ずいぶん長く、ブログ更新をサボってしまいました。
ご心配くださった方には申しわけありません。元気にしております。

さて、これから4月いっぱいはフィールドへ出られそうになく、
あと1ヶ月は家にこもる仕事に専念するので、
3月20日に近場のフィールドを駆け足で回ってきました。
「春の確認」レベルの、ごく短いフィールド滞在時間です。

春のフィールド
「春のフィールド」

例年であれば、ミヤマセセリがいるはずの場所ですが、

生い茂ったササ
「生い茂ったササ」

そのポイントにはササが生い茂り、ミヤマセセリの飛翔空間がすっかり失われていました。

オオカマキリの卵嚢
「オオカマキリの卵嚢」

オオカマキリが孵化するのはゴールデンウイーク頃ですから、まだ当分先です。
今回は風景も含め、オリンパスの12-100ミリ(35ミリ換算24-200ミリ相当)の
ズームレンズだけでほとんどの写真を撮りました。
このオオカマキリの卵嚢写真のような広角接写が、
レンズ交換せずにズーミングでできるというのは、ストレスがなくて実によいものです。

日向ぼっこするテングチョウ
「日向ぼっこするテングチョウ」

テングチョウの姿があちこちで見られ、

キブシで吸蜜するテングチョウ
「キブシで吸蜜するテングチョウ」

キブシで吸蜜する姿も見られました。

キブシで吸蜜するテングチョウ(アップ)
「キブシで吸蜜するテングチョウ(アップ)」

このアップの写真だけ、オリンパスの40-150ミリ(35ミリ換算80-300ミリ相当)
のズームレンズに1.4倍のテレコンバーターを装着して撮っています。

菜の花畑には、

アシブトハナアブ
「アシブトハナアブ」

キンケハラナガツチバチ
「キンケハラナガツチバチ」

アブやハチなど、常連のお客さんが。

春爛漫
「春の里山風景」

春の里山で、ほんの束の間のフィールド撮影を楽しみました。

※前回お知らせした読売KODOMO新聞の記事ですが、コロナ対策で小学校が
  休校になっているため、なかなか外に遊びにも行けない子供たちのために、
  読売新聞社さんがしばらくの間、無料公開しています。
  文章は、記者さんが各写真家から「聞き書き」という形で記事にされています。
  ぼくの掲載号はこちらから見られます↓。
  https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200220_kodomopageimage.pdf
 1月25日に、総勢9名で神奈川県内の自然公園へフユシャク(冬に発生する蛾の
グループの総称。メスははねが退化しており飛べない)の観察に行ってきました。
『テントウムシハンドブック』の阪本優介さん、『日本のトンボ』の尾園暁さん、
『手すりの虫観察ガイド』のとよさきかんじさんなど、今をときめく人気作家たちと
ご一緒させていただき、いつもよりテンションが上がります。

フユシャク観察会では恒例ですが、日中にいったん夜のコースを巡回し、
その後、早めの晩ごはんを食べに行って、日が暮れるタイミングで現場に戻ってきます。
日中にも思わぬ拾い物があるかもしれないし、コース下見の意味もあって、
夜間の再巡回を、いっそう安全・確実なものとします。

手すりに止まるナミスジフユナミシャクのオス
「手すりに止まるナミスジフユナミシャクのオス」

『手すりの虫観察ガイド』のとよさきさんへの表敬訪問なのか、
さっそく、ナミスジフユナミシャクのオスが手すりでお出迎え。

その後も、本来は夜行性のフユシャクの姿をチラホラ見かけましたが、
日中はフユシャク以外の虫を見つけるのも楽しみのひとつで、
マルカメムシの越冬集団や、ムツボシテントウ、ハロルドヒメコクヌスト、
マダラマルハヒロズコガの幼虫などが見つかりました。

ハロルドヒメコクヌスト
「ハロルドヒメコクヌスト」

それにしても、「ハロルドヒメコクヌスト」って、すごい名前の虫ですね。
ハイカラな前半と、純・和風の後半(穀盗人)が、あまりにもちぐはぐ過ぎます。
命名者は「ジョン万次郎」みたいにしたかったんだろうか。
名前の後半で「盗人」とディスらなくても…という気の毒な名前。
こんな地味な虫を同定してくれた阪本さんに感謝です。

