立教大学の野中健一教授にお誘いいただき、
昆虫食パーティー「ムシパ」に参加しました。
野中先生は、ご専門が「環境地理学」や「民族生物学」で、昆虫食文化研究の権威。
『虫はごちそう!』(小峰書店)や、『虫食む人々の暮らし』(NHKブックス)
などのベストセラーがあります。

ぼくは昆虫を食べることに、全く抵抗はありませんが、口に入れてしまうと
写真は撮れなくなるので(笑)、ふだんは食べる機会が全くありません。
透明の袋に入った昆虫食材がズラリと並ぶと、期待に胸が高まります。

さまざまな昆虫食材
「さまざまな昆虫食材」

メニューは、セミ、カメムシ、シロアリの女王、シロアリのワーカー(働きアリ)、
バッタ、地蜂(=クロスズメバチ)、カイコ(蛹)、モパニムシ(幼虫)など。
地蜂とカイコ以外は外国の昆虫で、「モパニムシ」というのは、
「モパニ」の葉を食べるという、南アフリカ産のヤママユガ科の蛾の幼虫だそうです。
昆虫本来の味を損なわないように、まずは薄味のクラッカーに載せた状態で、
シロアリやバッタなどをいただきます。

シロアリ(女王)、シロアリ(ワーカー)、バッタ
「左から、シロアリ(女王アリ)、シロアリ(働きアリ)、バッタ」

バッタは、「チャップリン」と呼ばれるメキシコ産の種類だそうで、
シロアリは、産地はうっかり聞きそびれてしまいましたが、
「働きアリより、女王アリの方がおいしい」とか。
イナゴの佃煮を食べた経験はあるので、かなり濃い味を想像していましたが、
どの虫も、意外なほどの薄味。途中からはクラッカー載せをやめて、
しっかりと味わえるように、虫だけをいただくことにしました。
シロアリは、確かに女王の方がずっとおいしい。味以前に、舌ざわりが全然ちがいます。
働きアリは「兵アリ」と呼ばれる大あごの発達したタイプで、
それでひときわ硬く、舌ざわりがよくないのでしょう。

セミ、カメムシ、カイコ(蛹)
「左から、セミ、カメムシ、カイコ(蛹)」

虫だけで味わってみた3種。
カイコの蛹だけは、これまでにも食べた経験があるのですが、
「ものすごくまずかった」という記憶しかありません。
「粉薬の詰まった袋」といった食感で、前に食べた時は、
噛んでいるとむせてしまいそうでした。そのくせ、袋(=外皮)の方は硬く、
いつまで噛んでいても口の中から消えてくれない、そんな印象を持っています。
今回の調理法では、そのあたりが多少改善されている・・・というお話でしたが、
う~ん、どうかな?(笑)。やはり、カイコの蛹はぼくの口には合わないようです。
「ナッツのような味がする」という評判のセミは、実際にそのとおりでビックリ。

宴もたけなわ
「宴もたけなわ」

野中先生の、おもしろくてためになるお話を聴きながら、
その場で昆虫を次々に味わってみられるというのは、なんとも贅沢なひとときです。
意外なことに、女性の参加者のほうが多く、中にはこんな方も。

野中先生と、小尾渚沙アナウンサー
「野中先生と、小尾渚沙アナウンサー」

野中先生の教え子にして、今は文化放送の人気アナウンサー、
小尾 渚沙(おび なぎさ)さんです。
アイドルアナとして、同期のアナウンサー2名と3人組のユニット「JOQガール」
を結成し、CDも出されています。
文化放送のコールサインはJOQRなので、「JOQガール」は、そこからの命名ですね。
虫など、絶対に食べそうにない方に見えますが(笑)、
しっかりと味わっていらっしゃいました。さすがは、野中ゼミ生。

地蜂と、地蜂ごはん
「地蜂と、地蜂ごはん」

地蜂(クロスズメバチ)のごはん。
やはり日本発のメニューは、ひときわおいしく感じられます。
噛んでいると、鼻から甘い香りが心地よく抜けていきますが、
ハチそのものの味が、ごはんを甘くしているそうです。
容器に入っているのが食材の状態。幼虫と蛹です。
蛹は、色づいて黒くなった羽化まぢかのものと、色づく前の、未熟なもの。
未熟な状態の方がやわらかく、おいしく感じられますが、
羽化まぢかのカリッとした感じも、これはこれで魅力的だと思います。

モパニムシのミネストローネ
「モパニムシのミネストローネ」

本日のメインディッシュ、「モパニムシのミネストローネ」。
イモムシの姿そのままのビジュアルなので、絶対にイヤだという人もいるでしょうね。
味は、正直に言えば、期待したほどおいしくはなかった(笑)。
イモムシのやわらかなイメージから想像したよりも、外皮が非常に硬く、
この食感が、味わいをかなり損なっているのではないかな・・・と思いました。
昆虫は外骨格ですから、外皮は硬くて当然なのですが、外皮を取り除くだけで
味が5割増しになるのでは? と思えるものがいくつかありました。

