2017.02.08  光芒
 ブログの更新が滞っており、とうとうお叱りのご連絡をいただきました。すみません。
現在、5月発売予定の本の準備に忙殺されており、このような状況がしばらく続きます。
新撮が可能なものは新撮したい、とジタバタしてきましたが、ようやく一段落し、
これからしばらくは、デスクワーク一辺倒の毎日が始まります。

さて、前回のブログ記事で、
「温暖な気候の常緑広葉樹林で越冬するイメージを出すには、背景のグリーンに加え、
太陽の光芒をどうしても画面に入れたかったのですが~」 と書いたところ、
この6本の光芒はフィルターを使って出すのですか? というご質問をいただきました。
個別には、すでにお答え済みですが、ブログネタもなくてよい機会なので、
ここにも記しておくことにしたいと思います。

6本の光芒が出ている写真というのはこれです。

葉裏で越冬するオオキンカメムシ
「6本の光芒」

太陽から伸びる放射状の光が「光芒」ですが、
6本伸びていますね(右上の2本は、明るく飛んでしまって見えませんが)。
「スノークロス」と呼ばれるソリッドフィルターを使うと、
確かに光芒を6本出すことができますが、この写真で使用したのは対角線魚眼レンズで、
物理的にソリッドフィルターを取りつけることができません。

フィルターを使わなくても、レンズの絞り羽根を使って光芒を出すという方法があり、
絞れば絞るほど、光の脚は長く、鋭く伸びていきますが、
光芒の本数は、絞り羽根の枚数で決まってしまいます。
6枚羽根のレンズなら6本、8枚羽根のレンズなら8本の光芒が出るわけですが、
7枚羽根のレンズを使うと、7本ではなく14本の光芒が出ます。
偶数の絞り羽根を持つレンズでは、羽根の枚数と同じ本数、
奇数の絞り羽根を持つレンズでは、羽根の枚数の2倍の本数が出ると決まっており、
特別なフィルターでも使わないかぎり、奇数の光芒が出ている写真というのは、
おそらくないはずです。

6枚の絞り羽根を持つ対角線魚眼レンズ
「6枚の絞り羽根を持つ対角線魚眼レンズ」

こちらが、オオキンカメムシの写真に使った対角線魚眼レンズ内部の絞りです。
望遠系のマクロレンズでは、背景のボケ味も大切なので、
絞り羽根の枚数が多く、可能ならば「円形絞り」が採用されたものを選びますが、
画角の広い魚眼や超広角系のレンズでは、もともと背景は大きくボケないし、
画面内に太陽を写し込むケースの多いレンズとして、
ぼくは光芒の出方のほうがずっと気になります。
光芒の本数は、多いほうが格好がよい、という人ももちろんいるでしょうが、
ぼくは「太陽の光芒は、6本出るのが最も美しい」と思っていますので、
購入を考えている魚眼・超広角系レンズが6枚羽根を採用していれば、
その点については願ったり、ということになりますね。

春の気配が感じられる頃には、
ブログの更新頻度も上がっていくと思いますので、しばしご容赦を。
2017.01.09  城ケ島へ
 1月7日に、昆虫写真家・尾園 暁さんのご案内で、
三浦半島の先端にある城ケ島まで昆虫観察に行ってきました。
島といっても、橋で結ばれており、車で行くことができます。
雲ひとつない青空が、5人のメンバーを出迎えてくれました。
ポカポカ陽気で、1月とは思えないぐらいです。

青空のもと、虫さがし
「青空のもと、虫さがし」

さっそく、今日のお目当ての虫・オオキンカメムシを尾園さんが見つけました。
もともと、いる場所を尾園さんがピンポイントで見つけてくれていたので、
到着してから、わずか5分後のことです。
こうして目的の虫まで誰かに案内してもらい、あとは撮るだけというスタイルを
この業界では「殿様撮影」と言いますが、本当にそんな感じです(笑)。