これだけの人数だと、色々な虫が見つかる
「これだけの人数だと、色々な虫が見つかる」

9人の虫屋の目で探すと、色々な虫が次々に見つかります。
当初の雨予報も、超自然的な? 虫屋パワーで撃退してしまった感じでした。

夜間の第二部が本番
「夜間の第二部が本番」

ファミレスで腹ごしらえをし、しっかり体も温めた上で、夜の部がスタートしました。

ナミスジフユナミシャクのオス
「ナミスジフユナミシャクのオス」

日中は、はねを畳んで休んでいたナミスジフユナミシャクも、いつでも飛び立てる態勢。

シロフフユエダシャクの交尾ペア
「シロフフユエダシャクの交尾ペア」

多くのフユシャクは、撮影のためにライトを点けるとそれまで立てていたはねを畳み、
交尾中のメスを覆い隠してしまいますが、たまにはこんな個体もいて助かります。
ほかのメンバーがすでに撮影を終えた後も、こうしてはねを立てたままの交尾態勢で
ぼくを待ち、サービスしてくれました。

ウスバフユシャクの交尾ペア
「ウスバフユシャクの交尾ペア」

上で述べた「交尾中のメスを覆い隠す」というのは、こういうことですね。
しかしこのケースは、止まっていた場所とオスの止まり角度がよかったため、
交尾態であることがわかる写真となりました。

クモに襲われるウスバフユシャクのオス(1)
「クモに襲われるウスバフユシャクのオス(1)」

立て看板の上で、クモに襲われるウスバフユシャクのオス。
Tさんが見つけてくれましたが、ちょうど襲いかかる決定的な場面をご覧になったとのこと。
クモの種名は、目下調査中です。

クモに襲われるウスバフユシャクのオス(2)
「クモに襲われるウスバフユシャクのオス(2)」

「冬に発生するフユシャクは、クモやカマキリなどが活動できない季節に活動することで、
天敵の捕食圧から逃れています」という定説を、これまで人に話したり本に書いたりして
きましたが、活動中の天敵も少ないながら存在する、ということですね。
公園のトイレで、クモの網にかかっていたフユシャクも見ました。

シモフリトゲエダシャクのメス
「シモフリトゲエダシャクのメス」

今回のハイライトはこれ。
大型のフユシャクで、あのチャバネフユエダシャクのメスより、
さらにひとまわり大きい感じで、ただ者ではないと思わせる圧倒的な存在感があります。
チャバネフユエダシャクのメス(12月がピークで、今の時期はもう終了間際です)は、
その巨体と白黒まだらの独特な模様から、「ホルスタイン」というあだ名で呼ばれており、
日本のフユシャク界の大スターですが、このシモフリトゲエダシャクのメスも、
女王のような品格を感じさせる上質の「毛皮」をまとっており、
何かよいあだ名を持てたなら、ホルスタインなみの人気が出るのでは? と思いました。

1月の夜の森は、さすがに寒かったけれど、すばらしい1日となりました。
ご一緒してくださったみなさん、ありがとうございました!
 年末最後のブログ記事で、食用昆虫による経口でのアナフィラキシー・ショックに
ついて書きましたが、昨年6月に翻訳が出た『昆虫食と文明』(築地書館)によると、
食用のカイコの蛹由来のアナフィラキシー・ショックが、中国では毎年1000件以上出ている
そうですね。中国では、人々がカイコに触れる機会が多い(=アレルゲンへの暴露量が多い)
からではないかと書かれていました。昆虫食について書かれた本はたくさんありますが、
こうした危険性についての記述がある本は非常に珍しく、昆虫食の有用性についての記述量と
比較して、マイナスの情報量が著しくバランスを欠いた状態であると言えるかもしれません。
逆に、「事例は多いが、研究は進んでいない」のであれば、若い研究者にとっては、
まさに論文を量産できる分野なのではないでしょうか。

 さて、ここしばらく撮影に出ていないので、昨シーズンのできごとをふり返ってみたいと
思います。おもしろい行動や不思議な現象、3点をご紹介しましょう。

まず1つ目。
初夏(5月)のイボタノキで見つけた、寄生バチの繭に覆われたナンカイカラスヨトウ(蛾)
の幼虫。

寄生バチの繭に覆われたナンカイカラスヨトウの幼虫
「寄生バチの繭に覆われたナンカイカラスヨトウの幼虫」

繭が、イボタノキのつぼみ(画面左)そっくりに見え、
寄生するものと、されるものとの、いわば「共同作業」で、
みごとな隠蔽擬態(カムフラージュ)を作り上げていました。
もし、ナンカイカラスヨトウの食樹がイボタノキ限定ならば、
寄生バチの生存戦略としてこういう方向に進化が誘導されてきた
という説明もつくかもしれませんが、
実際には、ナンカイカラスヨトウは利用できる樹種の多い虫なので、
おそらくこれは単なる偶然でしょう。