デザートなど
「デザートなど」

左から、シロアリのヌテラ(チョコレート風味の甘いスプレッド)、
エリサンの缶詰め、そして、食べものではありませんが、
カメムシと蘭から「におい成分」を抽出して作られたという、タイの香水。
これは文句なしに、よい香りがしました。

昆虫食材は高エネルギーで、少しの量で、満腹感が得られやすいのだそうです。
そうとは知らずに、虫だけでは足りないのでは・・・と思ったぼくは、
軽くおそばを食べてから参加したのですが、いらざる心配でした。
2013年には、国連食糧農業機関(FAO)が、「世界的な食糧問題の対策の一つとして
有益な食材になり得る」と、昆虫食を推奨する内容の報告書を発表し、
当時、各種メディアから「昆虫食が世界を救う!?」として大々的に報道されましたが、
日本でも本当に、昆虫があたりまえのように食卓に並ぶ時代が来るのかもしれませんね。

それにしても、楽しいパーティーでした。
野中先生、ありがとうございました!
 ぼくは 「おばあちゃん子」で育ったせいか、
年配の女性とお話をしていると、非常に穏やかな、満たされた思いになります。
血のつながったおばあちゃんは、ずいぶん前に死んでしまったけれど、
その後も、「慕うおばあちゃんがいる」という状況がとても好きです。
自分も50歳をすぎて、いい年こいたおっさんなのですが・・・。

そんな、慕っていたおばあちゃんが、亡くなってしまいました。
地元のフィールドに出かける際、
食事のためにかならず立ち寄っていた、老夫婦の経営するレストラン。
和・洋・中なんでも作ることができ、腕のよい料理人であるご主人と、
いつも太陽のような笑顔で迎えてくれたおばあちゃん。

昨年末から2回続けて姿が見えず、ご主人と見知らぬウエイターさんだけなので、
とても心配していました。 3回目となる今回も不在で、食事を終えて支払いの際に、
思い切って、「最近、おかみさんの姿が見えないけれど、お元気でしょうか?」
とご主人に訊ねてみました。
すると、「言おうかどうか、迷っていたのですが・・・」という言葉につづき、
「12月に亡くなりました」、というお返事が。

「入院しています」、というぐらいのお返事は覚悟していたけれど、
まさか、亡くなっていたとは・・・。
食事の合間に世間話をするぐらいで、お名前も知らないおばあちゃんでしたが、
1日の撮影を終えたあと、すっかりおなかをすかせて到着するぼくを、
あの満面の笑顔で迎えてくれることはもうないのだと思うと、悲しくて仕方がありません。
「二度と会えない人」が、またひとり増えてしまいました。

事前になんの兆候もなく、就寝中のまさかの急死だったそうで、亡くなったご本人も、
新しい年の春を迎えることができないとは、夢にも思わなかったでしょう。

春の光景
「春の光景」

今回はフィールドの帰りではなく、おばあちゃんの安否を確かめるためだけに
お店に寄ったわけですが、
覚悟していた以上の、最悪のニュースを聞くことになってしまいました。

親戚が亡くなれば、連絡が来るけれど、亡くなっても、連絡がもらえるような関係ではない。
そんな人のなかにも、自分にとって、かけがえのない人がいるものですね。

暗い話題なので、写真だけでも明るいものをアップしておきます。
そのレストランで食事した、3年前の春の日。
いつものフィールドで撮った写真。
 先週の金曜日のこと。
プラタナスの巨木の下を歩いていると、樹皮がぱらぱらっと落ちてきました。

落ちてきた樹皮
「落ちてきた樹皮」

風もないのに、いったい何ごと? と見上げれば、4メートルほどの高さに鳥の姿が。
幹の垂直面に止まるその姿勢から、一瞬、こんな都心にコゲラ(キツツキ)? 
と驚いたのですが、すぐに、ああムクドリか・・・と気づきました。

いったい何をしているのだろう? と見ていると、
樹皮を次々に剥いでは、その下にいる何かを食べているようです。
捕食対象にくちばしを垂直につきたてる 「ついばむ」スタイルではなく、
樹皮を剥いだあとの幹に頬をこすりつけるようにして、くちばしの側面を使い、
何かをこそげるようにして食べています。

