7月に発売した『オオカマキリと同伴出勤-昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』
(築地書館)は、たくさんの方にご購入いただき、ありがとうございました。
9月に入って、一時アマゾン「昆虫学」カテゴリーで「ベストセラー1位」のフラッグが
つき、単著書では初めての経験で、しみじみとうれしさを噛みしめました。

こんな↓ツイートをしてくださった方もいて、ありがたいことだと思っています。
https://togetter.com/li/1569266
SNSをやっていないのでお礼を言えないのですが、ここに書いて感謝の気持ちを
表したいと思います。

 さて、すぐに次の本の撮影が始まったことで、ブログの更新がなかなかできずにおります。
あと5ヶ月ほどは兼業態勢となりますが、兼業の状態で出版企画が走り始めると、
毎日、裏表8時間ずつ働くような生活となり、ほかの撮影をする時間がほぼ取れません。

 そんな中で、8月15日に、本の企画とは無関係な撮影が少しだけできました。
今回のエッセイ集にも書いた「撮りたい虫」こと、セミヤドリガです。

セミヤドリガの幼虫7匹に寄生されたアブラゼミ
「セミヤドリガの幼虫7匹に寄生されたアブラゼミ」

こんなに多数のセミヤドリガの幼虫を乗せたまま、この個体はライトトラップの灯火に
飛来しました。この森はヒグラシではなく、アブラゼミが第一選択寄主と言えるほど、
多数のアブラゼミがセミヤドリガの幼虫をつけています。
寄生されたアブラゼミを表と裏から撮ると、腹部の背面と腹面では、
まるで境界線に結界でも張られているかのように、腹面側にはみ出す個体はいません。

セミヤドリガの幼虫は、腹部の背面側だけにつく
「セミヤドリガの幼虫は、腹部の背面側だけにつく」

腹面側にはみ出すと、セミの脚で攻撃を受けるからでしょうか。
背面側にいる限り、セミの脚はまず届かないだろうとは思います。
7匹中、6匹は終齢幼虫でしたが、彼らはまだ十分に育ち切ってはいなかったようで、
セミが絶命するまでの間に蛹化することはできませんでした。残念。
セミヤドリガは、生活史の前半が謎に包まれており、孵化間近の卵に風を吹きつけると
孵化が始まると言われていますが、蛹化に失敗したことで成虫が得られず、
同時に採卵の可能性も消滅し、これで自動的に孵化撮影は再来年までは持ち越しです。

昨年も、ちょうど1年前に、セミヤドリガをブログにアップ↓しました。
http://moriuenobuo.blog.fc2.com/blog-entry-159.html
今回のタイトルが「再び」となっているのは、
昨年に引き続き2度目の記事だから、というわけです。
セミヤドリガの繭や成虫の写真は、昨年の記事中にアップしてあります。

 最後に、ラジオ出演のお知らせです。
ベイFMの「ザ・フリントストーン」に、9月26日(土)18時より出演します。
お時間のある方は、どうぞよろしくお願いいたします。
 新刊発売のお知らせです。
『オオカマキリと同伴出勤-昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』。
築地書館より、7月29日に発売になります。

書影(オオカマキリと同伴出勤)
『オオカマキリと同伴出勤-昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』

 ぼくにとって13冊目の著書ですが、これまでのように写真が主体ではなく、
文章中心の本を出すのは初めてで、内容は「自伝エッセイ」ということになります。
ぼくが「専業の写真家」ではない、ということを今回初めて書きましたが、
そういうプロフィールは、仕事を受注するということにおいてはマイナスです。
仲間の写真家の中には、決して悪気があるわけではなくても、
自分のブログでそのことを書いてしまう人もいて、やめてくれ~と思っていましたが、
今回、自らこのことに言及したのは、ほどなく専業写真家になることにしたからです。
年平均、40日未満しか外で撮影できない兼業写真家のドタバタ劇のような毎日を、
兼業時代の思い出として自虐と含羞も交えながら書いておこうと思いました。
年間40日に満たない取材日数でも、毎年1冊のペースで本を出すために、
ぼくが普段どんな日常を送っているのか、普通の人でも面白く読めると思いますし、
参考になる人には、ものすごく参考になる内容かもしれません。
エッセイ集とはいえ、カラーのグラビアページも用意してあり、
「オオスカシバの鱗粉落とし」の連続シーンなども一挙掲載されています。