寄生バチの繭に覆われたナンカイカラスヨトウの幼虫(ストロボ撮影)
「寄生バチの繭に覆われたナンカイカラスヨトウの幼虫(ストロボ撮影)」

夜間にストロボ撮影をすると、このように繭がハッキリと写ります。
日中に撮った写真とは別の個体ですが、それだけ多くのナンカイカラスヨトウの
幼虫がこの寄生バチの寄生を受けていたということです。

2つ目は、水生昆虫の王者タガメ。 7月の撮影です。

自分が「流産」した卵から吸汁するタガメのメス
「自分が「流産」した卵から吸汁するタガメのメス」

メスが、水中に放卵した自分の卵に口吻を突き刺し、中身を吸って(食べて)いる場面です。
タガメの産卵行動は、必ずオスの補助を必要とし、メス単独では卵を産むことができません。
水中から突き出た杭や抽水植物の茎などに、何十個もかためて卵を産むわけですが、
オスは孵化までの間、卵塊(らんかい)に留まって卵の世話をします。
具体的には、水中と往復して卵に水分を与え続け、
外敵が来れば、鋭い爪を具(そな)えたカマのような前脚で闘い、卵塊を守ります。
メスは、産みっぱなしで去っていき、そのままエサを食べるにまかせておくと、
孵化前の卵塊からまだ離れられないオスよりひと足先に、次の産卵行動が可能になります。

オスに助けてもらわなければ絶対に産卵できないわけですから、
産卵衝動が切迫してきたメスは、狂ったようにオスを探し回ります。
飼育下でオスと引き離しておくと、飼育水槽のガラス面をのぼろうとさえします。
実際にはガラス面をのぼることはできないので、爪がガラスを引っ掻くだけとなり、
キーキー・カチャカチャと不快な騒音が水槽周辺に鳴り響くことになります。
飼育のベテランは、この音でメスが産気づいたことを察知し、
オスと一緒にするわけです(産気づいていないうちからオスを一緒にしておくと、
オスの方が小さいので、食べられてしまう危険性があります)。

オスがまだ卵塊保護中で、メスと一緒にしてやれるフリーのオスがいない場合は、
産気づいたメスは身重のまま何日も持ちこたえることはできず、
「キーキー・カチャカチャ」から、1、2日のうちに水中に卵を放卵(=流産)して
しまいます(全ての卵が死産となります)。

放卵した卵の中身を吸うのは、栄養分の回収ということでは意味がありますが、
いくら自分が放った卵とはいえ、これが「食べてよいものである」ということが
彼女によく理解できたな…と思います。
「動くものはエサ、動かないものはエサとして認識しない」のが普通ですから、
動かない卵に関心を示すというのは、意外な反応でした。

最後は、アゲハの「謎の口吻出し」です。

アゲハのメスの塩対応?
「アゲハのメスの塩対応?」

9月下旬の撮影です。
目の前で空中停止飛行をしながら熱心に求愛を続けるオスを無視して、
アゲハのメスが、畑の支柱先端で何かを吸うしぐさをしていました。
しかし、彼女が去ったあとで先端部分を見ましたが、
そこに何らかの液体があるようには見えません。

このメスは、面倒なオスが近寄ってきた時に、とっさに支柱を花に見立て、
「エア吸蜜」しながら、「あなたには関心がないわ」アピールをしてみせたのでしょうか。
まるで、カウンターで話しかけても、手に持ったグラスの中のカクテルから目を離さずに、
氷をカチャカチャ言わせながら目も合わせてくれない女性の
「塩対応」を思い起こさせるようなシーンでした。

メスはこのあと、ひらりと舞い上がり、追いかけたオスは一瞬で振り切られました。
アゲハのシーズンもそろそろ終りという時期で、
このオスにもう一度出会いのチャンスがありますように…と祈りながら
秋の空を見上げました。
 九州在住の昆虫写真家・新開 孝さんと、
2日続けて横浜市内のフィールドを歩いてきました(11月30日と12月1日)。
わが家にお泊りいただいたので、夜も虫談議に花が咲き、
非常に含蓄のあるお話を楽しく聞かせていただきました。

新開さんの代表的な著書のひとつに、
『虫のしわざ観察ガイド-野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』(文一総合出版)
がありますが、昆虫が自然の中に残した生活痕を「しわざ」と呼び、
みごとな写真とていねいな解説で、類書の追随を許さない痕跡図鑑に仕上がっています。
今回は、その「虫のしわざ」マイスターと冬の雑木林を歩くということで、
どれだけの痕跡を発見できるか、楽しみにしていました。

