ニコンプラザ新宿で、今森光彦さんの写真展「オーレリアンの庭」が始まりました。

「今森光彦写真展:オーレリアンの庭」
「今森光彦写真展:オーレリアンの庭」

オーレリアンとは、「チョウを愛する人」という意味です。
10月29日には写真展のオープニングパーティーがあり、参加させていただきました。

「オープニングパーティー」
「オープニングパーティー」

すばらしい写真の数々に、時間が経つのも忘れて、しばし見入ってしまいました。
会期は11月18日(月)までですので、お近くの方は、ぜひご覧ください。
毎日10:30~18:30で、最終日は15:00で閉館ということです(日曜日は休館)。

 さて、少し前にこのブログでもご紹介した日本昆虫協会による「夏休み昆虫研究大賞」
の審査会が終りました。

「審査会場」
「審査会場」

小・中学生しか応募できませんが、研究論文のレベルは、相変わらず呆れるほど高く、
「小・中学生にしてはすばらしい」というエクスキューズなど不要で、
「大人と対等に勝負できる」ものがいくつもありました。
実に頼もしいというか、末恐ろしいというか…。

正規の賞数には限りがあるので、本来ならばもっと高位の賞でも
よいのでは、というお二人に、審査員特別賞として、森上賞を出しました。
表彰式でお会いできるのが楽しみです。

「審査員特別賞」
「審査員特別賞」

ただし、これも例年のことですが、写真の応募作品は低調でした。
イマドキの小中学生が撮る昆虫写真がいかにすばらしいかを、ほかで見て知っているので、
みんな、ほかのコンテストに応募してしまうのかな?

 10月24日に、霞が関の官庁街を歩いていたら、オオムラサキツツジの葉に、
ルリチュウレンジの産卵痕があるのを見つけました。

「ルリチュウレンジの産卵痕」
「ルリチュウレンジの産卵痕」

すぐ近くに成虫もいました。こんなハチです。

「ルリチュウレンジ」
「ルリチュウレンジ」

オオムラサキツツジは常緑樹ですから、このまま葉の組織内で卵越冬するのだろうと
思っていましたが、幼虫が孵化していてビックリ。

「ルリチュウレンジの産卵痕と1齢幼虫」
「ルリチュウレンジの産卵痕と1齢幼虫」

調べてみると、どうやら幼虫は冬が来る前に育ち切り、浅い地中で繭を紡ぎ、
前蛹(ぜんよう:幼虫の姿だが、さなぎになる準備のために体が縮んでしまって
もう身動きできない状態)の状態で越冬するようですね。
ルリチュウレンジは身近な虫ですが、生活環を十分理解していませんでした。
漢字では「瑠璃鐫花娘子蜂」と書きますが、この名前の由来には諸説あるようです。
 著書を交換させていただいているみなさんの新刊を紹介したいと思います。
まずは、今の時期にぴったりのハンディな図鑑、税所 康正さんの『セミ ハンドブック』。

「『セミ ハンドブック』税所 康正著(文一総合出版)」
「『セミ ハンドブック』税所 康正著(文一総合出版)」

いま大人気の文一総合出版のハンドブックシリーズの1冊として刊行されました。
国産のほとんどのセミが掲載され、各種が見開き左右を使って
美しい白バック写真と生態写真で構成されています。
ぬけがらの検索表もあり、QRコードで鳴き声まで聞けるという至れり尽くせりの内容で、
昨年話題になった巨大な外来ゼミ「タケオオツクツク」も、しっかり収録されています。
コラムも充実しており、ここから夏休みの自由研究のヒントが得られるかもしれません。
税所さんのサイト「セミの家」はこちら(ぼくのブログの、リンク先一覧からも入れます)。
http://zikade.world.coocan.jp/Zikade.html