 以下は、その他のお知らせです。

 大阪MBSテレビが配信するトーク番組「水曜トークショー」に、
6月24日に自宅からリモートでゲスト出演しました。
すでに1ヶ月も前のことで、アナウンスが事後になるというのも、
ブログのサボリ過ぎで反省しなければなりませんが、
You TUBEで1年ぐらいの間、見られるそうです。
進行は、大阪MBSテレビの尾嵜 豪さん。トークのテーマは「図鑑」。
トークのお相手は、小学館の図鑑編集長・北川 吉隆さんです。
北川さんとは、『小学館の図鑑NEO 昆虫』を一緒に作りました。
90分番組をYou TUBEに合わせて3分割しており、ぼくは第2部に出演しています。

第1部 敏腕図鑑編集長が語る 図鑑戦国時代
https://youtu.be/IoYWrC-fHqE

第2部 クセが強い昆虫写真家×敏腕図鑑編集長 (森上出演)
https://youtu.be/vUXbouo5O9U

第3部 敏腕図鑑編集長が語る 進化する図鑑
https://youtu.be/5t_rDgx17ZQ 

 こちらは夏休みの講演会です。

ポスター図案
「講演会ポスター」

 昨年は100名以上の方にお越しいただきましたが、今年はコロナ対策で縮小開催に
なります。いつもなら、「どしどしお越しください」と申し上げるところですが、
主催者から、「新型コロナ対策のため、遠方から来られても人数制限があり、
世田谷区の近隣の方の参加が優先されてしまいますので、あらかじめご了承ください」
という文言を付すように言われております。
ソーシャルディスタンス確保のためには、会場の収容人数が3分の1以下になり、
おそらく、世田谷区在住の方以外はご入場が難しいような規模になると思いますので、
大変心苦しいのですが、このことはお伝えしておかなければなりません。
ご来場希望の方は、こちらのサイトもあわせてご覧ください。
https://sumireba.exblog.jp/30130477/
2020.05.26  木蠹蛾
 「木蠹蛾」はボクトウガと読みます。沖縄以外の国内に広く分布する蛾の名前です。
ヨトウガが「夜盗蛾」(「夜」に地上に現れて野菜等を「盗」み食いする幼虫期を持つ「蛾」)
であることから、ぼくはボクトウガは「木盗蛾」かと思っていたのですが、
「蠹」という文字は、「木の内部にいて木を食べる虫」という意味だそうで、
本種の生態を、より客観的かつ忠実に描写した名前であったことになります。

ボクトウガの幼虫。夜間には木の外に出てきて樹皮を這いまわることがある。
「ボクトウガの幼虫。夜間には木の外に出てきて樹皮を這いまわることがある。」

 ボクトウガの幼虫は、非常に不思議な生活をするイモムシで、
木に穿孔して内部を食うだけでなく、形成層を傷つけることで樹液を滲出させ、
その樹液を求めて集まってくる小さな虫をとらえて食べます。
普通なら、樹皮に多少の傷がついたとしても、木も生きものですから、
その傷口はやがて回復し、樹液が止まるものですが、
ボクトウガの幼虫が穿孔している木は、木の修復力を上回るスピードで
彼らによって傷口が常時攪乱されることになり、
いつまでも血が止まらない傷のように、樹皮から樹液を流し続けます。
カブトムシやクワガタムシにとっては、夏休みの間じゅう樹液を安定供給してくれる
恩人のような虫ということになりますね。

樹皮に産卵するボクトウガ
「樹皮に産卵するボクトウガ」

 そんなボクトウガの幼虫を、昨年から3匹飼育していました。
飼育ケースには、クワガタムシ用のマットを敷きつめ、朽ち木をいくつか埋めておきました。
バナナと金魚の死骸(タガメに食べさせたあとの残骸)を与えていましたが、
バナナは明らかに食べているようで、よく果肉に頭を突っ込んでいましたし、
甘い果実を食べるということは、おそらく形成層をかじって樹液を滲出させるのは、
自分自身の直接的なエサでもあるからなのでしょう。
金魚の死骸も、マットの上に置いておくと、やがて消えていましたから、
幼虫がマットの中に引き込んで食べていたのだと思います。