葉裏で越冬するオオキンカメムシ
「葉裏で越冬するオオキンカメムシ」

2012年に房総半島で観察したときは、5匹以上で身を寄せあう越冬集団が
いくつも見られたのですが、ここでは1匹ずつ分散して葉裏に止まっており、
高いところにいた3匹の小集団が最大です。
高所は望遠レンズを使うしかなく、本種の越冬写真は、それでは絵にならないので、
いちおう複数で身を寄せあっていることがわかる2匹を広角撮影しました。
温暖な気候の常緑広葉樹林で越冬するイメージを出すには、背景のグリーンに加え、
太陽の光芒をどうしても画面に入れたかったのですが、これが意外に難しく、
入れすぎると全体に紗をかけたようなフレアやゴーストが発生するので、
太陽の高度に合わせ、虫が止まっている葉で光を一部さえぎりながら、
葉のすき間から光芒が伸びるように工夫しました。

目的のオオキンカメムシが早々に撮影できたので、みんなでランチ休憩をかねて海岸へ。
潮の香りのなか、キラキラ輝く海面に、しばし見とれます。

輝く海
「輝く海」

ふと見上げれば、それぞれの電柱のてっぺんには、鳥たちの姿が。

睥睨(?)する鳥たち
「睥睨(?)する鳥たち」

「気をつけないと、トビにお弁当を持って行かれますよ」
尾園さんが注意してくれたので、上空をうかがいながら、手早くお弁当を食べます。

お弁当の入っていた白いコンビニ袋をひらひらさせてみると、
トビがぐるぐると旋回飛行を始めました。
1羽だけではないので、四方八方に注意を払わないといけません。
トビ以外の鳥も多く、そちらに気を取られていると、
1羽のトビが頭上まで迫っていました。
危ない危ない。もう、挑発するのはやめましょう。

空の支配者たち
「空の支配者たち」

色々なものにカメラを向けながら歩くので、ぼくはどうしても遅れがちになります。
先行するメンバーが次々にしゃがみこみ、地面にカメラを向け始めました。

板切れ1枚のシェルター
「板切れ1枚のシェルター」

放置されていた板切れの下には、驚くべき数のヤゴの姿が。
まとまった雨がしばらく降っていないため、本来はこの場所に常時あるはずの
淡水の水たまりが干上がってしまい、わずかな湿り気を求めてこの板の下に
避難したのでしょう。アオモンイトトンボやアカネ系のヤゴの姿も見られましたが、
大きなギンヤンマの幼虫の姿(矢印)がひときわ目立ちます。

干上がっていない水たまりには・・・
「干上がっていない水たまりには・・・」

大きな水たまりは、まだ十分な水をたくわえており、
さまざまな生きものの姿が見られます。
水中を覗きこむのは、当ブログにたびたびご登場をいただいている、
日本蛾類学会の阪本優介さん
知識・情熱ともにずば抜けた在野の研究者で、ぼくの尊敬する虫屋です。

おびただしい数のコマツモムシ
「おびただしい数のコマツモムシ」

水中には、おびただしい数のコマツモムシの姿が。
ハイイロゲンゴロウや、コミズムシsp.の姿も見られました。
水面下には、アミミドロのような藻類が一面にはびこっていますが、
これにもぐりこむようにして、虫たちは体を安定させています。
水生昆虫の多くは体内に空気をためているので、何かにつかまっていないと
浮きあがってしまうことが多いのですが、この「藻類のふとん」は、
虫たちの水中での定位にひと役買っているようです。

尾園さんと阪本さん
「尾園さんと阪本さん」

水に落ちないように、おっかなびっくり撮影している姿はユーモラスで、
ひとしきり虫を撮影したあとは、お互いのそんな写真を撮り合って楽しみました。
気づかれる前にぼくを撮影してドヤ顔(?)の尾園さんと、
ぼくとお互いにカメラを向け合う阪本さん。

4人のメンバーはここで海辺をあとにしましたが、阪本さんだけはひとり残って、
その後も心ゆくまで海浜性昆虫の観察を楽しまれたようです。
こういうところが、彼は本当にすごいなと思います。

オオキンカメムシの幽玄の輝き
「オオキンカメムシの幽玄の輝き」

オオキンカメムシの本当の美しさは、背面のオレンジ色ではなく、
腹部側面にわずかに見える、紫色の輝きにあります。
背面のオレンジ色は、ペイントしたようなベタ塗りですが、
腹部側面は、見る角度によって輝き方が微妙に変わるので、おそらく構造色でしょう。

上の白バック写真は、5年前に撮影した房総半島の個体群のものですが、
今回の三浦半島の個体群も、同じ位置が紫色に妖しく光っていました。
「あそこの紫色がいいんだよね~!」
そんな会話が通じたら、その人は、相当のカメムシ通(?)です。

尾園さん、みなさん、楽しい1日をありがとうございました!