次に、ぼくと『昆虫の食草・食樹ハンドブック』をかつて共著で一緒に作った
林 将之さんの新刊『葉っぱはなぜこんな形なのか?』。

「『葉っぱはなぜこんな形なのか?』林 将之著(講談社)」
「『葉っぱはなぜこんな形なのか?』林 将之著(講談社)」

科学の本というより、とても楽しく読めるエッセイ集なのですが、
奥深いテーマがいくつか扱われており、読み進めながら、
いろいろなことを考えさせられます。
ぼくは読み始めてすぐに、あとでもう一度読みたい部分に線を引きながら
読むことになってしまい、その部分だけを何度も読み返しています。
生きものや自然に興味をもつ人なら、どのレベルの人にも響くところが必ずあり、
ぼくは自然と向き合うスタンスを、少々揺さぶられることになりました。
50年以上生きてきて、自然と向き合うスタンスを今さら揺さぶられるというのは
よくよくのことですが、この本には、それだけのパワーがありました。
将来、自然に関わる仕事をしたいと思っている若い人には、
ぜひ読んでいただきたいと思います。
林さんのサイト「このきなんのき」はこちら
(ぼくのブログのリンク先一覧からも入れます)。
http://www.ne.jp/asahi/blue/woods/

そして、いちばん最近読んだ本がこちら。
川邊 透さんと前畑 真実さんの『癒しの虫たち』です。

「『癒しの虫たち』川邊 透/前畑 真実著(リピックブック)」
「『癒しの虫たち』川邊 透/前畑 真実著(リピックブック)」

「虫セラピー」。 そんな言葉があるかどうか知りませんが、
タイトルどおり、虫の癒し効果にどっぷり浸れる本。
「虫が大キライ」という人の固定観念を根本的に変えることのできる本だと思います。
虫を、よくぞここまで愛らしく写せたなあ!と、ぼくは心から感動してしまいました。
世間では、虫の本といえば科学の本という扱いですが、
そういうステロタイプなカテゴリー分けを、完全に超越してしまった本と言えそうです。
科学の視点で編まれた本では、なかなか虫ギライを「治す」ことまではできませんが、
この本の「癒し」パワーなら、「キライ」を一気に「好き」にまで
引っ張っていくことができそうな気がします。
虫をここまで「リアルゆるキャラ」として描き切った視点と構成には大拍手です。
ぼく自身も、虫ギライを治す処方箋としての本の制作には使命感を感じており、
これまでに『虫のくる宿』、『虫とツーショット』、『虫・むし・オンステージ!』という、
『癒しの虫たち』と同じ方向性の本を出してきましたが、
この路線の同志が全然いないことに、寂しさと無力感も感じてきました。
そんなわけで、著者とそのご家族以外で、この本の出版を一番喜んでいるのは
ぼくかもしれません(笑)。 
川邊さんのサイト「昆虫エクスプローラ」はこちら
(ぼくのブログの、リンク先一覧からも入れます)。
https://www.insects.jp/

ぼく自身の本のお知らせが何もないのは寂しいので、月刊絵本のご紹介を。

「『ワンダーしぜんランド8月号「かぶとむしとくわがたむし」』(世界文化社)」
「『ワンダーしぜんランド8月号「かぶとむしとくわがたむし」』(世界文化社)」

幼稚園向けの直販誌『ワンダーしぜんランド』8月号の写真を担当しました。
書店では入手できませんが、もし機会があれば、ご覧いただければうれしいです。
 新刊の紹介です。
といっても、今回はぼくの本ではなく、年に何回かぼくが撮影助手をお願いしている
いのうえ けいこさんの初の著書です。

『キモカワ! イモムシ超百科』
『キモカワ! イモムシ超百科』(ポプラ社)961円(税込)

やぎ まきこさんとの共著で、192ページをイモムシ・ケムシで埋め尽くすという
たっぷりの内容で、これで千円でおつりがくるのですから、
大変お買い得な1冊だと思います。

ぼくも写真を提供している関係で、制作中に何度か原稿を拝見していましたが、
進行とともに、文章は非常にすばらしいものになったと思います。
共著というのは相方と文体が異なりすぎると読みにくいものになりますが、
仲良しのお二人の文章は見事なシンクロぶりを発揮しており、
二人の著者のどちらが書いたページか、もう今となっては聞かないとわかりません。
随所に、著者陣のイモムシへの熱い思いも織り込まれ、
これが心地よいスパイスとなって、文章に血が通っている感じも伝わってきます。