冬らしい澄み切った青空のもと、
ヤツデの花にはクロオオアリが来ており、この寒さの中でまだ活動中です。

ヤツデの花を訪れたクロオオアリ
「ヤツデの花を訪れたクロオオアリ」

うす暗い森の中に入ると、いきなりおびただしい鳥の羽が。

オオタカの食事のあと
「オオタカの食事のあと」

オオタカが、狩りを行ったあとだそうです。
これも「生きものの生活痕」にはちがいありませんが、
予想外のスタートに、ちょっとびっくり。

ミズキの樹皮下で越冬昆虫を探していると…

樹皮下のUFO?
「樹皮下のUFO?」

こんなものがありました。
幼虫がササ類を食べるタケノホソクロバ(蛾)の繭だそうです。
秋になると、丸々太ったこの毒毛虫が、ササやぶを食べつくして丸坊主にする場面を
よく見かけますが、その後、このような閉鎖空間に移動して繭を紡ぐのですね。
ぼくは、てっきりササの根ぎわにもぐるのだろうと思っていました。

タケノホソクロバの前蛹
「タケノホソクロバの前蛹」

中を開けてみると、まだ蛹になってはおらず、
前蛹(ぜんよう…さなぎになる準備が整い、幼虫の姿のまま動けなくなった状態)で
越冬するようです。繭内で前蛹越冬するのは、イラガなどと同じスタイルですね。

コクワガタの産卵マーク
「コクワガタの産卵マーク」

転がっていた朽ち木の表面に、(・)マークを見つけました。コクワガタの産卵痕です。
いかにも古そうで、今年や去年のものではない感じがします。
相当に重い朽ち木ですが、二人で、えいやっ!とひっくり返してみると…。

ヤマトシロアリの集団
「ヤマトシロアリの集団」

そこには、おびただしい数のヤマトシロアリが。
自力で水を運べない種類なので、じゅくじゅくに湿った材を好むシロアリです。
アリといっても、ゴキブリに近い仲間で、本当のアリとはかなり縁の遠い虫です。
アリはさなぎになりますが、シロアリにはさなぎの段階がありません。
最初にアップしたクロオオアリとは、体形もかなり異なっていますね。

ヤマトシロアリの兵隊アリと働きアリ
「ヤマトシロアリの兵隊アリと働きアリ」

兵隊アリと働きアリがちょうど並んだので、
大きさと形態の差がわかる写真を撮ってみました。大きい方が兵隊アリです。

セミの産卵痕
「セミの産卵痕」

あずまやの支柱にあったセミの産卵痕。
ほかの支柱にもありましたが、雨のかからない場所なので、
ここで果たして孵化までいけるのかどうか?

アオマツムシの古い産卵痕
「アオマツムシの古い産卵痕」

この秋に産卵された産卵痕ならば、たいてい樹液がにじんでおり、
あちこちでよく目につくものですが、アオマツムシの産卵痕が、
時間とともにX字形に大きく裂けていくことを初めて知りました。
これまでにも見たことがある樹皮の傷でしたが、
これも、アオマツムシのしわざだったとは…。

ミノウスバの産卵
「ミノウスバの産卵」

マユミの木にいた、産卵中のミノウスバ。
母虫の体毛で、卵を覆い隠すように産卵します。

ミノウスバの卵塊
「ミノウスバの卵塊」

母虫の姿がなくても、特徴あるミノウスバの産卵痕はよくわかりますが、
虫の生活痕の中には、まだ十分に正体が解明されていないものも無数にあります。

『虫のしわざ観察ガイド』の続編がいずれ出ることを期待しつつ、
ぼくも自分のフィールドで、ぼくなりの観察を深めていきたいと思います。

「虫のしわざ」マイスター 新開 孝さんと
「「虫のしわざ」マイスター 新開 孝さんと」
 耳慣れたアブラゼミの鳴き声が、朝の8時を回っても聞こえてこないと、
どうにも落ちつかない自分がいます。
いつも当たり前のようにそこにいてくれるはずのアブラゼミは、
季節限定の、夏だけの隣人なのだなあ…と、毎年この時期になると思い知らされます。
それでも、まだしばらくは生き残りがいるもので、
気温の上昇とともに、ようやくアブラゼミが鳴き出すと、
ああよかった! 今日もまだ夏だ! と胸をなでおろすのです。