 5月になって、バナナを食べている様子がまったく見られなくなったので、
そろそろ蛹になっているかと5月16日に飼育ケースを掘ってみましたが、
1匹も姿が見えません。埋め込んであった朽ち木も細かく割ってみましたが、
バラバラに解体しても、やはり見つかりません。
死んで腐り、跡形もなく消えてしまったのかと諦めて、
解体した朽ち木を指でつまんでゴミ箱にポンポン放り込んでいたところ、
一片のかけらが妙にぐにゃりと柔らかく、違和感を感じてゴミ箱から戻してみました。
指であちこち押してみると、明らかに一方の面だけが、スポンジを押しているような
柔らかさです。一見しただけでは、朽ち木表面のようにしか見えないこの部分に
何かあると直感し、爪をかけて引き裂いてみました。
中には、すっかり色が変わり、体が縮んだ幼虫が潜んでおり、
前蛹(ぜんよう)と呼ばれる蛹化直前の段階であることがひと目でわかりました。
幼虫は木の中に空洞を作り、おそらく羽化後には脱出口となる壁面の一部を
吐いた糸でふさぎ、表面におがくずを絡めて巧妙にカムフラージュしていたのです。
蛹室内の前蛹(ぜんよう)は、その晩のうちに蛹(右)になった。
「蛹室内の前蛹(ぜんよう)は、その晩のうちに蛹(右)になった。」

 「朽ち木割り」というのは、昆虫採集の古典的メソッドのひとつで、長年にわたって
虫とつき合っていると、「虫のいる場所がちょうど露出する形で割れてくれるもの」、
という先入観を持つようになります。虫の潜む空間は、木の中の空洞となり、
強い力が加わると、組織の詰まっていない空洞に沿って割れやすい、ということですね。
ナタなどの工具を使わず、手で引き裂く場合はさらに顕著で、えいやっ!と引き裂くと、
クワガタムシの蛹室などが一発で出てくることは珍しくありません。

 そんなわけで、バラバラにした朽ち木のかけらは、その大きさ的にも
こんなかけらの中にボクトウガがいるはずがない、と判断して捨てたわけですが、
糸で補強してあることで、「空洞が露出する形で割れやすい」という経験則の
真逆をいくのがボクトウガの蛹室だったことになります。

 ふと思いついて、幼虫が食べないまま、真っ黒に腐ってその後ひからびていたバナナも、
ゴミ箱から回収して、解体してみました。ほんの4センチほどの、皮つきバナナの
かけらです。指を入れると、中はまだ湿ってぐちゃぐちゃの触感でしたが、
その中に、指を押し返してくる弾力のある空間がありました。
バナナを引き裂くと、こちらはすでに蛹になっていたボクトウガが、コロンと現れました。
ボクトウガの前蛹(ぜんよう)と蛹を並べてみた。
「ボクトウガの前蛹(ぜんよう)と蛹を並べてみた。」

 これまでにも何度かボクトウガの幼虫を飼育したことがありますが、
いつも途中で行方不明になってしまう理由がこれでようやくわかりました。
今回も3匹飼育していた幼虫の1匹は最後まで見つかりませんでしたが、
おそらくはエサとして与えていたバナナを利用して蛹室を作り、バナナが腐った後、
ぼくがそれに気づかずに捨ててしまっていた、ということなのでしょう。
彼らにとっては、飼育ケース内という特殊な環境下で蛹室形成時に選択しやすい
ごく当たり前の方法論なのでしょうが、飼う側は非常に驚かされる結果となりました。

 図鑑などを見ると、本種の越冬態が不明であると書かれているものがありますが、
今回の飼育で、越冬時にも糸を使った部屋を飼育ケースの底に作ることを確認しています。
ぼくは最初、これが蛹室だと思い、幼虫越冬ではなく蛹越冬するのかと思いましたが、
単なる越冬シェルターに過ぎず、春になれば一度そこから出てくるということですね。
もちろん、たったこれだけの観察事例で、これが一般的な越冬態であるかどうかを
断言することはできず、十分な追試をしてみないと何とも言えないとは思います。
 気がつけば、前回の記事から1ヶ月半も経ってしまいました。申しわけありません。
現在、新しい本の制作中で、家にこもって原稿書きに集中していました。
世は緊急事態宣言のさなかですが、ちょうど当初の緊急事態宣言明けの5月7日が
原稿の締切だったので、いずれにしてもぼくは外出自粛期間だったと言えます。
まだ先は長いですが、ひとまず脱稿できてホッとしています。

 この1ヶ月半は、ほとんど家にいたので外では写真を撮っていませんが、
わが家で羽化したエゾヨツメの白バック写真を撮っていますので、
それをアップしたいと思います。

 エゾヨツメは、後ろばねに一対の青く見える眼状紋を持っていますが、
白バック上でそれを青く光らせるのは難しく、最初はカメラのアングルを
どのように変えても、こんな感じで黒く写っていました。
エゾヨツメ(眼状紋光らない)
「黒く写ったエゾヨツメの眼状紋」