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
尾園さんから、今回のオオキンカメムシは、
「ふしあな日記」のSpaticaさん(青木さん)からポイントを教えてもらったので、
自分も殿様撮影みたいなものです、とご連絡がありました。
そういうわけで、青木さんにこそ、一番感謝しなければなりませんね。
青木さん、ありがとうございました。(1月12日に追記しました。)
2017.01.01  謹賀新年
 あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、新年ということで、ぼくにしては珍しく、たまには写真機材について思うことを
語りたいと思います。
(長文で、専門的な話もしますので、機材に興味のない方は今回はスルーしてください。)

昆虫カメラマンのイメージとは、
「昆虫」と「カメラ」に並々ならぬ興味を抱く人、というものではないかと思いますが、
もう長いこと、ぼくはカメラへの興味を失ったままです。
学生時代に必死にアルバイトをしてカメラを買ったことが懐かしく、
どんなカメラでも買えるようになってみたら、欲しいカメラがひとつもなくなっていた、
というのは皮肉なものだと思います。

どんなカメラでも買える、と言っても、別にぼくが金持ちということではないですよ(笑)。
個人タクシーの運転手さんが、クラウンを1台購入しなければならないことに比べれば、
高くても50万円程度の一眼レフは、仕事の道具としては、少しも覚悟のいらない金額ですね。
ぼくは6万円程度の一眼レフで、2010年から6年間も仕事をしてきましたから、
このあたりで高いカメラを買っても、少しも贅沢とは思いません。
市場に買いたいカメラが出てこないので、ずっと同じカメラを使い続けているだけです。

別に機材への要求が厳しいというわけではなく、現在の工業技術で、実売価格15万円ほどで
作れそうなカメラで十分なのですが、新機種が出てくるたびに、違うぞ、いやこれも違うぞ、
おい、そこじゃないだろう・・・というトンチンカンな開発にうんざりするばかりです。

たとえば、どんどん進化すべき内蔵ストロボが、むしろ退化していること。
ニコンが昨年、久々にAPS-Cフォーマットの高級機(D500)を出してきたので、
ぼくにしては珍しく心ときめいたのですが、スペック表を見て、わずか30秒で却下。
2016年発売の最新機種に、なぜ内蔵ストロボが搭載されていないのでしょう?
初のストロボ内蔵カメラ、「ピッカリコニカ」が発売されたのは1970年代でしたから、
ストロボが内蔵されていないカメラというのは、ぼくに言わせれば1960年代の遺物に過ぎず、
白黒テレビや、オート三輪(若い人は知らないだろうなあ・・・)を見ているかのようです。
こんなものを、新機種です、といって出してくるメーカーの気概がわかりません。
ぼくの撮る昆虫写真の90%以上は、何らかの形で内蔵ストロボを使用しています。

ニコンとキヤノンが、プロ用の高級機に内蔵ストロボをつけない傾向があることから、
内蔵ストロボなんて、初心者向けのもの、と頭から決めつける人もいますが、
きちんとした技術を持っていれば、内蔵ストロボともう1灯で、この程度の写真は撮れます。
内蔵ストロボを使った写真作例
「内蔵ストロボを使った写真作例」

当ブログ既出の写真ですが、真上からモノブロックのストロボを1灯、
そして手前からは内蔵ストロボ、という2灯照明で撮影しています。
上からのストロボで立体感を描写し、手前からのストロボで色を出しているわけですね。
内蔵ストロボは、外付けストロボよりも、はるかに低い位置から光を撃てるので、
昆虫の体の下に回り込むような低い光線を放つことができます。
上からのストロボによって昆虫の体の下にできる影を薄めるという能力においては、
内蔵ストロボに勝るストロボはありません。