毎年、死刑宣告のような夏の終了宣言をぼくに言い渡すのはアブラゼミで、
その鳴き声が途絶えると、夏も完全に終りという感じ。
アブラゼミの鳴き声こそが、日本の夏の通奏低音であると思っています。
関東の平野部にいる6種類のセミ(クマゼミを含みます)のうち、
最も遅く鳴き始めるのはツクツクボウシですが、
最も遅くまで粘るのはアブラゼミでしょう。

晩夏のアブラゼミ
「晩夏のアブラゼミ」

そんなわけで、本来ならば個体数の多い盛夏に撮るべき虫ですが、
ぼくのアブラゼミの写真には、9月に撮影したものが多い。
いつもそこにいたはずの隣人が、カメラを向けたくなるような
特別な存在に変わっていくからです。
衰えた日ざしを増幅して跳ね返すような褐色の翅が、ひときわ輝いて見えました。

アブラゼミのおしっこ
「アブラゼミのおしっこ」

1枚目の写真と同じ個体です。
カメラを向けることも忘れてぼーっと見ていると、
ぼくの目の前でたびたびおしっこをするので、昆虫カメラマンとしてようやくわれに返り、
おしっこが写る暗い背景を選んで、高速で連写してみました。

アブラゼミの産卵
「アブラゼミの産卵」

別の木を見れば、次世代に命を繋ぐメスの姿がありました。
孵化は、来年の梅雨時です。
その後、幼虫にはおよそ5年にもわたる地中生活が待っています。
このメスの孫世代が地上に姿を現す頃には、
ぼくはもう、足腰が立たなくなっているかもしれないなあ…。

セミヤドリガの繭
「セミヤドリガの繭」

足もとには、セミヤドリガの繭がありました。
幼虫がセミの腹部に寄生し、セミの体液を吸って育つ蛾です。
充分に育ったセミヤドリガの幼虫は、セミから離れ、
こうして下草などに下りて白い繭を紡ぎます。

セミヤドリガの成虫
「セミヤドリガの成虫」

ヒグラシに寄生することが多い蛾ですが、
この森では、圧倒的にアブラゼミで見つかることが多い。

アブラゼミに寄生するセミヤドリガの終齢幼虫
「アブラゼミに寄生するセミヤドリガの終齢幼虫」

1ヶ月ほど前には、こんな姿でアブラゼミのおなかについていたことでしょう。
3匹のセミヤドリガの終齢幼虫を抱えたアブラゼミです。
寄主を殺めてしまう「捕食寄生」とは異なり、
寄主と折り合いをつけて共存することも可能な「真の寄生」と言ってよく、
これは昆虫界ではむしろ珍しい、なかなか手練れの寄生スタイルと言えそうです。

セミヤドリガの寄生を受けたセミが、どんなダメージを負うのか、
実はまだよくわかっていません。
もっとも、丸々と太ったセミヤドリガの幼虫をおなかに抱えたアブラゼミは、
翅をきちんと畳むことができず、白い幼虫の姿が遠目にもハッキリ見えることが
ありますから、鳥など、ほかの天敵に見つかりやすくなることはありうると思います。

白僵病(はっきょうびょう)菌に冒されたアブラゼミ
「白僵病(はっきょうびょう)菌に冒されたアブラゼミ」

アブラゼミの受難はここにも。
ボーベリアとも呼ばれる昆虫病原糸状菌のしわざです。
こちらは容赦なく、このアブラゼミの命を奪っています。

日が暮れてから、森の奥深くに分け入ってみました。

緑僵病菌? に倒れたアブラゼミ
「緑僵病菌? に倒れたアブラゼミ」

こちらは、緑僵病菌?
森のこの区画は、まるでアブラゼミの墓場でした。
体の節ぶしから白や緑の菌類を噴き出させ、
樹皮に磔(はりつけ)にされたような姿で、おびただしい個体が死んでいるのです。

謎の死にざま
「謎の死にざま」

菌類に冒されて死ぬのは、原因がハッキリしているだけマシですが、
こんなふうに全身を引きつらせて絶命している個体もいくつかありました。
何とも薄気味が悪い。ぼくはこのような死にざまを初めて見ました。

アブラゼミとともに、ゆく夏をしみじみと惜しみたかったところですが、
この日はどうしたことか、こんな後味の悪い幕切れに。
今年はあと何日、アブラゼミの鳴き声が聞けるでしょうか。


※ 今年も、日本昆虫協会が主催する「夏休み 昆虫研究大賞」の審査員をします。
  9月29日(日)必着ですので、応募される方はお忘れなく!
  http://nikkonkyo.org/kenkyu-taisyo2019.html