対象年齢は、小学校中学年~高学年ということですが、
過剰に子供を意識して変に猫なで声になることもなく、
大人も十分に楽しめる、スッキリと読みやすい本に仕上がっています。
女性視点の虫の本はまだそう多くはないので、虫ガールや、虫ガール予備軍のかたは、
「そうそう」「あるある!」と共感できる部分も多いかもしれません。
書店で見かけたら、ぜひ手に取って何ページか読んでみていただければと思います。

…で、ひとの本の告知はともかく、自分の方はどうなの?
と正しいツッコミを受けそうですが、作家さん待ちという出版企画が1本あり、
ぼくは今回、写真家専従という役割分担で共著を出すことになっていますが、
ちょっと壁に当たって進行がストップしています。うまくここを抜ければ、
その後は比較的スムーズに本になるのではないかと思いますが。

もうひとつ、昨年フレーベル館から出版した『虫・むし・オンステージ!』
中国語版が出ます。この本は、ショートコントあり、ラップバトルあり、
グループアイドルのセンターポジション争いあり、と、虫たちの自然な動きを
ステージ上のライブパフォーマンスに見立てた昆虫エンターテインメントですが、
あのセリフ回しを外国の言葉に訳すのは、なかなか大変だろうなあ…と思います。
おそらく日本でも入手できるようになるはずですので、どなたか中国語が堪能な方に
ご覧いただいて、ぜひ感想をお聞きしたいものです。
 台風21号で大荒れだった日曜日、日本昆虫協会による「夏休み昆虫研究大賞」
の審査にゲスト審査員として参加してきました。小中学生による応募で、
昆虫を素材にした(1)研究論文、(2)標本、(3)写真、(4)美術、(5)文学 
という5つのジャンルで賞を競うものです。全ジャンルの中から、大賞が1点だけ
選ばれますが、今年は大賞にふさわしい作品が5点もある水準の高さで、
なかなか大賞が決まりませんでした。ぼくは、お一人の方(小学生)へ
審査員特別賞を出しましたので、来月の表彰式でお会いできるのが楽しみです。

 さて、樹木図鑑作家の林 将之さんから、
すばらしい新刊を送っていただきましたので、ご紹介したいと思います。
『秋の樹木図鑑 (紅葉・実・どんぐりで見分ける400種)』(廣済堂出版)。

『秋の樹木図鑑 (紅葉・実・どんぐりで見分ける400種)』
『秋の樹木図鑑 (紅葉・実・どんぐりで見分ける400種)』

相変わらずの美しいスキャン画像に加えて、名前のわからない樹種を調べる際に、
目的のページへ誘導するさまざまな工夫がなされており、「葉形インデックス」や
「紅葉・黄葉一覧表」、「果実・どんぐり・松かさ一覧表」のいずれかを使うことで、
ものによっては数秒でお目当ての樹種にたどりつけてしまいます。
「紅葉・黄葉一覧表」などは、眺めているだけでもしあわせな気持ちになれる、
非常に美しいページです。

ぼくはプラタナス類にはかなり詳しいので、プラタナスのページがあれば、
そこを見ることで、植物図鑑の評価がしやすいのですが、
・身近に見られる「プラタナス類」には3種類あること。
 その出自や原産地についての解説。
・その3種類の見分け方を、葉と樹皮、果実(集合果)のつき方の
 それぞれのパーツで解説していること。
・プラタナスの和訳=スズカケノキではなく、
 この呼称がグループの総称であるとハッキリ書かれていること。
・「プラタナス類」は街路樹として、かつては第3位の人気を誇っていたが、
 最近は第10位まで順位を下げていること。
などなど、文句のつけようのない情報量を誇っています(ぼくも、順位を
下げているのは知っていましたが、10位まで落ちているとは知らなかった)。

また、本書ならではの情報として、すべての学名にカタカナでルビが振ってある
というきめ細かな配慮がなされている点が挙げられます。ラテン語の学名は、
ローマ字読みに近いものではあるのですが、大学で分類学に触れる機会のなかった
ぼくのような文系学部出身者は、(本当にこの読みで合ってるか?)と
おそるおそる口にしているという現状がありますが、
こういう本が虫の図鑑でも存在すれば、ラテン語のこの綴りはこう読むのだ、
という反復訓練のまたとない教科書になりますね。
この学名のルビだけでも、植物をこれから学びたい人にとっては、
本書を入手する価値があると思います。