常用感度が3200とか6400とかいう時代に、内蔵ストロボを軽視するのもおかしな話で、
GN12の小さな光量のストロボが、ISO 6400においてはGN96相当にもなるわけですね。
昆虫のような至近距離限定の使用に留まらない、もう十分すぎる光量です。
こんなに便利で必要なものを省略する意図がわからない・・・。

撮像素子の高画素化についても、ここへ来てようやく一段落した感がありますが、
一昨年ぐらいまでは、新機種が出るたびに、どんどん画素数が増えていき、
結果、画質がメチャメチャになるという事態を招きました。
詳しい原理はぼくにはわかりませんが、レンズの回折という現象が、
高画素カメラでは非常に目立つのです。
APS-Cという撮像素子サイズのカメラにおいては、2400万画素以上になると
全く使いものにならないことがわかりました(ぼくのメイン機種は、1600万画素機です)。

深いピントが欲しいと思えば、レンズを絞って使うことになりますが、
絞りすぎると、逆にどこにもピントが合っていないような、モヤッとした写真になります。
これが回折という現象ですが、1600万画素機ではF18まで絞っても気にならなかった回折が、
2400万画素機では、F11までが限界(ぼくの基準です)であることが実写してわかりました。
ピントの深い昆虫写真は、決して撮れないF値です。

回折というのは、基本的にはレンズ側の問題であって、ボディ側の高画素化が
物理的にどのように画質劣化に関与しているのか、ぼくには説明できませんが、
そのころ発売されたカメラ雑誌の新機種レポートには、確かに
APS-Cサイズの2400万画素機(実際には機種名が書かれていました)は、
画素ピッチの影響で回折が目立つ。 F5.6からもう影響が出始める、と書かれていました。

実写作例のキャプションでは、「F11からにじんだ感じになり、F16ではもはや使えない」、
といった記述が見られましたが、ぼくの白バック写真の多くはF18で撮られていますから、
「2400万画素機ではF11までしか絞れず、そうであれば、この機種は使いものにならない」、
という印象に非常によく合致します。

別のカメラ雑誌には、「××(カメラの機種名)」では絞りすぎに注意し、
絞ってもF8までで留めておきましょう・・・などと、事もなげに書かれていましたが、
ぼくの写真収入は、「F18に完全に依存」しています。
F8以下で撮った写真など、年間5カットも売れないんじゃないだろうか・・・。

そもそも、普通のレンズにはF2.8あたりからF32程度までの絞り値が用意されているわけで、
F2.8~F8までしか使えないカメラボディというのは、
レンズ側に用意されている絞りの選択肢の半分以上が使えないわけですから、本末転倒です。
昆虫撮影に限らず、これでは高画素機など使えないと判断するカメラマンは、
ほかのジャンルにもいるのではないでしょうか。
カメラの高画素化はもう後戻りしないだろうし、回折が物理現象なら、対策もできない。
そう思って暗澹たる思いでいましたが、
その後、先に紹介したD500という昨年発売のカメラが、画素数を減らして出てきました。

大英断だと思って、それだけに期待も大きかったのですが、
ストロボに関しては1960年代なみ、というのは、何ともちぐはぐな開発です。
5~6年前には平均的なスペックだった、
「APS-Cサイズのフォーマットで、1/250秒で内蔵ストロボが使える1600万画素機」を、
イマドキの常用感度6400仕様で作ってくれればそれで十分で、
たったそれだけのささやかな願いをかなえるカメラがひとつもないというのは、
たいへん奇妙なことに思います。

ぼくの使用機材一式は、過去記事に詳細が出ていますので、
興味のある方は、以下をご覧ください。
内蔵ストロボの使い方は、「2014.09.30 日帰りセット(機材紹介/その3)」に詳しいです。
しかし、2014年9月から何ひとつ機材が変わっていないというのも、何だかなあ・・・。

2014.09.24 日帰りセット(機材紹介/その1)
http://moriuenobuo.blog.fc2.com/blog-entry-16.html

2014.09.27 日帰りセット(機材紹介/その2)
http://moriuenobuo.blog.fc2.com/blog-entry-17.html

2014.09.30 日帰りセット(機材紹介/その3)
http://moriuenobuo.blog.fc2.com/blog-entry-18.html

現在、新しい本の準備を進めています。
詳細は、いずれまた当ブログにてご案内をさせていただきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
 12月24日の夜に、虫仲間とフユシャクの観察に行ってきました。
よりによって、わざわざクリスマスイブを選ばなくても・・・と言われそうですが、
年末までの間に、みんなの都合のよい日がこの日だけだったという衝撃の事実(笑)。
ぼくは、その日は彼女と過ごすので・・・と最初は難色を示したのですが、
わかりやすい嘘をありがとうございます!と、全く取り合ってもらえませんでした。

