新刊の発売が決まりましたので、ご案内をさせていただきます。
『ポケット版 身近な昆虫さんぽ手帖』。 来週末に世界文化社から発売になります。
アマゾンには、6月2日発売と出ていますが、
書店の店頭に並ぶのは、おそらく3日以降になると思います。

『ポケット版 身近な昆虫さんぽ手帖』(世界文化社)¥1,200(税別)
『ポケット版 身近な昆虫さんぽ手帖』(世界文化社)¥1,200(税別)

表紙には、「名前の由来が楽しくわかる!」とキャッチがありますが、
2013年に同社から出した『散歩で見つける 虫の呼び名事典』の姉妹編のような本で、
解説文の冒頭で、それぞれの虫の和名の由来について語っています。
「虫の呼び名事典」のように名前の由来に特化した本ではないので、
より身近な昆虫をキャスティングし、持ち運びに便利な文庫本サイズ、
読者自身に書き込んでいただく観察メモ欄、そして表紙には撥水加工と、
「さんぽ手帖」と呼ぶにふさわしい本に仕上げました。

発売は当初、5月下旬を予定していましたが、どうしても春に新撮したかった虫がおり、
その羽化を待ったため、若干遅くなりました。
この企画のお話を電話で受けたのは、虫の姿もほとんど見えない真冬の時期で、
「身近な」というタイトルにふさわしい150種分の昆虫の写真が、
果たしてストックだけで揃えられるか? と一瞬思いましたが、
「やります!」と即答してしまったので、
電話を切った後、大慌てでストックを漁ることになりました。
結果的に148種分はストックがあり、2種のみ、白バック写真を新撮させてもらうことに
なりました。1つの種につき、白バックと生態写真、2点の組み合わせを基本とし、
一部の種には、類似種や季節型、個体変異などの写真も添えています。

今回は、ストック写真とはいえ未発表のカットが多く、
160ページの本に368点の写真を投入するというかなり贅沢な構成で、
内容も、後ろあし1本で枝にぶら下がりながらアブラゼミを捕食するヤブキリや、
ぼくの体から吸血するウシアブの写真、
ミンミンゼミのページにはいわゆる「ミカドミンミン」の白バック写真も掲載するなど、
非常に盛りだくさんの内容となっています。

「ページのサンプル」
「ページのサンプル」

アマゾンで「なか見」としてオープンになっている3見開きを、ここにもアップします
(カワトンボは、白バックが「アサヒナ」で、生態写真が「ニホン」です)。

企画のコンセプトとしては、これから昆虫観察を始める方、
あるいは、昆虫観察を始めたばかりの方に向けて書かれた本、ということになりますが、
「コテコテの虫屋さん」に楽しんでいただけるようなポイントも、
随所に散りばめてあります。

先週、刷り出し立ち会い(出張色校正)に行ってきましたが、
非常によい色が出たと思います。ぜひ、多くの方のお手もとに届きますように・・・
と願いながら、著者も編集者も大満足で印刷所を後にしました。

『ポケット版 身近な昆虫さんぽ手帖』 を、どうぞよろしくお願いいたします。
 すっかり、月1回の更新になってしまっております。すみません。
もともとは、ネット上を探してもぼくの生存反応(?)がどこにもなく、
「読者のかたに故人だと思われていたことに衝撃を受けて、ブログを始めました」、
と第1回の記事で書きましたが、「こんな更新頻度だと、訃報が回っちゃうぞ!」と
友人に言われてしまい、返すことばもありません。

5月発売予定の本の準備に追われているところですが、久々に文庫サイズで出ます。
前回は18年前に出したデビュー作で、
『川辺の昆虫カメラ散歩-多摩川水系250種の虫たち』(1999年、講談社)でした。
すでに絶版ですが、古書で容易に入手できます。
この本は海野和男さんと共著で、そのことは何度も人に自慢しましたが、
いわば「父兄同伴」のような出版でしたから、自分の力ではなく、
早く一人立ちしないといけない、と自分に言い聞かせたことを思い出します。

デビュー作『川辺の昆虫カメラ散歩-多摩川水系250種の虫たち』(1999年、講談社)
デビュー作 『川辺の昆虫カメラ散歩-多摩川水系250種の虫たち』(1999年、講談社)

文庫サイズの本というのは、名刺代わりによいので、
ここ何年か、現役の本があればなあ・・・と思っていました。
久々に著書のラインナップに加えることができそうで、はりきって原稿を書いています。
書名や発売日等は、来月下旬には当ブログでお知らせできると思います。