林 将之さんの才能は非常にマルチなもので、
この本には「樹木図鑑作家」と書かれているのでその通りご紹介しましたが、
学者であり、写真家であり、また誌面デザイナーでもあります。
誌面デザインまで自分でやる人は非常に珍しいと思いますが、
「一応できます」というレベルではなく、専業の誌面デザイナーと比較しても
相当に上手いほうで、この点は心から敬服しています。

2007年に、林さんと共著で、
『昆虫の食草・食樹ハンドブック』(文一総合出版)を出版しましたが、
この本のデザインも、表紙から中身まで、すべて林さんの手によるものです。
ちょうど10年前、本書の印刷に立ち会ったあと、当時印刷会社のあった
戸田公園駅の駅前で、二人で打ち上げをしたのをなつかしく思い出します。

…というわけで、『昆虫の食草・食樹ハンドブック』のほうも、
引きつづきどうぞよろしくお願いいたします(笑)。

『昆虫の食草・食樹ハンドブック』(文一総合出版)森上信夫・林 将之著
『昆虫の食草・食樹ハンドブック』(文一総合出版)森上信夫・林 将之著
 暖かくなり、新しい昆虫の本も続々と発売されていますが、
昆虫写真家の鈴木知之さんから、新刊「新カミキリムシハンドブック」(文一総合出版)
を送っていただきましたので、ご紹介いたします。

「新カミキリムシハンドブック」(文一総合出版)
「新カミキリムシハンドブック」(文一総合出版)

鈴木さんには、2009年発売の「日本のカミキリムシハンドブック」(文一総合出版)
という著書がありますが、今回の本は、その増補改訂版という位置づけで、
新たに40種が追加されたというだけでなく、それぞれの生態写真がワイドになり、
また、アイコンに頼らずに言葉で表示されるようになったことで、
各情報が格段に見やすくなったと思います。

増補改訂版として出版される本の中には、改訂前の本を持っていれば
新たに買う必要がない、というものもありますが、
今回の本は、躊躇なく「買い」であるとお薦めできます。
まず、何と言っても生態写真が見ちがえるほど大きくなり、
絵合わせでも同定できるようになったこと。
たとえば、ヒメヒゲナガカミキリで新旧のページを比較すると、
誌面上の体長ベースでおよそ2.5倍(!)という大きさ。
並べてみると、新版の見やすさは圧倒的です。

カミキリムシというのは、スペース食いの長い触角のせいで、
触角を切らないようにしながら、全身像を見せようとすると、
誌面上で胴体が相対的に小さくなってしまうというジレンマがあります。
それは、ある程度は覚悟しなければならないことですが、
増ページとともに誌面に余裕ができたことで、物理的にもスペースが生まれ、
また、鈴木さんも旧版と写真を差し替えることで、より体を大きく見せられるような
絵柄の写真を選んで、ページをリニューアルされたことがわかります。
写真の差し替えというのは、増補改訂版としては最も手厚い措置で、
新しい本を作るのと同じ手間がかかりますから、
著者のこの本にかける思いが伝わってきます。

また、旧版では、キイロトラカミキリなど、
収録されているべき普通種の一部が掲載されていないという不満もありましたが、
今回はそのあたりが、くまなく拾われていると感じます。
「プラス40種」を厳選されたことが、非常によくわかるセレクションだと思います。

網羅性、それぞれの種の情報量、写真の見やすさ、いずれも突っ込みどころがなく、
野外で使える大きさのカミキリムシ図鑑としては、
これぞ決定版、と言えるものになったのではないでしょうか。
彼の「朽ち木にあつまる虫ハンドブック」、「虫の卵ハンドブック」とともに、
長く活用できて、楽しみながら知識のつく本に仕上がっていると思いました。

話は変わり、ぼく自身の本ですが、
1月から取り組んできた新刊の制作も、今週のうちにぼくの手を離れ、
あとの工程は印刷所に託されます。
発売は5月末を予定していますので、来月になりましたら、
書名や表紙画像などをご紹介できると思います。
「新カミキリムシハンドブック」(税別1600円)を
購入されたあとでも大丈夫(?)なように、税別1200円で発売いたしますので、
鈴木さんの本ともども、どうぞよろしくお願いいたします。