが、
今後は車で少し遠出をすることで解決するしかなさそうです。

引っ越しは夏前にはもう決まっていたので、
この夏は飼育中の虫の世話をしながら、こうしてベランダに出ればカエルの合唱が
聴こえてくるというのは、なんと贅沢なことだったのだろうと、
来年にはもう聴けなくなるBGMを特別な思いで噛みしめていました。
駅も田んぼも、徒歩5分圏内にあるというのは、
政令指定都市であるさいたま市の中では、なかなか得がたい場所でしたね。

海に近い場所に住むのは、生まれて初めての経験になります。
台風のあとは、飛ばされてきた海水による塩害で窓ガラスが曇るような場所ですが、
ベランダに置く鉢植えの樹木が大丈夫だろうかと、今から心配しています。
引っ越しに備えて、鉢植えは半分以下に減らしましたが、
それでもクヌギ、エノキ、ヨシ、キジョランなど、11鉢を新居に持っていきます。
コナラ、イチジク、ヤマザクラ、アワブキなどは、水を与えずに枯死させ、廃棄しました。
植物も生きものですから、自分の行為により次第に弱っていく姿を見るのは
非常につらいことでしたが、今のベランダよりもかなり狭くなるので、
全部を連れていくことはできません。

新しい土地への期待感ももちろんあり、南方系の虫の中には、
埼玉では見られないが、神奈川までは普通に見られる、という種も少なくありません。
温暖化により、思いがけない虫が海岸線伝いに北上してくることもあるでしょう。
沿海地ならではの新しい発見があるかもしれません。

写真は、今まで通っていたフィールドです。家のそばには、こういう風景がありました。
今後はなつかしい場所として、時々思い出すことになるのでしょう。
次のブログ更新は、12月15日より後に、神奈川県の新居からになると思います。

この風景ともお別れ
「この風景ともお別れ」
 テレビのオンエアを見てくださったみなさま、ありがとうございました。
番組の公式サイトへ、ぼくのインスタアカウントを訊ねてくださった方が
おられるそうですが、ぼくはインスタグラムはやっていないのです。すみません。
せめて、番組では使わなかったカットを1点、ここにアップしておきますね。

「オオスズメバチと自撮り」
「オオスズメバチと自撮り」

この自撮りは、右手に持ったカメラをこちらに向けて撮っています。
非常に攻撃的なハチなので、いつになく顔がこわばっていますが、
刺されると死ぬこともありますから、みなさんは決して真似をしないでくださいね。
ぼくはちゃんと血液検査をして、刺されてもアナフィラキシー・ショックを
起こす可能性がきわめて低いことを確認した上で撮っています。
実際、スズメバチには過去に2度刺されましたが、命に別状はありませんでした。
なぞの蕁麻疹が出て、2週間ほど消えませんでしたが…。

「松井愛莉さんと自撮り(許可を得てアップしています)」
「松井愛莉さんと自撮り(許可を得てアップしています)」

こちらも同じように顔がこわばっていますが、内心はうれしくて仕方がありません。
感激のあまり胸がいっぱいで息もできず、こんな顔になってしまったというわけです。
番組でやったように、この写真にフキダシでセリフを入れるとしたら、
「時間よ止まれ」で決まりですね。
こんな形のピースサインは世界のどこにもなく、指先からも緊張が伝わってきます(笑)。
松井愛莉さんは本当に素敵な方で、こんなうらぶれたオッサンとの記念写真にも、
気さくに応じていただけました。

「ぼくの自撮りカメラ」
「ぼくの自撮りカメラ」

 番組で使ったぼくの自撮りカメラをご紹介しておきましょう。
カメラはオリンパスのTG-3(現在はTG-5が最新機種で、さらに進化しています)。
アダプターを介して、魚眼コンバーター「魚露目8号」(有限会社フィット製)を
取りつけています。この組み合わせは、虫を撮る人の中ではすっかりスタンダードに
なっており、「魚露目8号」でネット検索すると、たくさんの作例画像が見られます。
同じキーワードに、「TG」と「アダプター」を加えると、アダプターの情報も得られます。

別の話題です。
時系列としては、放送よりもこちらが先となりますが、
「夏休み昆虫研究大賞」の審査が終りました。

「「夏休み昆虫研究大賞」の審査風景」
「「夏休み昆虫研究大賞」の審査風景」

応募作品の水準によっては、「大賞」が空席という年もありますが、
今年度は、大賞らしい大賞が出ました。
入賞者には、そろそろ通知が届くころだと思います。
来月の表彰式でお会いしましょう。

※ 引き続き『虫とツーショット』をよろしくお願いいたします。
『虫とツーショット』写真・文 森上信夫(文一総合出版)
『虫とツーショット』写真・文 森上信夫(文一総合出版)
 「5月発売予定」として当ブログでアナウンスしてきた新刊ですが、遅れております。
レイアウトを何度もやり直し、この試行錯誤に途方もない時間がかかっています。
発売が6月以降にずれこむことが確定しましたので、おわび申し上げます。

さて、カシオがデジカメ事業から撤退するというニュースが昨日ありました。
ぼくは、コンパクトカメラはほとんどカシオしか使っていないので、
これはけっこうな痛手です。今年はまだ一眼レフカメラを持ち出す機会がなく、
カシオのコンパクトカメラだけで写真を撮っているのですが、
今後はもう、こういうカメラは一切供給されないということになりますね。
6台も買っておいてよかったと思います。呆れるほどよく写ります。

ツゲノメイガ(一部拡大)
「ツゲノメイガ(一部拡大)」

実はこの夏に引越しをするつもりで、
かなり遠方まで不動産物件を探しに行っているのですが、その下見の際に見つけた
ツゲノメイガ。ちゃんとツゲに止まっている写真が撮れたのはラッキーでした。
ツゲといっても、これは園芸品種のツゲですね。カシオのEX-ZR100で撮影。
陽の当たる部分と当たらない部分のコントラストが激しすぎたので、
連写して合成し、カメラお任せで、見映えのよい写真に仕立ててもらいました。
一部拡大を併載しますが、申し分のない解像力です。
1万円台で買ったカメラとは思えません。

ナシミドリオオアブラムシ(一部拡大)
「ナシミドリオオアブラムシ(一部拡大)」

こちらは、シャリンバイにいたナシミドリオオアブラムシ。
いずれシャリンバイから名前の通りナシの木に引越しますが、
この時期のホスト植物はビワやシャリンバイです。美しいアブラムシですね。
はねがあるものを有翅虫(ゆうしちゅう)と呼びます。
同じくカシオのEX-ZR100で撮影。内蔵ストロボ使用。

シャリンバイにいたサツマキジラミ
「シャリンバイにいたサツマキジラミ」

この時期、シャリンバイの葉では、サツマキジラミもよく見られます。
3mmほどの虫ですが、EX-ZR100は1cmマクロ機能を備えているので、
トリミングはしているものの、こうしてしっかり写った画像がアップできます。

本の制作が難航し、そんな中で引越し先の物件も探さなければならないので、
撮影の時間がほとんど取れず、今年はまだ、撮影時間を全部合わせても
3時間に満たないといったところでしょうか。
通りすがりの、ほんの5分だけの道ばた撮影でした。