啓蟄も過ぎ、春の胎動にそわそわしますが、
もうしばらく、パソコンの前に座る日々が続きそうです。


※『川辺の昆虫カメラ散歩-多摩川水系250種の虫たち』 は、
3人の著者がどのページを担当したか、本の中に書かれていません。
以前、何度かお訊ねを受けたので、ぼくの担当ページをここに書いておきます。
12~13、96~115、136~147、188~195、221~225。
 新刊 『虫とツーショット - 自撮りにチャレンジ! 虫といっしょ』 が、
本日25日より発売になりました。多くの方に、手に取っていただければうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。

「虫とツーショット」表紙・ Web用データ
「虫とツーショット」

巻末には、ハウツーコーナーも設け、本書で実際に使った機材の紹介もしています。
虫は小さいので、カメラを離す必要はなく、人間どうしの「自撮りツーショット」で
よく使われる「セルカ棒(=自撮り棒)」も必要ありません。
スマホ1台ですぐに始められるので、このページを読んでから試していただければ、
意外と簡単に撮れてしまうことに、きっとビックリされると思います。

「虫とツーショット」は、こうやって撮ったよ!
「ハウツー・ページから」

1センチの虫よりは、5センチの大きな虫の方がずっと撮りやすく、
そろそろ、ツーショット向きの、大きな夏の虫が出てくる季節ですね。
ノコギリクワガタなどは、大きくて格好もいいし、
威嚇ポーズの姿勢を長く続けてくれるので、モデルとしては最適かもしれません。
6月になれば、ヤナギの樹液などで、その勇姿を見ることができます。

それでは、 『虫とツーショット』 を、よろしくお願いいたします!
 「著者自身による著書紹介」 の3回目です。
ずっとデスクワークが続いており、しばらく「外ネタ」が仕込めないので、お許しを。

「虫のくる宿」。
自分の代表作をひとつ挙げろと言われたら、ぼくは迷わずにこの本を選びます。
2007年の秋に出した、初めての単著で、現在までに6回の版を重ねています。
「日本図書館協会選定図書」、「全国学校図書館協議会選定学校図書館基本図書」に
選定していただき、2011年には、小学校3年生の国語の教科書(光村図書出版)にも
載せていただきました。 書店で偶然、夏休みの「読書感想文」のアンチョコ本に、
「虫のくる宿」の模範例文が載っているのを見て、ビックリしたことがあります。
著者でも、あんなにうまくは書けない・・・。

虫のくる宿 (アリス館写真絵本シリーズ)虫のくる宿 (アリス館写真絵本シリーズ)
(2007/09)
森上 信夫

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「虫のくる宿」(アリス館)2007年9月発行、2013年6月 6刷発行

出版後の経過は、まずまず順調と言ってよい本書ですが、
ここに至るまでには紆余曲折があり、実に4つもの出版社でボツになって、
5社目のアリス館がようやく企画を通してくださったという「難産の歴史」があります。
1999年夏に撮影は完了しており、企画書を書いて2000年から売り込みを開始しました。
次々に「ボツ」と言われる中で、その間、写真の入れ替えなどはいっさい行わず、
企画書の文面も、1文字だって変えない。この企画の良さがわからないのだとしたら、
わからない方がダメなのであって、わかってくれる人は、かならずどこかにいる。
作品に自信があったので、あとは「めぐり逢いを待つだけ」と思っていました。

そうは言っても、ひとつの出版社で「ボツ」と言われると、慣れないうちは、
かなり長期間にわたってヘコんでしまい、なかなか「次」の連絡ができないものですね。
アリス館さんから、「出しましょう」と言っていただいたのは2005年でしたから、
5年間で5つの出版社しか回れなかったことになります。
今では、この時の経験があるので、ぼくはすっかり打たれ強くなってしまい、
「ボツ」と言われた翌週には、別の出版社の門を叩いている、
そんな強さ(厚かましさ?)を身に着けましたが(笑)。

売り込み企画の場合、出版社は、「類書」がないことをひどく嫌います。
過去に、同様の本がどの程度、市場に受け入れられ、売り上げに繋がっているか。
前例がないと、予測が立たないので、出版に二の足を踏むわけですね。
市場に類書がない。「虫のくる宿」は、まさにそういう企画でした。
何しろ、虫の本であるにも関わらず、載っている小学校の教科書は、
「理科」ではなく、「国語」なのです。