仕方がないので、エア彼女との予定はキャンセルし、
みんなと一緒に埼玉県下のフィールドに繰り出すことに。

暮れゆく雑木林
「暮れゆく雑木林」

3時の集合直後に撮った写真です。
あっという間に日が落ちていく、冬の雑木林。
時おり、冷たい風が枯れ葉を巻き上げていきます。

先に来ていたメンバーが、珍しいサザナミフユナミシャクを発見していました。
食樹として、ほとんどクヌギに依存していると言われる蛾ですが、
昼間はなぜかサクラの樹皮に止まっていることが多いようです。

サザナミフユナミシャク♂
「サザナミフユナミシャク♂」

撮影しやすい場所に止まっているとは限らないため、
時にはこんな恰好で撮影するハメに(笑)。

よきパパたちのご乱心?
「よきパパたちのご乱心?」

お二人ともよきパパで、立派な家庭人ですが、
虫を前にすると、みごとにリミッターが外れます(笑)。
ぼくは完全に足を投げ出してうつぶせになることが多いため、
通行人に「大丈夫ですか?」と声をかけられることもしばしばですが、
ちがう意味で、大丈夫ではないのかもしれません・・・。

夕方にこうして下見をしたあと、いったん食事に出て、
日が暮れてから現場に戻ってくるのが、フユシャク観察の基本パターンです。

吸蜜するカシワオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)
「吸蜜するカシワオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)」

真っ暗な雑木林で、ライトに浮かび上がるカシワオビキリガ。
ツバキやサザンカは、冬に活動する蛾たちにとっては重要な吸蜜源です。

樹液に集まるフサヒゲオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)
「樹液に集まるフサヒゲオビキリガ(フユシャクの仲間ではない)」

夏とちがい、樹液が出ている木はほとんどありませんが、
それだけに、貴重な樹液を虫たちは見逃しません。
目ざとく見つけて、こうして集まってきます。

トイレの灯りにクロオビフユナミシャク
「トイレの灯りにクロオビフユナミシャク」

屋外トイレの灯りは、よい観察ポイントで、しばしば多くのフユシャクが飛来します。
ここのトイレには、クロオビフユナミシャクが来ていました。
もちろん男子トイレですが、それでも相当に怪しい行動にはちがいありません(笑)。
こういう札にドキリとさせられるということは、
自分がもう不審者になってしまった証拠でしょうか・・・。

不審者に注意!
「不審者に注意」

樹木の枝では、シロオビフユシャク、ウスバフユシャク、クロバネフユシャクと
次々にオスが見つかり、ほどなく、交尾しているイチモジフユナミシャクが見つかりました。

イチモジフユナミシャクの交尾
「イチモジフユナミシャクの交尾(左がメス)」

やはり、フユシャクの写真は「交尾シーンを撮影できてナンボ」です。
翅のあるオスと、翅のない(あるいは、ほとんどない)メスが同一種であることを示す、
またとない証拠写真になります。
フユシャクの中には、メス単独では外見から種名を特定できないものもあり、
オスとの交尾態で見つけないかぎり、種名をつけて写真を発表することができない、
そういう場合もあります。
イチモジフユナミシャクの雌雄(白バック)
「イチモジフユナミシャクの雌雄(白バック)」

イチモジフユナミシャクのメスは完全な無翅ではなく、痕跡的に翅が残っています。
わずかに残った翅を鮮やかなグリーンに飾りたてるのは、密やかなおしゃれ心でしょうか。
活動時間帯は夜間ですから、フユシャク男子たちの目を惹きつけるためではないはずです。
グリーンのない冬の落葉広葉樹林では、保護色になるということもないでしょう。

