55年間住んだ埼玉県を離れ、神奈川県に引っ越すことになりました。
慣れ親しんだフィールドを離れるのは非常につらいことですが、
なぜ神奈川県に移るのかというと、これは介護にかかわる問題で、
ぼくには選択の余地がなかったということです。

新しい住居の周辺は完全な市街地で、
これまでのように徒歩圏内に取材できる場所はありませんが、
今後は車で少し遠出をすることで解決するしかなさそうです。

引っ越しは夏前にはもう決まっていたので、
この夏は飼育中の虫の世話をしながら、こうしてベランダに出ればカエルの合唱が
聴こえてくるというのは、なんと贅沢なことだったのだろうと、
来年にはもう聴けなくなるBGMを特別な思いで噛みしめていました。
駅も田んぼも、徒歩5分圏内にあるというのは、
政令指定都市であるさいたま市の中では、なかなか得がたい場所でしたね。

海に近い場所に住むのは、生まれて初めての経験になります。
台風のあとは、飛ばされてきた海水による塩害で窓ガラスが曇るような場所ですが、
ベランダに置く鉢植えの樹木が大丈夫だろうかと、今から心配しています。
引っ越しに備えて、鉢植えは半分以下に減らしましたが、
それでもクヌギ、エノキ、ヨシ、キジョランなど、11鉢を新居に持っていきます。
コナラ、イチジク、ヤマザクラ、アワブキなどは、水を与えずに枯死させ、廃棄しました。
植物も生きものですから、自分の行為により次第に弱っていく姿を見るのは
非常につらいことでしたが、今のベランダよりもかなり狭くなるので、
全部を連れていくことはできません。

新しい土地への期待感ももちろんあり、南方系の虫の中には、
埼玉では見られないが、神奈川までは普通に見られる、という種も少なくありません。
温暖化により、思いがけない虫が海岸線伝いに北上してくることもあるでしょう。
沿海地ならではの新しい発見があるかもしれません。

写真は、今まで通っていたフィールドです。家のそばには、こういう風景がありました。
今後はなつかしい場所として、時々思い出すことになるのでしょう。
次のブログ更新は、12月15日より後に、神奈川県の新居からになると思います。

この風景ともお別れ
「この風景ともお別れ」
 少し前になりますが、スジモンヒトリ(蛾)の幼虫と、
ブランコヤドリバエ(たぶん)のバトルに遭遇しました。

クワの葉にいたスジモンヒトリの幼虫を撮影しようと近づくと、そこにはハエの姿が。
(邪魔だから、どいてくれないかな?)と一瞬思いましたが、
ハエの全身から、ただならぬ殺気みたいなものがビンビン伝わってきたので、
ああ、寄生バエが獲物を狙っていたのか・・・と、状況が理解できました。

以下、セリフ形式で。

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このあと、スジモンヒトリの幼虫を採集して、ルーペで体の隅々まで点検しましたが、
卵らしいものは発見できず、やがて飼育下で繭を紡ぎました。
この繭から、蛾が出てくるのか、それともハエが出てくるのか?
答えは、来年までお預けということでしょう・・・。
 テレビのオンエアを見てくださったみなさま、ありがとうございました。
番組の公式サイトへ、ぼくのインスタアカウントを訊ねてくださった方が
おられるそうですが、ぼくはインスタグラムはやっていないのです。すみません。
せめて、番組では使わなかったカットを1点、ここにアップしておきますね。

「オオスズメバチと自撮り」
「オオスズメバチと自撮り」

この自撮りは、右手に持ったカメラをこちらに向けて撮っています。
非常に攻撃的なハチなので、いつになく顔がこわばっていますが、
刺されると死ぬこともありますから、みなさんは決して真似をしないでくださいね。
ぼくはちゃんと血液検査をして、刺されてもアナフィラキシー・ショックを
起こす可能性がきわめて低いことを確認した上で撮っています。
実際、スズメバチには過去に2度刺されましたが、命に別状はありませんでした。
なぞの蕁麻疹が出て、2週間ほど消えませんでしたが…。