白バック撮影は通常、濃い影が出ないように柔らかな面光源で照明するものです。
しかし、この眼状紋を光らせるには、指向性のある光を撃たなければダメかなと思い、
あと1枚撮って同じなら、それまでバウンスボードにぶつけていた
モノブロックストロボの角度を直射に切り替えようと思っていたら、
エゾヨツメがたまたま羽ばたき、その時のはねの角度で、眼状紋が青く写りました。
エゾヨツメ(眼状紋光る)
「青く写ったエゾヨツメの眼状紋」

真上からの照明で撮る場合、水平を通り越して、はねがやや打ち下ろされる状態に
なった時に眼状紋が光るのだな、とわかりました。眼状紋が妖しく輝く確度は、
かなり限定されているということになりますね。ほかのヤママユガ科の蛾とは異なり、
エゾヨツメははねを閉じた状態で止まることも多く、「開翅したあと、羽ばたく」
という2ステップを踏まなければ眼状紋を際立たせることができないなら、
これで果たして天敵への威嚇が間に合うのか? 青く光る眼状紋を見せる前に
食われちまうのでは? と、モヤモヤの残る結果となりました(2枚の写真は、はねの色も
形も異なって見えますが、全く同一個体で、撮影時刻は6分しか違っていません)。
蛾は、大きく羽ばたく前にはウォーミングアップを必要とする種が多く、
まして気温の低い早春に出現するエゾヨツメは、開翅後にすぐ羽ばたくのも難しそうです。

 ところで、話は変わりますが、北米大陸にわが国のオオスズメバチが
外来種として侵入した、というニュースを5月に入ってからあちこちで見ました。
ネットニュースに関しては、ぼくが見た範囲では
添えられている写真全てがオオスズメバチでなく、別種の写真ばかりで、
全部が誤りというのは、ちょっとすごいなと呆れてしまいました。
出典としてストックフォトエージェンシーのクレジットが入っているものもありましたが、
信用できない会社がいかに多いかがわかります。
昆虫の写真に関しては、「アマナイメージズ」で借りておけば、
まずまちがいないと思います。
 ずいぶん長く、ブログ更新をサボってしまいました。
ご心配くださった方には申しわけありません。元気にしております。

さて、これから4月いっぱいはフィールドへ出られそうになく、
あと1ヶ月は家にこもる仕事に専念するので、
3月20日に近場のフィールドを駆け足で回ってきました。
「春の確認」レベルの、ごく短いフィールド滞在時間です。

春のフィールド
「春のフィールド」

例年であれば、ミヤマセセリがいるはずの場所ですが、

生い茂ったササ
「生い茂ったササ」

そのポイントにはササが生い茂り、ミヤマセセリの飛翔空間がすっかり失われていました。

オオカマキリの卵嚢
「オオカマキリの卵嚢」

オオカマキリが孵化するのはゴールデンウイーク頃ですから、まだ当分先です。
今回は風景も含め、オリンパスの12-100ミリ(35ミリ換算24-200ミリ相当)の
ズームレンズだけでほとんどの写真を撮りました。
このオオカマキリの卵嚢写真のような広角接写が、
レンズ交換せずにズーミングでできるというのは、ストレスがなくて実によいものです。

日向ぼっこするテングチョウ
「日向ぼっこするテングチョウ」

テングチョウの姿があちこちで見られ、

キブシで吸蜜するテングチョウ
「キブシで吸蜜するテングチョウ」

キブシで吸蜜する姿も見られました。

キブシで吸蜜するテングチョウ(アップ)
「キブシで吸蜜するテングチョウ(アップ)」

このアップの写真だけ、オリンパスの40-150ミリ(35ミリ換算80-300ミリ相当)
のズームレンズに1.4倍のテレコンバーターを装着して撮っています。

菜の花畑には、

アシブトハナアブ
「アシブトハナアブ」

キンケハラナガツチバチ
「キンケハラナガツチバチ」

アブやハチなど、常連のお客さんが。

春爛漫
「春の里山風景」

春の里山で、ほんの束の間のフィールド撮影を楽しみました。

※前回お知らせした読売KODOMO新聞の記事ですが、コロナ対策で小学校が
  休校になっているため、なかなか外に遊びにも行けない子供たちのために、
  読売新聞社さんがしばらくの間、無料公開しています。
  文章は、記者さんが各写真家から「聞き書き」という形で記事にされています。
  ぼくの掲載号はこちらから見られます↓。
  https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200220_kodomopageimage.pdf