余談ですが、フユシャクのメスは、歩行中は触角を前に伸ばしますが、
静止すると、触角をたたみます。今回のイチモジフユナミシャクのメスは
その反応がいちじるしく速く、静止したその瞬間に触角をたたむ、という感じでした。
白バック上を高速(かなりの速さで歩きます)で歩きまわっている間は触角が写りますが、
速すぎて全然ピントが合わない。 よし止まった! と思った時には、もう触角が写らない。
イチモジフユナミシャクのメスの静止状態(白バック)
「イチモジフユナミシャクのメスの静止状態(白バック)」

・・・こんな写真になってしまうわけですね。

そういうわけで、触角が写っている方の写真は、白バック上を長時間歩いてもらい、
疲れて歩行速度が落ちたタイミングで撮影しました。
このメスには、本当に気の毒なことをしたと思いますが、その時間は5時間にもおよび、
立ち止まるたびに、つまようじの先端でお尻をツンツンしながら歩くように促すのは、
肉体的疲労と自責の念とで、ぼくも相当にしんどい時間でした。
左手でつまようじをあやつり、立ち止まりそうになると、
その都度、右手でカメラを構えるわけですね。
フユシャクの活動性が高まらないよう、スタジオには暖房を入れることもできず、
フィールドで冷えた体を温めることもなしに、ぼくのクリスマスイブは、
フユシャク女子のお尻だけを見つめて明けていきました・・・。

■ ■ ■
ひどく更新のおそい気まぐれなブログに、
今年もおつき合いいただいた読者のみなさま、ありがとうございました。
お健やかに、よいお年をお迎えください。
 ブログの更新がひどく滞っており、すみません。
もう、1ヶ月近くも前のことになってしまいましたが、
九州の昆虫写真家・新開 孝さんの上京スケジュールに合わせ、
11月27日に、気心の知れたメンバーで晩秋の雑木林を歩いてきました。

この3日前には、東京で54年ぶりに11月の降雪が観測されたばかりです。
埼玉県内でも一時、ノーマルタイヤの車では危険を感じるほどの
まとまった雪となりましたが、もうほとんど溶けており、
地面がぬかるんですべりやすくなってはいるものの、それほど歩きにくさは感じません。

ジャコウアゲハの越冬蛹
「ジャコウアゲハの越冬蛹」

車から降りると、目の前にジャコウアゲハの蛹が。
枝に固定するための帯糸がずいぶん太いなあ・・・と改めて感じます。
羽化までこの状態で半年ほど過ごすわけですから、まさに命綱と言ってよいでしょう。

ガマズミの実
「ガマズミの実」

林内はすっかり秋の装いで、飛んでいる姿を見かけるのは、フユシャクとユキムシだけ。
ガマズミが鮮やかに森を彩っています。

ノウサギ(左)とタヌキのフン
「ノウサギ(左)とタヌキのフン」

哺乳類にくわしいメンバーが、ノウサギとタヌキのフンを見つけました。
ノウサギのフンには虫が1匹も来ていなかったけれど、タヌキのフンには
ベッコウバエが来ています。

ベッコウバエのペア
「ベッコウバエのペア」

驚いたことに、明らかな配偶行動を取っていました。
夏の間、ときどきクヌギなどの樹液で見かける虫ですが、周年経過がよくわからず、
晩秋のこんな寒い時期が、彼らの恋の季節なのでしょうか。
合計3匹の姿を見かけましたが、冷えた空気の中を敏捷に飛び回っていました。

朽ちた丸太を起こしてみれば、数匹のアカシマサシガメが身を寄せ合っており、
針葉樹の樹皮下からは、オオトビサシガメが見つかります。
朽ち木内から見つかったナガニジゴミムシダマシのなかまと
ユキムシを白バック写真のモデル用に追加採集して、雑木林をあとにしました。

ナガニジゴムシダマシは非常によく似た種が4種おり、
ユキムシと合わせて種名を調べ中です。
(写真は、左上から時計回りに、オオトビサシガメ、アカシマサシガメ、
ユキムシのなかま、ナガニジゴミムシダマシのなかま。)

晩秋の雑木林で見つけた虫たち
「晩秋の雑木林で見つけた虫たち」

最後に、みんなで記念写真。
このあと、熱々の食事で温まりながら、しばし話がはずみました。

みんなで記念写真
「みんなで記念写真」