「松井愛莉さんと自撮り(許可を得てアップしています)」
「松井愛莉さんと自撮り(許可を得てアップしています)」

こちらも同じように顔がこわばっていますが、内心はうれしくて仕方がありません。
感激のあまり胸がいっぱいで息もできず、こんな顔になってしまったというわけです。
番組でやったように、この写真にフキダシでセリフを入れるとしたら、
「時間よ止まれ」で決まりですね。
こんな形のピースサインは世界のどこにもなく、指先からも緊張が伝わってきます(笑)。
松井愛莉さんは本当に素敵な方で、こんなうらぶれたオッサンとの記念写真にも、
気さくに応じていただけました。

「ぼくの自撮りカメラ」
「ぼくの自撮りカメラ」

 番組で使ったぼくの自撮りカメラをご紹介しておきましょう。
カメラはオリンパスのTG-3(現在はTG-5が最新機種で、さらに進化しています)。
アダプターを介して、魚眼コンバーター「魚露目8号」(有限会社フィット製)を
取りつけています。この組み合わせは、虫を撮る人の中ではすっかりスタンダードに
なっており、「魚露目8号」でネット検索すると、たくさんの作例画像が見られます。
同じキーワードに、「TG」と「アダプター」を加えると、アダプターの情報も得られます。

別の話題です。
時系列としては、放送よりもこちらが先となりますが、
「夏休み昆虫研究大賞」の審査が終りました。

「「夏休み昆虫研究大賞」の審査風景」
「「夏休み昆虫研究大賞」の審査風景」

応募作品の水準によっては、「大賞」が空席という年もありますが、
今年度は、大賞らしい大賞が出ました。
入賞者には、そろそろ通知が届くころだと思います。
来月の表彰式でお会いしましょう。

※ 引き続き『虫とツーショット』をよろしくお願いいたします。
『虫とツーショット』写真・文 森上信夫(文一総合出版)
『虫とツーショット』写真・文 森上信夫(文一総合出版)
 テレビ出演のお知らせです。
10月スタートの新番組「沼にハマってきいてみた」に出演します。
10月9日(火)18:55~19:25、NHK-Eテレ。
ぼくと同世代のおじさんには、「Eテレって何?」という方が多いのでは
ないかと思いますが、要するに、教育テレビのことですね。

控室前にて(番組Pさん撮影)
「控室前にて(番組Pさん撮影)」

今回の野外ロケのお相手は、ゼクシィのCMで有名なモデルの松井愛莉さん。
ロケが終った1時間後には、あの「東京ガールズコレクション」に
出演されるという強行スケジュールで、
 (蚊に刺されながら、地べたで虫と戯れていても大丈夫か?)
 (本当に1時間後には、TGCのランウェイを颯爽と歩けるのだろうか?)
とハラハラしましたが、虫が苦手なはずなのに、
実に楽しそうに2時間も虫とつきあってくれました。

ぼくは近くで見る松井さんの美しさに圧倒されてしまい、
目が合った瞬間にセリフが全部飛んでしまって
終始カミカミでしたが、そんなところも含めお楽しみください。

収録スタジオにて
「収録スタジオにて」

スタジオのメインMCは、サバンナの高橋茂雄さんでした。
この本 ↓ のテーマで、スタジオでも出演者全員で虫と戯れます。
ぼくも久々に「虫とツーショット」を撮りました。
お楽しみに!

『虫とツーショット』写真・文 森上信夫(文一総合出版)
『虫とツーショット』 写真・文 森上信夫(文一総合出版)

※ こちらも 『虫とツーショット』の記事です(2015年)。 あわせてお楽しみください。
http://portal.nifty.com/kiji/150812194292_1.htm
 1ヶ月以上もブログを放置してしまいました。すみません。

前回の記事にアップしたタケオオツクツクの写真は、
さっそく「鉄腕DASH」(日本テレビ系)などで使っていただきました。
自分の地元に現れたニューフェイスの外来種ですから、
やはり一番乗りで取材しておかなければいけませんね。

さて、「夏休み昆虫研究大賞」募集のお知らせです
(夏休み前にお知らせしておくべきでしたね…)。
http://nikkonkyo.org/kenkyu-taisyo.html