「虫」といえば 「自然科学」であり、だから「理科」だという、そんな硬直した
考え方がぼくは大きらいで、「虫が語られる文脈を、自然科学から解放したい」、
常にそう思ってきました。理科の教材として、科学的な目で虫を見ることを、
決して否定するものではありませんが、「そればっかりじゃないだろう」、と。
「花鳥風月」を愛でる際に、気温や、風向きや、天候などをいちいち記録しますか?
子供が、まったく自発的に虫を「科学の目」で見ることは、その子にはそういう適性が
あるということで、真に応援すべきと思いますが、虫を見つめている子供に対して、
親や教師が、体長を計ってみましょう、とか、見つけた時の気温を記録しておきましょう、
などと、「余計な誘導を企てる」ことは、ぜひともやめていただきたいと思っています。
人間は虫より偉くないし、虫は単なる「理科の実験材料」ではないし、
そのような視点から離れない限り、虫を窓口として、自然への限りない畏敬の念を
抱くに至る 「心の成長」は決して望めないのではないか? と思います。
虫を矮小化し、上から目線で、理科の教材と決めつけているうちは、
いつまでも哲学を語ることはできない。

では、おまえは哲学を語れるのか? と正しいツッコミを受けそうですが(笑)、
そういう姿勢を崩さず、「昆虫に帯同する人生」を送っている限り、
いつか自然というものに対し、「誰もが意識の底でなんとなく感じていたようなことを、
万人と共有できるような、すばらしい言葉で語れるかもしれない」、
そう思って生きています。

「虫のくる宿」は、主人公である 「ぼく」 が訪れた山の宿で、
もう寝ようと部屋のカーテンを閉めかけた、その時に、部屋の灯りに惹かれて飛来し、
ガラス窓に貼りついていた1匹のガを目にしたことから物語が始まります。
ガラス越しに見る昆虫のおなかは、普段は決して見ることのできない「あられもない姿」。
擬態の名手たちも、まさかこんなアングルから見られることは想定していない。
最初は、ただ面白がって撮影していただけでしたが、
虫たちとガラス越しに対話を続けていくうちに、
語られたがっている、もう少し大きなストーリーがその背後に見えてきました。

同じ 「宿」に、5年続けて通いましたが、
1995~1996年は、ただ面白がって撮っていた夏。
1997年は、ぼんやりと自分の中で物語が流れ始めた夏。
1998年は、はっきり「ストーリー」を意識して撮影した夏。
1999年は、物語の完成のために、シナリオを書いて持参し、
欠けているシーンを余すところなく全て完成させた夏でした。

本になった「虫のくる宿」は、1泊の物語ですが、
当初は、山で2泊するストーリーを描いていました。
1泊目の宿泊客は自分ひとり。2泊目は、たくさんのお客がいる。
それを表現するために、実際には、宿泊客は常に自分ひとりだった
(そういう晩を選んで泊まっていました)のですが、
宿の入り口に、無造作に脱ぎ捨てられたように多くの登山靴を並べ、静寂の1泊目との
対比で見せる、騒がしい2泊目を演出するなど、非常に手の込んだことをしていました。
メインテーマが科学の本ではないので、伝えたいひとつの真実を補強するためには、
真実の周辺に、どのような“嘘”を、演出として散りばめることも許されます。

当初は 「2泊の物語」であったということで、本になった32ページ分以外に、
もう20ページ分以上の、掲載できなかった写真が存在していますが、
編集者との何度かのやり取りを経て、最終的には「1泊の物語」に落ち着きました。
実際に本ができ上がってみると、「山で過ごした不思議な夜」を表現するには、
「一泊設定」という、編集者の判断は実に正しかったな・・・と思います。

「宿」の所在地は山梨県で、小海線の清里駅から少しのぼったところにあります。
読者の方から、ときどき質問を受けるのですが、この「宿」は、
今もその場所に建物はあるものの、すでに宿泊客を受け入れていません。
ぼくも、完成した「虫のくる宿」を持参して、ぜひ1泊したかったのですが、
本が完成した2007年には、すでにそれは叶わぬこととなっていました。
ぼくが通った1990年代後半、高原の避暑地として軽井沢と並ぶ人気であった清里は、
今ではすっかり往時の面影はなく、多くの旅館や商店が閉ざされたままになっています。
きらびやかな灯りの消えた今の深い闇こそ、虫たちの望むところであったかもしれません。