このプラタナスには、暖かくなれば多数の「プラタナスグンバイ」が発生するのを
毎年のように見ており、今の時期は、樹皮下に集団を作って越冬しているはずです。

プラタナスグンバイ(白バック)
「プラタナスグンバイ」

プラタナスグンバイというのは、
日本では2001年に初めて見つかった北米原産の外来種で、セミに近いなかまですが、
ムクドリはおそらく、そのプラタナスグンバイの越冬集団を食べているのでは
ないかと思います。
食べているものが、ぼくの位置からはまったく見えないというのも判断の根拠で、
体長3ミリ強ほどの小さい虫ですから、この距離からは絶対に見えないはずです。
頬をこすりつけるようにして、くちばしの側面を使っていることも、
いかにも「微小な昆虫の集団をまとめて食べている」ように見えます。

で、その写真はどこ? と突っ込まれる展開ですが、
実はちょうどカメラを体から離したところで、うかつにもぼくは「丸腰」でした。
ダッシュでカメラのところまで引き返し、5分もかからずに現場に戻ったのですが、
すでにムクドリの姿はなし。 地上に散らばる樹皮だけの写真になってしまいました。
やはり、カメラは肌身離さず持っていないといけませんねえ・・・。
樹皮をひろい上げて、プラタナスグンバイの姿をさがしましたが、見つからず。
といっても、ぼくの過去の観察事例では、樹皮下で越冬するプラタナスグンバイは、
たいてい樹皮側ではなく、幹側に集団を作っているので、
こんなことも十分ありそうに思えます。

この日の夜は、業界の新年会。
立食パーティーの開始を待つ間、昆虫写真家で集まって談笑しているところを、
科学絵本の編集者のIさんに撮っていただきました。

新年会にて
「新年会にて」

右から、仙台の中瀬潤さん、宮崎の新開孝さん、ぼく、沖縄の湊和雄さん
こんな大御所に囲まれて、4コマ漫画のオチみたいなぼくは、
いちばん隅っこに座らないといけませんねえ。 湊さんすみません・・・。
2016.01.01  謹賀新年
 あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は、1年以上も前から会期が決まっていた
新刊発売記念の写真展にぶじ間に合って、2冊の本を出版することができました。
最新刊の、『調べてみよう 名前のひみつ 昆虫図鑑』(汐文社)が、
ちょうど10冊目の著書ということになります。
税別3200円と高い本ですが、お近くの図書館などにリクエストしていただければ幸いです。

著書紹介2016元旦
「2015年の新刊(上段中央の2冊)」

もう一つの新刊 『虫とツーショット ― 自撮りにチャレンジ! 虫といっしょ』
(文一総合出版 ・ 税別1200円)は、
新聞や雑誌、ネットメディアなどに、数多くの書評や取材記事を掲載していただきました。
現在もネット上でご覧いただけるものとしては、デイリーポータルさんの記事や、
メレ山メレ子さんによる書評などがありますので、ぜひお読みいただければ幸いです。

「デイリーポータルZ」 (2015年8月12日記事)
http://portal.nifty.com/kiji/150812194292_1.htm

「メレンゲが腐るほど恋したい」 (2015年6月13日記事)
http://mereco.hatenadiary.com/entry/20150613/1434176503

現在、また新しい本の準備を進めています。
完成間近となりましたら、当ブログにてご案内させていただきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
 先週の金曜日(11日)、関東では、猛烈な強風が吹き荒れました。
台風が通りすぎた直後のような生あたたかい風が流れ込み、
観測史上、12月の最高気温を更新したところも多かったようです。

黄色いじゅうたん(東京都豊島区にて)
「黄色いじゅうたん(東京都豊島区にて)」

温暖化の影響なのか、年々、落葉が遅くなっているように感じるイチョウも、
強風でいっせいに葉を落としました。

紅葉のアクセント
「紅葉のアクセント」

一面に広がる黄色いじゅうたんの中に、こんな紅葉のアクセントも。

季節はずれの陽気に、越冬場所から誘い出されてきた虫でもいないかと思って
探してみましたが、都心にいたせいか、何も収穫はありませんでした。

夜には、オリンパス・プロユーザー忘年会に出席。
受付には長蛇の列ができており、いったい何百人が訪れたのでしょうか。

オリンパス忘年会にて(黒柳昌樹さん撮影)
「オリンパス忘年会にて(黒柳昌樹さん撮影)」

海野和男さん尾園 暁さんと一緒に。
自撮りしようか・・・と一瞬思いましたが、3人一緒はさすがに無理で、
黒柳昌樹さんに撮っていただきました。

現在、オリンパスのカメラに続々と搭載されつつある「被写界深度合成」機能は、
革命的な技術と言ってよく、最も恩恵を受けるのが昆虫写真家かもしれません。
先に使い始めているみなさんからの情報は大変ありがたいもので、
ぼくも、あまり遅れを取らないようにしなければならないと思いました。
白バックの昆虫撮影では特に、ぼくがやっているような従来の手法による作品は、
2~3年以内に市場価値を失ってしまうかもしれません。
昼と夜とで、異質の強風を肌に感じた1日でした。