募集期間は9月末日までで、標本や研究論文だけでなく、
昆虫をテーマにした小説、エッセイ、詩、短歌、俳句、写真、絵画、彫刻、版画など、
応募形式が多様なことが特徴です。
日本昆虫協会による毎年恒例の企画で、長畑直和会長、やくみつる副会長などとともに、
ぼくも今年から審査員を務めます(去年はゲスト審査員でした)。

研究論文や小説などは、相当な時間をかけなければ形になりませんが、
写真などは、この夏に撮った傑作写真があれば、すぐにも応募することができますね。
審査員の顔ぶれからみて、写真作品はぼくが講評を書くことになると思いますが、
昆虫写真だからといって、そこに科学的要素がなければならないということはありません。
絵として美しく完成されていれば、それだけでも十分評価に値します。
科学的な意義づけがあれば、その方が審査団全体の受けはよいと思いますけれど。

いくつか、作例をアップしておきましょう。

オオチャバネセセリの鳥フン吸い戻し行動
「オオチャバネセセリの鳥フン吸い戻し行動」

まずは科学的な意味のある、いわゆる生態写真。
葉の上に落ちた鳥のフンが、もうすっかり乾いて干からびていると、
セセリチョウはお尻から水分を出してフンを溶かし、えさとしてそれを口吻で吸います。
よく知られた行動で、少しも新しい発見はありませんが、図鑑的にしっかり撮れてはいます。
大きな賞は望めませんが、手堅く佳作レベルにすべり込める可能性のある写真です。
世間の写真コンテストでは、審査員がしばしば「これでは、単なる図鑑写真です」などと
講評しますが、図鑑に載るような写真がきちんと撮れたなら、それだけでも大したものです。

キタテハの交尾
「キタテハの交尾」

完全にシルエットになっており、これでは種名もわかりません。
生態写真としては落第点ですが、絵としては美しく完成されています。
これも賞に結びつく写真と言えます。
ただ、ここに書いた「キタテハの交尾」という科学写真のようなタイトルはマイナスで、
もっと表現の意図に即した、雰囲気のあるタイトルが求められますね。
昆虫の種名が何であるかは、サブタイトルとして述べるべきでしょう。

樹液に集まる虫たち
「樹液に集まる虫たち」

強いカブトムシが樹液を独占し、チョウ(サトキマダラヒカゲ)が離れたところから
「順番待ち」をしているという写真で、樹液酒場の序列を表すという意味では
多少は生態写真としての要素もあり、絵としても完成されています。
これぐらい撮れていれば、写真部門で上位入賞を争うことまちがいなしです。

ネコに捕食されるオオカマキリ
「ネコに捕食されるオオカマキリ」

スマホで通りすがりに撮ったような写真でも、こういう瞬間が撮れていれば、
ひとつのスクープ写真で、受賞に値します。ネコにこんな表情を強いることは不可能で、
二度と撮れない写真かもしれません。タイトルをつける際には、
「オオカマキリを捕食するネコ」としないように注意してください。
「夏休み昆虫研究大賞」ですから、あくまで主体は昆虫で、
「ネコに捕食されるオオカマキリ」としないと、賞レースではマイナスになります。
タイトルには撮影者の視座が反映されるので、時に作品の評価を左右することもあります。

「夏休み昆虫研究大賞」には、「審査員賞」というものも存在します。
この賞の賞品は、各審査員が「自腹で購入」しなければならないので、
あまり積極的に出したいものではないのですが、
去年、ゲスト審査員を務めた時に、お一人の方にぼくの審査員賞を出しました。
作品に心から感動してしまうと、自腹とかそういうことはどうでもよくなってしまい、
「大盤ぶるまい」をする審査員もいるようですね(笑)。

賞は重複することもあるので、
「優秀賞で、〇〇審査員賞で、〇〇審査員賞」なんていうトリプル受賞も存在します。
そうなると、表彰式で賞品と賞状を持ち帰るだけでも大変かも?

応募締切まであと半月、小中学生のみなさんの応募をお待ちしています!