※ 次回のブログ更新は、2月に入ってからになります。
 「どS」という言葉を知らなかったお嬢さんがいます。
「えっ、どえす ってなに? 京都のことば?」 などと言うので、
「違う違う、それはちなみに、どすえ ね」 と、誤解を解いてあげたのですが、
「知らない」 ときっぱり言われてしまうと、若いお嬢さんに
改まって「どS」の意味を教えるのも、なかなか気恥ずかしいものです。

「え~と、オスとメスがいてね。ほら、カマキリって虫、いるじゃん?
メスがさ、オスを食べちゃうでしょ。ああいうメスをね、どSって言うんだよね」
と、噛み噛みで説明しましたが、われながら下手な、おバカ解説です
(というか、少し違うような気もするし・・・)。

さて、そこで(?)「著者自身による著書紹介」の2回目です。
オオカマキリ―狩りをする昆虫  (科学のアルバム・かがやくいのち)オオカマキリ―狩りをする昆虫 (科学のアルバム・かがやくいのち)
(2013/03)
森上 信夫

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「オオカマキリ-狩りをする昆虫」(あかね書房)2013年3月発行

「オオカマキリ-狩りをする昆虫」(あかね書房)の撮影を担当した時、
編集サイドからの注文には、当然、交尾の写真も、
また、交尾後の、メスによるオスの共食いシーンの写真も含まれていました。
カマキリの本を作る以上、これらは絶対に欠かすことのできない定番写真です。
昆虫の「特定の1種の生活史を追う」 というタイプの科学絵本の撮影では、
先走ったオリジナリティより、まずはいったん「様式美」をきちんと踏襲する
ところから始まります。

これが意外にやっかいなもので、
(1)本でよく見かける「超定番」シーンなのに、いざ自分が撮影しようとすると、
   待っても待っても、意外にその場面が訪れない。焦りで、心が折れそうになる。
(2)撮りつくされているシーンなので、後発本には、より高いクオリティが求められ、
   70点ぐらいの写真では、なかなかOKをもらえない。
   「割とフツーですね」、と言われてしまう
   (露骨にダメとは言われないが、要は、「察してくれ」ということ)。
   100点に近くないと、胸を張って提出できず、
   自分の技術の拙さを思い知って、ここでもまた、心が折れそうになる。
という、「二重苦」と向き合うことになります。

オオカマキリの「交尾後の共食いシーン」は、
この(1)にも(2)にも該当するもので、撮影はなかなか大変でした。
交尾中のオオカマキリを野外で見つけることは、少ないながらもありますし、
飼育下で羽化させた未交尾の雌雄をお見合いさせれば、
人為的に交尾態を作り出すことは、そんなに難しいことではありません。
問題はその先で、交尾を終えたオスは、まんまと逃げおおせてしまい、
なかなか、メスに食われてはくれないのです。

まあ、それはそうですよね。積極的に食われたいというオスもいないでしょうし、
うまく逃げおおせることができれば、また違うメスに出会えるチャンスもあるわけです。
ぼくは、婚活中の多くのカマキリの仲を取り持ち、まるで、「やり手ババア」のように
新婚カップルを次々に誕生させてきましたが、何組目かに、ようやくメスの手にかかり、
頭からバリバリと食われていくオスの姿をカメラに収めることができました。
出版社の出版物として、本の掲載写真をここにそのままアップすることはできませんが、
食われていくオスが、上半身を失ってなお、最後まで交尾器の連結を解かなかった、
その接合部分の写真がこれです。
交尾中に食われるオオカマキリのオス(部分)
「♀(上)に食われ、上半身を失いながら交尾を続けるオオカマキリの♂(大幅トリミング)」

上半身も下半身も差し出し、メスの食欲と性欲に全身で奉仕しつつ、
この世から跡形もなく消えていくオス・・・。
これこそ、究極の愛のかたちと言えるのかもしれません。

「どS」についての解説をひとしきり聞いて、じゅうぶん納得顔のお嬢さんに、
「じゃあ、森上さんは、どMでしょう(笑)」 と言われてしまいました。
いやいや、オオカマキリに比べたら、まだまだ修行が足りません。
というか、言葉も知らなかったようなお嬢さんに、そんなに簡単に見破られるようでは、
オトナとしてなさけないです・・・。